10 けっこん ④
「どんな人達だったんですか?」
サオリの質問に答える事で、気持ちの整理がつけられるかもしれない。
「サキは何というか、我が道を行くタイプだったかな。あんまり人の話を聞いてない時もあったけど、よく笑って、よく泣いて、性格はイオリと余り似てないけど、細かい仕草とか、アニメの趣味はよく似てたな。髪は黒かったけどね。」
『そうなんですか?』
「うん。小さい頃から一緒だったから、最初にイオリを見た時、本気でノアに怒ってしまったんだ。何故此処にいるんだって。」
『私が憎いですか?貴方の恋人だった人の、命を貰った私が。』
「そんな事、有り得ないよ。イオリが居たから僕は生きようと思えたんだから。」
憎いなんて思うはずがない。サキと同じ顔していても、イオリはイオリなんだから。そもそも、イオリ達が悪いはずもないのだし。
「あたしの元の人って、どんな人でした?変な言い方になっちゃいますね。」
サオリは、どうだろう?身長だけなら、多分マコトだと思うけれど。よく考えれば、ミキにも似てる所があって、どっちのクローンって言われても納得できるような。
「サオリは、どうだろう?正直、どっちの友達にも似てて、よくわからないんだよ。顔も違うし。」
「二人居るんですか?」
「うん、性格は二人とも違うんだけどね。身長はマコトって子と同じぐらいかな。もう1人はミキって名前だね。」
ある部分はミキに似てます。言わないけど。
マコトとサキは、正直慎ましかったから。何がとは言いませんが。
「兄上!どこ見てるんですか!」
サオリは恥ずかしかったらしく、胸元を隠す。つい、考えていた事のせいで、サオリの楽園を凝視していたらしい。
『サオリちゃんの大きいですからね。私のも見ていいんですよ?』
笑顔で僕に凄むのはやめてほしい。怖いよ。
「ごめんなさい。」
『何で謝るんですか!?』
「まぁ、あたしは両方に似てるって事ですね。なら案外お二人共あたしの元になったのかもしれませんね。」
ノアはそうは言ってなかったけど、そう言う事にしておくか。
サキの一緒に居たかったって願いは、多分僕とだけじゃないと思うから、マコトとミキも一緒に居ると思った方が、叶った事になるだろう。
「うん。ありがとうサオリ。イオリも、ありがとう。心配かけて、ごめん。」
『何でさっき謝られたのかは後で問い詰めるとして、貴方にとって大事な事でしょうから、仕方ありませんよ。』
「あたし達は居なくなったりはしません。兄上が望む限り一緒にいます。」
イオリやサオリが居てくれたからこそ、僕の心は救われたんだ。勿論、マホやシホにも。
サキの願いとは違う形なんだろうけれど、叶えようとしてくれたノアにも感謝している。
「もう一つ、謝らなきゃいけない事があるんだ。」
そう告げると、僕は立ち上がり、二人に向き合う。
僕が彼女達に依存して、甘えていた事を素直に話して、謝らなきゃいけない。
でないと、僕は先に進めないから。
「僕は君達に酷い事をしてきた。自分の心に開いた隙間を、イオリ達と居る事で埋めていたんだと思う。イオリ達の気持ちが心地よくて、ただ甘えていて向き合おうとしなかった。だから、本当にごめんなさい。」
謝罪と共に、二人に頭を下げる。
怒られたっていい、嫌われたとしても仕方ない。でも、伝えない限りは、僕は彼女達といる資格はないと思った。
『顔をあげてください、謝る必要なんてないんです。私達は、ご主人様がいるから生まれたんです。なので、甘えたっていいんですよ。貴方のものなんですから。』
「兄上、姉上の言う通りです。あたしだって、1人でなんて生きて行けません。兄上にとって、失ったものが大きかったから、誰かの支えがないといけないくらい、落ち込んでいたんでしょうから、あたし達がその手助けが出来ていたのなら嬉しいと感じはしても、怒ることなんてありませんよ。」
二人の言葉に、涙が溢れる。
「ありがとう、二人とも。」
顔をあげて、イオリとサオリにお礼を言う。
ありがとう、僕の側に居てくれて。イオリやサオリ、マホやシホ全員を絶対に離したくない、そう強く思った。
「兄上、泣かないでください。」
サオリは指で僕の顔を拭うと、僕の頭を抱きしめる。
『サオリちゃん、ズルいですよ。』
イオリはそう言いながら、僕の頭を撫でた。
「兄上も柔らかい方がいいでしょうから。」
『サオリ、空気を読みなさい。』
二人のやり取りが可笑しくて、つい笑ってしまう。イオリ達も僕につられて笑いだした。
うん、イオリに朝の返事をしないといけないな。
「ねぇ、イオリ?」
『なんでしょう?』
唐突に呼びかけられた彼女は、首を傾げながら聞き返す。
「指輪は今はないけれど、僕と結婚、してくれないか。」




