10 けっこん ⑨
少し短めです。どうしても区切りたかったので。
二人に渡した指輪を首飾りにして、マホとシホの首にかける。
「あんまり引っ張ったりしないようにね。」
「ボクは今日は着けてますけど、明日からは暫く大事にしまっておきます。」
「マホも。無くしたくないもん。マホ達がお嫁さんだって事のしるしなの。」
余程、嬉しかったのだろう。
今日だけは付けていたいのは理解できたので、それ以上は野暮だと思う。
「わかったよ。二人とも、ありがとう。僕と一緒にいてくれて。」
「旦那様、これからもよろしくお願いします。」
「マホも、よろしくお願いします。」
二人は可愛らしくお辞儀をして、部屋を出て行った。
全員に渡し終えて一息つくと、直ぐにイオリがやってくる。
『ご主人様、上手くいったみたいですね。』
「うん、ありがとうイオリ。君のおかげだよ。」
『それは何よりです。私も初めての誕生日プレゼントが婚約指輪で嬉しいですし。』
誕生日?今まで迷って居たから、誕生日の話はした事がなかったんだけれど、培養槽での育成が開始された時なのか、出た時なのか。
彼女達にとっての一歳が、大凡2ヶ月なのもある。マホやシホは出てから二ヶ月僕達と会って居ないから、余計に迷ったんだ。
『指輪の話を皆でしている時に、決めたんですよ。私は7月、サオリちゃんはご主人様と同じ1月、マホちゃんとシホちゃんは3月にしようって。私達に誕生日は余り意味がありませんけどね。』
「どうして、その月にしたの?」
『ご主人様と暮らし始めた時が、私達にとっての誕生日だからですよ。』
「なるほど。確かに、イオリ達にとって誕生日と言えるのかもしれないね。」
イオリ達にとっての始まりだから、全員が同意して決めたのなら僕に異論はない。
『思い出したのは、丁度ご主人様に結婚式をして欲しいって言った日です。丁度今ぐらいの時期に一緒に暮らし始めた事を思い出しました。私だけ、サオリちゃん達より小さい頃から一緒に居ましたからね。培養槽に居る期間は私が一番短いので、私が一番小さくなるかもしれません。』
クスクスと笑いながら、僕に告げるイオリ。そうすると、誕生石を選んでも良さそうな気はするのだが。
「じゃあ、何故指輪は誕生石にしなかったの?」
『それは、サオリちゃんとご主人様、マホちゃんとシホちゃんが同じ石になっちゃうから、ですね。宝石の言葉もありますが、私達自分の髪の色が好きですし。』
そうだったんだ。なら、石の話も聞いてみようか。
「どんな願いを込めたのか、聞いてもいいかい?」
『構いませんよ。私は永遠の絆や、変わらぬ愛。サオリは愛と献身と、愛の成就。シホは誠実と慈愛。マホは情熱的な恋と、貴方と結ばれて欲しいと願いを込めて、選びました。』
なんだか聞いているだけで、照れるな。僕の様子を穏やかな笑顔で、イオリは見つめていた。じゃあ、僕のは何故なんだろうか?
「僕は誕生石だけど、どうしてなんだろう?僕の分は、宝石は要らなかったと思うんだけれど。」
僕の質問に、一層嬉しそうな表情をする彼女。どうしたんだろうか?
『それは、私達から、貴方への証なんですよ。そして一番意味のある石です。』
僕の分は、皆からの婚約指輪だって事なのか。そして、込められた意味が一番大きいってどう言う事なんだろう。
『ガーネット自体は誕生石で、意味は実りの象徴です。そちらにも多少理由はありますけど、私達にとっては伝説の方に意味があります。』
「伝説?何かいわれがあるって事なのかな?」
言い伝えの中に宝石が出てくるのは良くあるけれど、何の伝説なんだ?
『はい、「ノアの方舟」ですよ。方舟の中にあった方向を指し示す灯りが、大きなガーネットだったそうです。まるで、私達にとってのご主人様の事、ですね。』
そう言って頬を染めながら、イオリは微笑んだ。
3月は春だろ!ってツッコミは雪国生まれの私には勘弁してください。3月頭はまだ冬にしか思えないので。




