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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
はじまり

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87/100

10 けっこん 15

 二人のやり取りを見ていて、イオリやノアの知らなかった部分が見え、つい笑ってしまう。


 〈何故笑うのですか!〉

『何で笑うんですか!』


 反応も似ていて、余計に面白かったんだ。


「本当に、イオリはノアが好きなんだね。姉だって言った理由が今ならよくわかるよ。だから、ノアに指輪を持っていて欲しかったのか。」

 凄く、微笑ましいなと思う。彼女達の知らない部分がまだこんなにあるんだ。僕が独り占めしていいのかな?


『幾らご主人様でも、言っていい事と悪いことがありますよ!確かに嫌いじゃないですけど・・・。」


 イオリは頬を染めながら、照れ隠しのような抗議の声を上げる。キミも充分、分かり易いと思うよ。


 〈そう言えば、指輪を渡しに来てくれたのでしたね。私にも付けてくれませんか?〉

「うん。僕達が家族だってしるし、だからね。」


 僕は自分の鞄から箱にある指輪を取り出し、ノアの指に嵌めようとして、彼女の右手を持ち上げる。


 〈私は右手なんですか?〉


 暗い表情で、悲しげな呟きを漏らす。その後ノアはハッとした表情になり、慌てながら手で自分の口を押さえた。

 流石に彼女もお嫁さんだと言うのは、いきなり過ぎないかな。ちゃんと話すようになったの、ついさっきだよ?


 ノアの言葉に思わず僕が止まってしまうと、その様子を見ていたマホ達が僕に尋ねてくる。


「ノアちゃんも、お嫁さんになるの?」

「旦那様、ノアもお嫁さんになるんですか?」


 マホとシホは嬉しそうだ。


「あたしは構いませんよ。兄上がしたいようにしてください。指輪自体は、あたし達の物と石が違うだけですから。」


 サオリも依存は無いらしい。


『私は、姉も受け入れて欲しくて、指輪をお願いしました。家族と言ったのは、そう言わないと多分ノアは自分の分の指輪を作らないと思ったからです。』


 イオリ達が望んだ展開だったんだね。さっき、ノアは花嫁じゃ無いって心にも無い事を言ってたのは、はしゃいでいるノアに合わせていたのだと薄々気付いてはいたけれど。


 〈最初から、本当に私も花嫁にするつもりだったんですか?私は子供も作れませんし、彼とまともに話をしてこなかったのですよ?〉

 〈貴方も無理にする必要はありません。なんで私、右手に付けられる事をつい悲しいって思ったんでしょうか?お願いですから、さっきの発言は忘れてください。〉


 焦っているためか、本音が漏れてしまっているノアの様子に、僕は彼女を一人にしたくないと感じた。


「ノアは、どうしたいの?」


 〈私は貴方達の補助が目的なだけです。私を花嫁にする意味は無いですよ。赤ちゃんも作れませんし、計画もありますから。無駄な事はしなくていいのですよ。〉


 なら、何でそんな辛そうな顔をしているのだろうか。


「それならさっき、撫でて欲しいって言ったのは何故?」


 〈羨ましかったから・・・ですよ。〉


「何で、羨ましかったの?」


 〈好きな人に・・・触れて貰えるから。大事な人に撫でられて、幸せそうな妹達が・・・羨ましかった。〉

 そう呟くノアは、とても辛く悲しそうに見える。僕は、ノアの頭を撫でてから、優しく抱きしめる。


 〈暖かい・・・。〉

 今更一人増えた所でイオリ達の仲が悪くなる事もないだろう。それに、彼女達を支えてくれていたノアに、寂しい思いをさせるのは僕も辛いから。


「ノア、君も欲しい。」

 〈私まで欲しがるなんて、意外と欲張りなんですね。貴方が私にまで優しいから、その気になってしまうじゃないですか。ちゃんと責任、とってくださいね。〉


 思い出を、一緒に作ろう。


「僕が言ったから?」

 〈貴方、何時もと違いすぎませんか!?・・・私も、一緒に居たいから、ですよ。〉


「兄上は最近吹っ切れたようで、私達が望んだのもあるのでしょうけど、こういう時異様に優しいんですよね。元々優しいのですけど。」


『ズルいですよね。そんな風に言われると、素直に返事するしかないじゃないですか。』


 女たらしみたいに言うのは、辞めてほしい。


「なら、ノアも僕のものだよ。」

 そう言いながら抱きしめていた腕を離し、彼女の小さな左手の薬指に指輪を嵌めた。


 〈仕方ない、ですね。〉

 仕方ないと言う割に、凄く綺麗な笑顔で僕を見つめている事を問うのは、野暮だろうな。


 〈私まで攻略されてしまいました。ハーレムエンドといった所でしょうか。次のシーンでは全員妊婦さんですね。〉


 やはり、残念な性格だと思う。台無しだよ!


 〈いや、あの、そんな目で見ないでくれませんか?イオリ達もその冷たい視線はやめてください。謝りますから!ちょっとサオリ、無言で帰ろうとしないで!〉


 ノアの発言を聞いた瞬間、サオリは無言で扉に行き、パネルを操作し始める。


『残念な姉でごめんなさい。人の気持ちを知るためとか言いながら、美少女ゲームを好んでるような姉なんです。』


 知りたくないよ、そんな事。押し倒す云々の話も、そのせいだったのか。何時ぞやの男性の生理現象云々も、エ○ゲ知識って事だろうな。


 僕は徐に立ち上がると、イオリ達に向き合った。


「じゃあ、「5人」で帰ろうか。」

『はい、そうですね。』

「兄上、扉開きましたよ。」


「旦那様、ノアちゃんに意地悪しちゃダメー!」

「旦那様、流石にノアが可哀想です。」


 〈本当にごめんなさいぃ!恥ずかしかっただけなんですぅ!〉

 必死な表情で、僕の服を掴んで引き留めるノアとマホとシホ。

 なんかこうして見るとイオリ達の姉と言うより、マホやシホの妹に思えるよ。


『空気の読まなさは、間違いなくサオリちゃんが影響されてますね。』

「姉上、流石のあたしでもそれは傷付きます。ここまで酷くありません。」


 サオリも雰囲気を変えるために言うから、確かに影響はされたんだろうな。もう少し場合は選んでる気はするけど。


 言い争いを始めたイオリ達が賑やかで、此処に来た当時では考えられないくらい騒がしくて、この光景が愛おしくて、ずっと続く事を願いながら、少しの間眺めていた。


 程々で仲裁をしてから、筒を持って家に帰る。

 その日から、ノアも含めて僕達の家族としての生活が始まったんだ。

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