7 かぞく ④
少しの間3人で泣いていて、落ち着いてから僕は改めて二人にお礼と悲しませた事の謝罪を言う。
「こんな僕を心配してくれてありがとう。そして、悲しませるような事を言ってごめん。」
「そんな!兄上は悪くないですよ!」
『私達は大丈夫ですから。ご主人様、今日はもうお休みしましょう?』
「うん、そうするよ。なんだか、もう疲れたよ。」
ずっと泣いたり、感情が暴発したからだろう。食事を摂る気にもならなかった。
「兄上、それがいいですよ。」
サオリがそう言うと、二人で布団を整えてくれた。なんか情けない所ばかり見せてしまったな。
『じゃあ、サオリちゃん。私達も寝間着に着替えてきましょうか。』
ん?
「そうですね姉上。」
んん?
『晩ご飯は私達も要らないですから、今日はもう私達も休みましょう。ご主人様少し待っててくださいね。』
「待っててって、何を?」
嫌な予感がして、恐る恐る尋ねてみる。
「何言ってるんですか?あたし達も寝るんですよ兄上。」
「うん、それはわかる。」
『だから、私達も着替えてくるので、大人しく待っててくださいね。』
「何かおかしな事でもありますか?」
キミ達ここで寝るの?さも当然の如く言ってるけど、それは拙いよ。僕、男の子だよ?
「いやいや、二人とも、少し待って。当然のように一緒に寝ようとしてないか?」
「何言ってるんですか?」
あぁ、よかった僕の思い過ごしだったか。それはそれで恥ずかしい事を言ってしまった。
『当然じゃないですか。』「当然ですよ。」
「えっ?」
『それじゃあ、サオリちゃん。ご主人様が鍵をかけないよう、交代で着替えてきましょう。』
「わかりました。それなら、あたし先に着替えてきます。」
「いや、ちょっと。お待ちになって?」
思わず変な口調になったが、二人は待つ気はないようで、サオリはそそくさと部屋を出て行った。
『ご主人様?どうかしましたか?』
悪戯っぽくクスクスと笑いながら、イオリが僕に尋ねてくる。謀ったな!いや、謀ったわけではないだろうけど。
『そんな難しい顔しないでください。私達も恥ずかしいですけど、今のご主人様を、放っておくなんて出来ませんよ。』
二人は僕が心配で放っておけなかったようだ。今日は醜態を晒したんだ、二人のしたいようにしよう。
「僕だって男の子なんだから、あまりからかわないでね。」
『からかってませんよ?こうでもしないと、意識してくれないじゃないですか。』
「いや、それをからかっていると・・・。」
『違いますよ。サオリちゃんはまだちょっと中身が幼いですけど、ご主人様を一人にしておけないからですし。私だって、貴方を今一人にするのは知らない所で泣いてしまいそうだから、出来ません。』
凄く真剣な眼差しで、僕を見つめるイオリ。思わず心臓が高鳴り、その眼差しに吸い込まれてしまいそうだ。
腰まで伸びたピンクがかった赤い髪。垂れ目がちだが、整った顔立ちでかわいいといった印象を受ける。女性的な丸みはあるものの、全体的に細く、強く抱きしめると壊れてしまいそうな程だ。
そんな魅力的で僕を慕う女の子が隣に寝ていたら、耐えられるのだろうか?
「姉上!今戻りました。って、何二人で見つめあってるんですか!」
『もう戻ってきちゃいましたか。残念です。』
「姉上!さっさと着替えてきてください!」
『仕方ありませんね。』
イオリは本当に残念そうに答え、部屋を出る。サオリが来なかったら、本当に色々と危なかった。
「全く、油断も隙もありませんね。約束守る気あるんですか姉上は。」
「約束って?」
「それは、秘密です!」
しまったといった表情をしながら、慌てて誤魔化すサオリ。大体は想像ついてるけれどね。
「それより、兄上。本当に大丈夫ですか?」
「うん。ありがとう。」
「無理はしないでね。」
そう言いながら、サオリは徐ろに近づき、座っている僕の前で両膝をつくと、僕の顔を覗き込みながら頭を撫で始める。
「さ、サオリ?」
「兄上は、もう少しあたし達を頼ってほしいな。」
その言葉に僕は何も言えなくなって、俯いて大人しく頭を撫でられていた。
ふわりといい香りがする。
サオリの方を見ると、嬉しそうな表情をしている。
だが、寝間着の胸元に確認出来る自己主張は、本人の無邪気さに比べて、ややミスマッチな印象だ。
以前は自分の表現が出来なくて、言葉に出来なかったり、黙ってしまう事があって、大人しく見えたんだろうな。
「兄上?どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。」
じっとサオリを見つめてしまっていたようだ。僕は恥ずかしくなって、顔を背けてしまった。
「兄上照れちゃって、かわいいなぁもぅ!」
そう言って、サオリは僕の頭を抱きしめた。
いや、当たってる、当たってるから!
「あの、サオリさん?離してはくれないかな。」
イオリが戻るとまずい事になるから。
「さっき、姉上もしていたから、あたしもするんですー!」
その対抗意識はちょっとやめてほしい。いやホントに。
そうこうしていると、イオリが寝間着へ着替えて戻ってくる。
「お待たせしました。って!サオリ!何してるの!』
「姉上と同じ事!」
やはりそうなるよね。
また始まってしまった言い争いを聞きながら、僕は先に横になる。
なんだか、凄く疲れた。横になるとすぐに眠気が襲ってきて、僕の意識は眠りへ落ちていった。




