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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
はじまり

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8 がっこう ⑦

 牧場へ行ってから何日か経過して、漸く明日木材が届く事になった。

 その間は、畑に植える野菜の種を決めたりしていた。


 朝食の時に、明日木材が届く事を彼女達に伝えた際、僕はある事に気づいた。


「ねぇ、ノア?椅子って釘だけで人の体重って支えられるの?」


 〈体重が軽ければ可能ではありますが、耐久性に問題は出るでしょう。接着剤を併用したり、組み合わせる際にホゾを作る等する事で耐久性は増します。〉


 やはりそうなのか。今使っている椅子は見える部分に釘は使われていない事に気付いたのだが、構造がイマイチ理解出来なかった。そこまで本格的にするつもりは無いとはいえ、すぐ壊れるのは困る。なるほど、接着剤か。


「接着剤って作れるものなの?」


 〈工業製品もありますが、この区間内にあるものでも作れますよ。ニカワです。〉


「ニカワ?それはどうやって作るの?」


 〈手順は簡単で、牛皮や牛骨を水に一晩漬けて、それを一定の温度で煮るだけです。ですが、独特の臭いがあるため、室内では煮こまない方が良いでしょう。〉

 そんな方法で接着剤が作れるのは知らなかった。

「薪で出来るかな?」


 〈温度管理は難しいでしょうが、可能だとは思います。〉

 なら、それを作ってみようか。失敗してもまた作ればいい。

「ノア、牛皮の調達お願いできるかな?」

 〈かしこまりました。2時間程で輸送できます。〉


「だんなさま、ぎゅうひってなんですか?」

 シホの質問は想定していたが、これは全員同じような顔をしているな。

「牛の皮の事だよ。」


 僕の答えを聞いた瞬間、マホとシホの顔が強張る。イオリとサオリは平気そうだが、内心は複雑だろう。皆動物好きだし、ついこの間生きている牛を見たんだ。無理もない。


「うしさんのかわ取っちゃうの?そんな事ノアちゃんがするの?」

「生きている牛さんからは取らないよ。そうだよね?ノア。」


 〈はい。食肉加工をした牛の皮をなめして保存してありますので、そちらをお持ちします。同時に牛骨も利用する方が良いでしょうから、そちらも少量お持ちします。〉


 これは、食育の機会でもありそうだから、いい機会かもしれない。

 ノアの説明はシホとマホにはわかりにくかったようだが、僕が改めて言い直す。多分、ノアはワザと難しい言葉を選んで使ったのだろう。僕に説明させるために。


「ねぇ、マホ、シホ。普段食べてるお肉って何のお肉かわかるかい?」


「うしさんとぶたさんと、とりさんです。」

「うん、シホ、良くできました。この間見てきたね。その豚さんや牛さん達の命を僕達は分けて貰ってるんだ。生きるために。」


「はい。ボクたちがいただきますしてるのは、作ってくれた人だけじゃなくて、いのちを分けてくれたいきものにもありがとうっていうためだって。だんなさまが言ってました。」

 漫画の受け売りですけどね。


「じゃあ、命を貰ってしまった牛さんの皮や骨ってそのまま捨てるのはイヤだよね?」

「はい。かわいそうです。」


 これは、人間のエゴなんだろうけれど、僕だってただ廃棄するのは抵抗を感じる。ここに来るまではそんな事思いもしなかったくせに、今はちゃんといただきますって言葉の意味を感じる事が出来る。


「昔の人もそうだったんだよ。皮や骨までちゃんと使う事で、貰ってしまった命により感謝をしたんだ。だから、僕達も感謝して使わせて貰おうね?」

 正直、これはウソも入ってる。でも、そんな優しい世界の方が僕は好きだから、これぐらいはいいよね?


「はい!」「わかりました。」

「うん、2人ともいい子だね。」


「兄上、お父さんみたいですね。でも、あたしもその話良くわかりました。」

 サオリも素直でいい子だな。でもお父さんみたいは、ちょっとやめて欲しいかな。


『サオリちゃん、そんな事言ったらノアがお母さんになっちゃうよ?ご主人様をノアに寝取られた事になるよ?』

 それは謎理論な気がする。

「姉上、それは流石に変ですよ。」


最後おかしな方向に話が行ってしまったが、明日が楽しみになってきた。

朝食を終えて、牛皮や牛骨を受け取り、明日のために牛皮や牛骨を水に漬けてから、僕は畑で今日の分の作業を終わらせる事にした。

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