3 すき ②
『ねぇ、ご主人さま?何故この人は空のお鍋をかき回してるの?』
「えーっと、それは僕にもよくわからないな。」
このシーン子供だと理解しづらいよね、病んだ描写なんて。
『んー?』
イオリはそう首を傾げるが、そのまま2人で続きを見る。
僕もこのアニメあんまりしっかりとは見て無いけれど、自分の大事だった人が、別の人と付き合う事にでもなってたとしたら、そうなる気持ちはわからなくはない。僕の大事だった人も凄まじく暗い表情をしていたって話、聞いた事があるような。
アレは誤解ではあったんだけど、大事だった彼女も似たような気持ちだったのかなと、昔あった騒動を思い出していたらまた胸が少し痛んだ。
いっその事、絶対に戻る事の無い日常なんて、忘れてしまえばどんなに楽になれる事か。
そう考えている自分に嫌気が差す。それを含めての僕なんだというのに。
『大丈夫ですか?やっぱり、具合悪いですか?』
どうやら、また暗い表情になっていたようだ、この子にまた心配そうな表情をさせてしまった。折角2人でゆっくりしているのに、見始める前の表情を見てその後も僕の様子を気にしながらアニメを見ていたようだ。
「大丈夫、大丈夫。ちょっと考え事していただけだよ。」
これでは駄目だ。
そう思い首を振ると、外の景色が茜色に染まっている事に気付く、アニメとおしゃべりで時間が大分経っていたようだ。
「もうこんな時間か。そろそろ晩ご飯作りしなきゃ。丁度アニメでもしてるしね。」
『何にも入ってないですけどね。』
「あはは、今日は何作ろうかなー?」
『カレー食べたいです!甘いの!』
「いいね、僕も甘いのが好きだから甘口のカレーにしよう。」
『この前のカレーは凄く辛くて、味わからなかったです。」
暫く前に、イオリも成長した事だし、たまには辛いカレーを作ろうかなと思い、いざ作ると調整に失敗したらしく、僕もギリギリ食べれるぐらいの辛さになってしまった。
「アレは失敗だったね。そうだ、イオリも手伝ってくれるかい?」
『はい!お手伝いします!」
どうやら先程の表情は誤魔化せたようだ。
「じゃあ、保管庫にあるニンジン、タマネギ、ジャガイモを持ってきてくれる?」
『はーい。』
徐々に料理に興味を持ち始め、最近じゃ一緒に作る事も増えてきた。まぁ、たまにアニメに夢中になりすぎ中々ご飯食べようとしなくて、喧嘩になっちゃう事もあるんだけれども。
その辺りは、僕にも覚えがありすぎて余り人の事は言えないのだが。
そんな風に今日も一日が過ぎていった。