幕間 ユウシャ ⑦
そこから、ナツキに連絡をし、ミサキと一緒に戻る事を伝えて俺とミサキは車で家に戻った。
ナツキは驚きはしたものの、わかったとだけ言っていた所を考えると、ミサキの居場所を知っていたのではないかと思う。
車内では、一緒に居なかった時期の話をした。
俺が荒れていた事や、ナツキに叱られた事等だ。ミサキも何があったのかの事情を話した。地質調査をしているときに連合への誘いがあり、ドクに事情を伝え、半分スパイ目的もあった事などを話してくれた。
ドクとナツキは解っていて、俺に伝えなかったのは間違いない。恐らく俺が反対するとわかっていただろうし、ミサキの3人で帰るという思いも尊重したかったのだろう。
知っていたらそんな危険すぎる事、当時の俺なら確実に反対していた。
自分の子どもっぽさに嫌気が差すな全く。
車を飛ばして帰ったため、割と早く家に着いたが、残り時間はそんなにないため急いで家に入り、リビングで事情を話した。
「そんな事になっているとはな。私やユウ君の行いが裏目に出てしまったのか。」
『ドクのせいじゃないよ。後先考えない連中のせいじゃん。』
「連絡する手段があれば良かったんですけど、何分連合とこちらでは直接連絡する手段がなくて・・・。私も粛正対象だったので、監視が居ましたから余計に・・・。」
ミサキの話を聞いたドクとナツキは驚きを隠せないでいた。ミサキは俺の居場所を確認した際には何も言わなかったらしい。まぁ、俺と2人きりで最後を一緒に迎えたかったからなんだろう。
「あれ?息子は?」
ふと、この場に息子が居ない事に気付く。
「あぁ・・・」『あの子は・・・。』
ドクとナツキは顔を見合わせ、暗い顔をしながら、事情を話してくれた。
あの最初の地震で、息子への誕生日プレゼントを友達と下調べに行った恋人が巻き込まれ、死んでしまった事。
その時のショッピングモールのあった場所が陥没孔になっていて、友達も含めて死体は見つからなかった事、だから息子は部屋からも出ず、1か月近くただただボーッとしていて食事も余り食べないとの事だった。
その話を聞き終え、俺は自分への怒りに震えていた。大事な家族が大変な時に、何をしていたんだ俺は!
『ユウは自分の責任を果たさなきゃならなかったんだ。あの子にはアタシだって居る。だから怒るとは思ったけど、言わなかったんだよ。』
「そうだね。ユウ君が気に病む事はない。私だってついているんだ。キミはキミにしか出来ない事をしていたんだから。」
2人は俺を慰めるが、俺の気持ちは晴れない。そんな時。
「・・・なさい。」
ミサキの呟きが聞こえ、俺はミサキを見る。
「ごめんなさい、私が止められなかったから。ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」
泣いていた。後悔と自責の念で、真っ青な顔をして下を向いて泣いていた。沢山の人を殺してしまったと思い至ったのだろう。身の危険を感じていたために、これまではそんな事を考える余裕もなく、俺達の話を聞き、実感してしまったのだ。無理もない。
「ミサキのせいじゃない、大丈夫だから。」
俺の声はミサキには聞こえていないだろうが、とにかく落ち着かせなければ。
『ミサキ、アンタは悪くないよ。止めようとしてたんでしょ?』
ひたすら謝罪の言葉を繰り返すミサキに、俺達はそんな風に慰め続ける事しか出来なかった。
少し時間が経ち、俺は立ち上がった。
「俺、少し息子の様子見てくるわ。」
ミサキはまだ涙を流してはいるが、謝罪を繰り返す事はやめドクやナツキの言葉に頷き返すくらいには、落ち着いたようだった。なので、息子の様子も気になるため確認をする事にした。
『あっ、うん。部屋に居るはずだから。』
「わかった。ミサキは頼んだ。」
『あいよ!』
ナツキに後は任せ、二階の角にある息子の部屋へと向かう。
中の様子を確認しようとドアをそっと開こうとするも、開かない。
鍵でもかかって居るのだろうか?
