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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
はじまり

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9 あおはる ③

 翌朝、朝食の後で昨日作った油揚げをおいなりさんにする為に仕込みをする。僕は甘辛いおいなりさんが好きなので、醤油と砂糖で煮付ける。


 調味料も自家製の物を作りたいとは思うけれど、去年まではまだ余り余裕がなかった。今年からは色んなものを自家製に切り替えていけるように、作る作物を増やしていく予定だ。


 恐らく、今日辺りが桜の見頃だと思うから、お昼からお花見をしようと伝えて、皆でお弁当を作る。


「だんなさま、見てみてー!」

「凄く、大きいです。」

 マホさんや、それは最早でかいおにぎりに油揚げを被せているだけだよ。


「兄上、唐揚げも出来ましたよ。これで全部ですね。」

「ありがとう、サオリ。加工食品が作れたらもう少し品数増やせるんだけどね。」

『それは仕方ないですよ。これから作れるようにしていきましょうね。』


 食生活が豊かになると皆きっと喜ぶだろうから、頑張ろう。


 お弁当を詰めて、敷物と飲み物も用意して皆でお花見に出かける。


『いい天気ですね。風も気持ちいいです。』

「うん。いい散歩日和だ。」

「だんなさまー!だっこー!」

「ボクもだっこしてください!」

「ふ、二人同時は無理かな?順番ね。」

 マホとシホがだっこをせびるのだが、同時に抱えると成人女性並みになるため、二人一緒に抱えるのは僕には出来ない。


『ご主人様、私もー!』

「姉上は無理でしょう。重いですし。」

『サオリちゃん、何か言いましたか?』

「いえ、気のせいです姉上。」

 笑顔で凄むイオリに、サオリも恐怖を感じたらしい。

 イオリさん、その笑顔は怖いです。


 マホとシホを交代で抱き抱えながら、今日の目的地を目指す。

 途中、本気で抱っこされたかったらしいイオリに抱き付かれたりしながら、和やか?に目的の場所に辿り着いた。


『綺麗ですね。』

「うん。本当に綺麗だ。」

 一面に咲く満開の桜の中に立ち、イオリが呟いた。


 風で花びらが舞い、その中に佇みながら腰まで伸びた桃色がかった赤い髪をたなびかせ、穏やかな表情で微笑む彼女に見惚れていた。


「だんなさま!早くごはんたべよー!」

 マホに急かされ我に返った僕は、桜の樹々の中心に敷物を広げる。その場所だけ空が枝に遮られておらず、ポッカリと穴が開いたようになっていた。


「桜って弱い木だから、かなり間隔を開けておかないといけないんだってね。」

 〈根の育成のために必要な処置です。枝の剪定を行うために、隔壁から余り離れていない箇所や施設の近く等で育成をしています。この区画では、ここだけでなく何箇所か自生させていますが、いずれも管理しております。〉


 そんな事もノアが行っていたのか。おかげで僕らは桜を楽しむ事が出来るんだな。

「ありがとうノア。キミのおかげで、僕達は豊かな生活を送れているんだね。」


 〈私はあなた達の補助をする為に居るのですから、感謝しなくても大丈夫ですよ。〉


「兄上、早くお弁当食べましょう。」

「あ、あぁ、うん。食べようか。」

 違和感を覚えたのだが、サオリに急かされ取り敢えずお弁当を展げる事にした。


「だんなさま、マホが作ったの食べて!」

 このでかいおにぎり僕の分だったのか。

 これ食べたら、他に何も食べれなくなっちゃうんだけど、マホが頑張ったんだから無碍にも出来ないし、食べるしか無いよね。


「あ、ありがとうマホ。」

 三角形のおにぎりの角全てに、油揚げを被せてているマホのお手製を食べながら、桜を楽しんだ。

 結構固めに握られていて、中の具には唐揚げが使われていたので、食べきる頃にはお腹がはち切れんばかりに膨れてしまった。


 お弁当も食べ切り、後片付けをして、一休みをしてから帰宅をした。食べ終わってすぐは、満腹過ぎて動きたくない。


 その日は特に作業をする予定はなかったから、帰宅後はマホ達とアニメを見て、夕食を摂りお風呂に入った。


 僕がお風呂から上がると、マホとシホがうとうとしていたので、イオリとサオリが僕の部屋に連れて行き、先に寝かせてくれた。なのでそちらは任せ、僕はノアと畑の事で相談をする。


 ノアの意見を聞いていると、結構時間が経っていたらしい。

 サオリが居間の扉を開けて中に入ってくる。しかし、先程まで寝間着だったのに、何故か普段着に着替えていた。


「兄上、少し時間をくれませんか?」

「どうしたのサオリ?」


「一緒に来て下さい。」

 真剣な表情で、ついて来て欲しいと言うサオリ。

 何かあったのだろうか?


 彼女に従いついて行こうとすると、外に出ようとしている。


「サオリ、どこに行くの?」

「ついて来て下さい。お願いします。」


 先程よりも真剣な、必死そうな顔で告げられ、その剣幕におされて、僕は黙ってサオリの後についていった。

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