8 がっこう ①
シホとマホが家に来て、1週間が経過する。
まず変わった事が、これまではイオリとサオリが一緒の部屋を使っていたのだが、別々の部屋を割り振った。
部屋はまだ余っているのに、寧ろ今まで二人で一部屋を使わせていた事の方が、申し訳なく思う。
シホとマホにも部屋を割り振りはしたけれど、眠る時はイオリやサオリと同じ部屋で寝ているはず、なのだが、僕が朝起きると何故かシホとマホどちらか、または二人共が布団に潜り込んでいる。
どうやら、夜中に起きだして、僕を探しているようなのだ。
普段から鍵をかけずに寝ていた僕に原因があるけれど、一度鍵をかけて寝たら、夜中に二人が泣きながら僕の部屋の扉をドンドンと叩き、ちょっとした騒ぎになってしまったので、それ以降は鍵はかけず、シホとマホのやりたいようにさせる事にしたのだ。
まだ小さいから仕方ないと思う。ただ、その事で困った事をする二人も居る。
今日も相変わらず、シホとマホは布団に潜り込み、僕の服にしがみ付いて寝息を立てている。それはいい。
だが、何故イオリとサオリまで一緒に寝ているのだろうか。
「兄上おはよー。」
僕が起きてイオリ達も居た事に驚いていると、サオリが目を覚まし、目を擦りながら朝の挨拶をする。
「うん、おはよう。じゃなくて、何でシホやマホはともかく、イオリやサオリまで居るの?」
しかも、ちゃんと自分達の布団まで敷いて。
サオリはまだ眠いのか、おはようとは言いはしたものの、その目は殆ど開いていない。聞こえてないだろうな。
僕の話声で、起こしてしまったらしいイオリも、サオリと同様に、此処にいるのがさも当然かの如く挨拶をしてくる。
『ご主人様、おはようございます。』
サオリとは違って、イオリの寝起きはいいようだ。綺麗な長い髪が乱れている姿に、僕はドキドキしてしまうけれども、今は置いておく。
「うん、おはようイオリ。イオリとサオリも居る理由を説明してくれるかな?」
『シホちゃん達が潜りこむのを止めるぐらいなら、皆で寝ればいいと思いまして。』
その答えは、理由になっていないな。
「なるほど。とは言わないからね?イオリもサオリも、もう立派な女性なんだから、少しは自重してよ。」
『だから、ですよ?』
クスクスと笑いながら、答えるイオリに心臓の鼓動が更に早くなるのを感じた。
そんなやり取りから、今日も一日が始まる。
シホとマホの着替えや洗顔はイオリ達に任せ、僕は朝食を作る。かなりの量を作らなければならないため、トースターやフライパンを全力で稼働させて準備をする。
人数が増えたので、日が昇る前から作り始める事も考えなくてはいけないだろう。
食事の準備自体も、イオリ達が手伝ってくれるし、皆で話をしながら作るのは中々に楽しいものだから苦にはならない。
この光景が、正直愛おしくもある。
朝食の用意が終わり、全員で朝食を摂る。食べている最中も、人数が増えたからか、賑やかだ。
「だんなさま!マホがっこういきたい!」
「学校?どうしたの急に。」
マホの突然の発言に思わず聞き返してしまうが、またアニメの影響かな?
「マホ、べんきょうしてみたい!」
「ボクも、まーちゃんとべんきょうしてみたいです。」
僕は勉強はしたくないな。余り得意ではないから。いや、流石に言わないけれど。
「そうなんだ。でも、どうして突然?」
「きのう見たのが、たのしそうだったから!」
やはりアニメの影響のようだが、沢山の子供達が楽しそうに遊んだりしている事が、羨ましく見えるのだろう。
そう感じる事は、仕方ないのかもしれない。
「なるほどね。そうか、学校か。」
そう言えば、読み書きとか出来るのだろうか。
まてよ?僕のタブレットを操作しているから、文字は読めるのか、なら書く事も出来はするだろう。
よく考えると、今までは当然のように思っていたが、僕は文字を教えてはいないのに、彼女達が文字を読める事が不思議に思えた。
「あれ?僕、今まで気にしてなかったけれど、イオリやサオリも文字が読めないと、アニメのタイトルもわからないよね?これが刷り込みって事?」
気付いたら皆出来ていたから、気にもしていなかった。
〈はい、そうです。貴方が居ない時間等を利用して、イオリには文字や言葉を教えて居ましたし、サオリやシホ、マホにもあらかじめ刷り込みと言葉の教育を行なっていました。勿論全てではなく、貴方が教えた事も多いです。〉
やはり、そうだったのか。ノアの補助が必要だった部分って、こう言う所もだよな。だから、イオリはノアを姉であり、先生だと言ってたんだ。
なんだか、悔しいな。こんなにも僕は、彼女達自身を見ていなかったんだ。
僕はつい黙ってしまって、暗い表情をしていたようだ。
『ご主人様は慣れない畑を作ったり、食事の用意をしたり、家事をこなしたりで大変だったんです。だから、気にやまないでください。それに、ノアもご主人様に聞いてみたらいいと言っていたりしましたし。』
〈当機も全てを把握しているはずもなく、人の感情を表現する言葉もありますので、分担して彼女達を育てていたのです。貴方が気にする事ではありません。〉
イオリやノアから慰められるが、違うんだよ。僕が思っているのは僕の中に、彼女達にこれだけ教えたのだからと言う、優越感のような気持ちがあったと気づいた事。
その事が、僕は恥ずかしいんだ。それが彼女達をきちんと見ていなかった、原因の一つだろうから。
「イオリ、ノア、ありがとう。でも、気にしているのとは違うから大丈夫だよ。」
シホとマホは、自分達が変な事を言ったと思ったのか少し焦っているようだ。サオリやイオリは心配そうな顔をしている。
僕は、後悔をしちゃいけない。省みる事がこれからのために必要なのだろう。それなら。
「シホ、マホ。なら、学校を作ろうか。」
僕は僕に出来る事をしよう。