少し力を込めて押すも、開かない。ドアノブは最後まで回せるので、鍵はかかっていないし、何かで押さえつけているなら少しでも開くはず。
余り時間がないのにと苛立つも、今は息子に気を使っていたら、このまま終わりを迎えてしまう。
すまないと思いながら、蹴破る事にした。
何度か蹴りを入れていると、音を聞きつけナツキがやってくる。
『ちょっと、アンタ何してんのよ!』
「いや、カギはかかって無いんだけど、様子がおかしいんだ。」
『え?』
ナツキは訝しみながら、ドアノブを回すがやはり開かない。
『おかしいわね?夕食の時は開いてたし、あの子最近はカギかけてなかったんだけど。』
胸騒ぎがする。
「すまん、ナツキ。ドアを壊すかも。」
そう言うと俺は助走をつけ、体当たりをすると、ドアが勢いよく外れ、部屋の中に入る事が出来た。
だが、空が見える。
「なんだこれ・・・。」
部屋があったはずの空間は、部屋毎が切り取られたかのように何もなくなっていた。
いや、事実切り取られたのだろう。部屋のコンクリートの土台部分が見え、異臭を放っている。金属を焼き切ったような匂いも辺りに立ち込めていた。
『何コレ・・・。どういうこと?』
俺とナツキは呆然とするしかなかった。
いつまで経っても、戻って来ないナツキと俺の様子をドクが見に来るが、惨状を見てドクも思わず立ち尽くす。
「何があった!?」
『アタシもわかんないよ!ねぇ、ユウ!どうしよう!?』
2人はパニックを起こしていたのだが、俺には心当たりがある。
「とりあえず、リビングに行こう。」
『何言ってんの!?あの子を探さなきゃ!』
「そうだぞ!ユウ君!」
「いいから!とにかくリビングへ!推測通りなら、絶対見つからないから。」
俺の言葉にどういう事かと聞いてくるが、2人を制してリビングへ向かうよう促す。
渋々ながらもナツキ達は俺の言葉に従い、階下へ降りた。
「ナツキちゃん?ユウ君?どうしたの?」
まだ青い顔をしているが、先程より落ち着いたらしいミサキが俺達の様子を見て驚いて尋ねてきた。
「事情はこれから話すから、皆とりあえず落ち着け。本当に推論通りなら、生きているはずだから。」
ミサキはよく判っていないが、俺達の様子がおかしい事に気付き、一緒にリビングに入る。
そこで再び集まり、俺は自分の心当たりを話し始めた。
最近起きていた行方不明者について、今回の息子の部屋毎の消失と同様の事件がここ1か月で何件か起きていた事、恐らくだが、息子にもそれが起きたのではという事を伝えた。
『ハァ?だから何?見つからない根拠にはならないわよ。』
「まぁ聞けって。無論、行方不明者の捜索は行われたんだが発見はされていない。部屋に居る事が間違いない状態で、翌朝に部屋毎消失が確認された事例もある。そして、それ以降一切の痕跡が残っていないんだ。」
『だから何?』
「その人達は息子も含めてだが、ある共通点がある。」
『何よソレ?』
「調べた限りでは転移者の子孫や子供だって事。それも日本人転移者の。」
『えっ?』「何っ?」「それは一体・・・。」
ナツキ以外黙って聞いていたが、思わずドクやミサキも聞き返してきた。
「性別や年齢に共通性はなかったが、その点だけは一致している。」
『だから?』
「もしかしたら、なんだが。転移したんじゃないか?」
俺の推論を聞いた3人は唖然としていた。
「勿論根拠はない。ただ人が消えて、その痕跡がそれ以降一切なくなるなんて、普通ありえないんだよ。失踪だとしても、部屋ごとなんてあり得ないし。ここ最近の行方不明事件を調べていて、そう推測を立てていたんだ。まさか、息子が巻き込まれるなんて思いもしなかったけど、こうなってしまった今、そうであると俺は信じたい。」
『確かに、それなら、見つかるはずはないわね。でも、その方がいい、アタシもそう願いたい。』
「そうだね。ユウ君の言う通りかもしれない。むしろ、今となってはそうであって欲しい。」
「私達も帰れなかったのは残念ですが・・・。せめて息子さんだけでも助かっていて欲しいかな。」
息子は必ず生きている。そう確信は出来ないけれど、あの子が生きていてくれるなら、俺達は救われる。そう、思う。
その時、微かに揺れたように感じた。
「・・・始まったのか?」
「そう、みたい、ですね。」
「そうか・・・、なら私は部屋で過ごすとするよ。キミ達はここに居るといい。」
「親父?」
「積もる話もあるだろう?私はいいから。」
そう告げるとドクは1人リビングを出て二階へ向かう。
その背中を見て俺はいてもたってもいられずに、呼び止める。
「親父!」
「どうしたユウ君?」
「今までありがとう。」
ドクは何も答えず、ただニコりとだけ微笑みかけ1人で二階へと消えていった。
リビングに戻った俺は、ナツキの隣に腰掛け、肩を抱き寄せる。
『ちょっ!ユウ、アンタ!いきなり何よ!』
「久しぶりにくっつきたくて。」
「ちょっと、イチャイチャしないでくれないかな?私も居るんだから。」
ミサキは抗議の声を上げるが、表情は笑っていた。
徐々に揺れが大きくなり、地鳴りのような音が響いてくる中で、俺達3人は最後の瞬間まで、昔のように穏やかに会話を楽しんだんだ。
その間は、昔のままの3人だった。
幕間が想定の倍くらいの文字数になってしまいました。
ドクはデイブに頼んでユウにミサキの居場所についての情報が渡らないように細工をしていたため、隠居した後もミサキの居場所はわからないようにされていました。
ナツキとドクは勿論把握していて、定期的にデイブから報告が入っています。
最後のミサキ脱走後はデイブも捜索して、発見後にデイブがミサキをユウの元へ送っています。
その事はミサキ自身が、ドク達に発見の報告だけをするよう頼んでいて、デイブもミサキ自身で伝えるならと願い通りにしたわけです。
この描写をユウ視点で入れるととんでもなく長くなるのでカット&補足です。
クレーター→陥没孔に修正 7/8




