7 かぞく ⑤
その日から、彼女達の何気ない仕草や、表情を眺めるとドキドキしてしまうようになった。
今までと、二人の何かが変わったわけではないはずなのに、僕自身が少し変わったからなのだろう。
これは、わかっている。僕に何が起こったのかは。まだ罪悪感は拭いきれていないけれど。
そうして2週間が経ち、今日家族が増える事になる。
「楽しみですね兄上、姉上。どんな子なんでしょう?」
『少し不安もありますけど、妹が増えるのは嬉しいですね。』
「きっといい子達だと思うよ。」
僕達は新しい家族を迎えるため、培養区画を訪れていた。
『それで、ご主人様。二人の名前は決まっているんですか?』
「シホとマホだよ。名前は大分前にノアに付けるように言われてたから。」
「兄上。そう言う事はもう少し早く教えてください。」
サオリは少し残念そうに答えたが、何かあったのかな?
『サオリちゃん、名前考えちゃってましたからね。ご主人様の事だからもう名付けてるとは思いましたが、面白いので黙ってました。どんななまめっ!』
「あ、姉上!しーっ!」
顔を真っ赤にしたサオリが、慌ててイオリの口を手で押さえこむ。
あー、言わなかったからまだ名前が無いのかと思っていたのか。それは悪いことをしたな。
「ごめんね、サオリ。ありがとうね。」
まだイオリの口を塞ぎながら、慌てているサオリの頭を優しく撫でる。
最近違う意味でボーッとしすぎだな。もっとしっかりしなければ。
「兄上!姉上の言った事は忘れてください!」
「うん。僕は何も聞いてないよ。」
『むぐ!』
「そろそろイオリを離してあげて。ちょっと苦しそうだよ。」
かなり力を込めて押さえられていたのか、イオリはぐったりしていて、サオリは余計な事を言うからだと言わんばかりにイオリを睨んでいた。
『非道い目に合いました。サオリちゃん、もうちょっと加減して。』
「姉上が意地悪言うからです!』
「まぁまぁ、僕が悪かったんだから。二人ともごめんね。」
「兄上は反省してください!」
僕も怒られてしまった。まぁ当然だよね。
相変わらず寒いくらいの培養区画ではあるが、賑やかに会話をしながら、目的の部屋に辿り着く。
「ここか。」
『ちょっとドキドキしますね。』
「そうだね。ノア、着いたから開けてほしい。」
〈かしこまりました。〉
僕は端末に呼びかけ、扉を開いてもらう。僕の端末では開けられないからだ。
音もなく扉が開く。中からは温かい空気が通路側に流れた。
そこは白い壁面に、赤いカーペットのようなものが敷かれている20畳程の部屋になっていた。
中央付近に大きめのベッドが見え、積み木やぬいぐるみ等のおもちゃが散らばり、モニターやテーブル、そして海でも見た白い人形がベッドの付近に立っている。
子供達の姿は見えない。
『誰もいないように見えますが?』
「とりあえず、中に入ろう。」
入り口にずっと立っている訳にもいかず、とりあえず中に足を踏み入れる。
「「はじめまして、だんなさま。」」
「ひゃっ!」『きゃっ!』「うわっ!」
通路からは丁度死角になる位置に二人並んで立ち、こちらを見上げている。かなり驚いた・・・。イオリやサオリも突然声が聞こえたから、思わず声が出てしまったらしい。
「やったね、しーちゃん。」
「うん。せいこうだね。まーちゃん。」
悪戯成功と言わんばかりに、笑顔で顔を見合わせている二人。
髪はどちらも肩よりも長く、顔つきは二人共違うが、どちらもかわいらしいと言える顔立ちだ。身長は7歳ぐらいだろうか?
「キミ達がシホとマホ?」
「「はい、だんなさま!」」
名前を呼ばれて、嬉しそうに僕の腰あたりに抱きついてくるシホとマホ。
今度は旦那様呼び?言葉通りの意味じゃないよね?
『どちらがシホちゃんで、どちらがマホちゃん?』
「失礼しました。ボクがシホです。」
青い髪で、吊り目がちのこの子がシホね。
「マホがマホです!」
黄色い髪で、イオリより垂れ目なこの子がマホか。
髪の色は培養液の影響だとはわかっているけれど、改めて見ると凄い色だよね。ここに来るまで赤や緑の髪の色なんてあんまり見た事ないよ。染めてる人のと違ってツヤあるし。
『私はイオリ。こっちはサオリちゃんですよ。』
「イオリねぇさまに、サオリねぇさまですね。」
「イオリおねえさまに、サオリおねえさま。マホおぼえた!」
シホは丁寧にお辞儀をしながら、マホは元気よく片手を上げながら答える。
『かわいい!シホちゃん、マホちゃんこれから宜しくね?』
「シホちゃんとマホちゃん、かわいいなぁ。二人共よろしくね。あたしがサオリちゃんですよー。」
「「はい!よろしくおねがいします!」」
「こちらこそ、よろしくねシホ、マホ。」
この二人なら、イオリとサオリとも新しい姉妹として仲良くやってくれそうだな。
「ところで二人共、兄上を旦那様って呼ぶのはどうして?」
サオリは、シホとマホが僕を旦那様と呼ぶ事が気になったらしい。
「それは、ボクたちだんなさまのおよめさんだからです。」
「えっと、マホたちだんなさまのおよめさんなの!」
「えっ?!」『えっ?』「えーと・・・。」
これは、どうしたらいいんだろうか?




