3 すき ④
「うー、寒っ!」
外は雪こそ降る事はないが、気温は冬そのものでかなり冷える。
1年中同じ気温にする事も可能らしいけれど、人が暮らしていた環境を再現した方が、その事に対しての対策をするようにさせるためにはいいらしい。
種の多様性がどうこうと説明されたけれど、小難しい事は僕にはよくわからない。
今僕が考えるべきはそんな事じゃなく、イオリについてだ。この計画で一番要になっているらしい。
僕は便宜上、ノアの方舟計画と勝手に名付けている。呼び名に意味はないらしいけど。
種の保存と惑星間移住が目的らしくて、僕たちが住んでいた地球はすでに無く、生き残った人はここには僕ただ1人。
そんな目的なら、つがいで確保すればいいのでは?と質問もしたんだけれど、寿命に対して妊娠出産の適齢期が短く、性成熟にも時間がかかる事。また、方舟が建造された時と厳密に同じ種では無いため、どの様に成長するのか、どの様に継承していくのか等のデータを得るための被験体として僕が選ばれたらしい。
他にも色々説明されたけれど、突然の事で僕には何を言われていたかわからなかった。聞けばまた説明はして貰えるだろうけど、今聞いた所でどうせ理解なんて出来やしない。
そんな事に時間を割く必要性は今はなくて、イオリについて考える事が僕には大事なんだ。
僕がここに来てもうそろそろ2年になる。日付は僕の持ってきたタブレットと、スマホがあるから正確だ。丁度買い替えたばかりだったからまだ暫くは使えるはず。
また横道に思考が逸れた。イオリについて、人なんだけれど遺伝子操作と薬剤で、病気に強く、また肉体的にも頑強かつ、成長速度が何倍も早くなっている。
肉体的な老化も。ある程度の年齢で止まるらしい。
知的生命体特有の情緒面での成長、妊娠出産、育児についての情報を得るために作られた存在。
それがイオリ。
そして、僕の伴侶となるための存在。そう、子供が作れるって事。
だから、あの質問は最初の分岐点だって、僕は感じたんだ。
このまま父親みたいに振る舞うのか。はたまた、一生を添い遂げるための相手として扱うのか。
その最初の選択を迫られたと思ったから、僕に覚悟が必要だったんだ。
「はぁ、僕はどうしたらいいんだろ。」
ため息を漏らしながらそんな言葉を一人呟く。
「来るべき時が来たって感じかな。」
そう続けて独り言を洩らすと、また思案する事にしたんだ。
何故か僕の恋人だった人の面影、それどころかかなり似ている事について以前質問したのだけど、それは遺伝子操作等での偶然らしい。
そんな事あり得るのかと聞き返したものの、それ以外無いとの返答だった。
そこはまぁいい。そうなってしまったんだから受け入れるしかない。
イオリに対して僕がどう思っているか、その答えを考えよう。
割と情報量多目回のため短め
どこで区切るか悩みますね。