2 めいど ②
「ノア、ひつじは何処に行けばいるのかな?」
〈この場所から2キロ東に、牧畜用の家畜を飼育する施設があります。〉
2キロだと、イオリの足で辿り着けるのかな?基本的に道は無いために森とか草原を移動する事になるから、僕の体力でも中々に辛いんだけど。
『ひつじさんにあえるの?』
目をキラキラさせてこちらを見つめていらっしゃる。
「うん、そうみたいだね。」
しかし、地形の起伏や、崖のような通れない場所はないはずだけど、どうなんだろう。イオリは遠出した事が無いため、この家の周辺以外の場所は知らない。
多分、体力がもたなくておぶったり、抱き抱えて帰る事になるだろうと思いつつ、イオリを見つめる。
『いきたいなー?ひつじさん見てみたいなー?』
最近、喚いたり大声出したりは減ってきたけれど、こんな風におねだりする事を覚えて徐々に手強くなってきた。
『ねー?ごしゅじんさまおねがい!』
「仕方ないなぁ。」
そう言いながら覚悟を決める。明日は筋肉痛になるであろう。
僕の覚悟を知ってか知らずか
〈彼女の身体能力ならば、問題なく往復可能です。〉
呼びかけていないのに、そうノアからの回答があった。珍しいな。
「そうなの?往復4キロだから僕でも疲れるよ?」
そういえば、最近走って逃げられるとすぐに捕まえるのが難しくなってきたような。
『やった!ほらーすぐいこー!』
「はいはい、わかったから引っ張らないの。」
余程嬉しかったのか、軽く飛び跳ねながら僕の腕を引いてすぐに出発しようと促す彼女を静止しつつ、準備を始める僕。
「じゃあ、行こうか。」
『はーい!』
準備が整い出発しようと玄関を出た際、思い出したかのように振り向き誰も居ないはずの空間に声をかけた。
「いってきます。ノア」
『いってきまーす。』
2人で見渡す限りの草原を歩きながら、僕はノアについて考えていた。基本僕から呼びかけ無い限り反応はないし、先程のように挨拶だけでも反応は無いんだけれど、ノアが居なければ僕は生きていないはずだし、農作業なんかも出来ない。僕は農業の知識無いし。
食事だって、まだ穀類の作付けに手を出していないのにパスタが作れたり、お米なんかもノアから提供されていなければ食べる事は出来ない。
イオリにだって会えなかった。
感謝の言葉はシステムであるノアには伝わらないだろうけれど、イオリに会わせてくれてありがとう、生かしてくれてありがとうって伝えたい。
若干のもどかしさを抱えて、イオリと手を繋いで最近2人で見た古い子供向けアニメに話をしながら、教えられた施設に向かった。
古い子供向けアニメは○休さんとかその辺イメージしていただければ。




