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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
ふたり

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幕間 ユウシャ ⑥

 最初の3年はただただ必死だった。

 ナツキとミサキを地球に返す。その為に勉強もしたし、ドクの元へ集まる情報を検討したりもしていた。


 でも、ドクが言ったように帰る術は見つかる事はなかった。調べれば調べる程、現実が突きつけられる。その時俺は荒れた。周りに当たり散らし、酒に逃げた。


 そんな時でも、ナツキは傍にいてくれたのに、ナツキにも当たり散らしてしまい泣かせてしまう事になる。


『アタシが好きな男はこんな情けないヤツだったのかよ!諦めちまうのかよ!アンタがそんなんじゃ、アタシはどうしたらいいんだよ・・・。』


 その言葉を聞いた時、俺はこの世界で生きていく事を決め、ドクの元でこの世界の戦争を終わらせる手伝いをし始める。

 それからすぐに、俺はナツキに思いを告げ、怒られはしたけれど、ナツキは俺を受け入れて、結ばれた。


 ミサキは、俺が諦めてしまう前に俺達とは別のアプローチで地質調査や考古学の調査をする事にしたようで、顔を合わせる機会があまりなく、俺とナツキと一緒にいる事はあまり無かった。

 多分、顔を合わせたくなかったんだと思う。ミサキはこの世界に来る前に、俺に思いを告げていて、俺は好きな人が居るからとその告白を受け入れなかった。

 そして、俺の好きな人がナツキだと気付いたために、距離を置く事にしたのだろう。


 連絡手段はあったのに、俺は気まずくて連絡が出来ず、ミサキは俺達の事を知らないまま、行方不明になる。むしろ、知ってしまったために、姿を消したのかもしれない。


 そして、この世界に来て4年目。

 俺とナツキは結婚して、子供が出来る。


 ミサキへの後悔があったが、ナツキを選んだのは俺だ。

 ミサキの行方については、ドクに頼んで調べて貰ってはいたのだけれど、見つからなかった。今思い返せば、ドクは見つけていて、敢えて俺達に伝えなかったのかもしれない。


 居た場所が、場所だけに。


 俺はドクの右腕として、ナツキと共にこの世界の戦争を終わらせるために活動をしたのだけれど、状況は変わらない。いや、冷戦状態になっただけまだマシだったのか?


 他の小国のためのエネルギー問題を解決したり、世界から戦争や紛争を無くす取り組みを主に担当していた。

 最初は妬みや嫌がらせなども多かったが、知識強化をされていたのは本当だったのか、ドクの知識を吸収出来ていた俺は成果を残して、そんな声も黙らせる事が出来たんだ。


 ナツキは育児があったから、国の中央に近い場所にあるドクの家にいる事が多かったけれど、子供が10歳になる頃には再び俺と一緒に活動を再開するようになる。


 一番変わった事と言えば、ドクを父と呼ぶようになった事かな?仕事は俺が引き継いで、隠居してもらった。

 童貞のまま父親になっちまったと嘆くドクに爆笑して、拗ねられて、でも俺達の子供におじいちゃんって言われて嬉しそうで、こんな日常がずっと続くと思ったんだ。


 俺達がこの世界に来て20年経った今、異変は突然始まる。


 最初は、地震だった。

 帝国は大陸プレート上にあり、地震なんて殆ど記録にない。

 なのに、大陸の中央に近い場所で大震災と呼べる地震があり、街一つが瓦礫と化すと共に巨大な断層が生まれる。

 原因はその断層だろうが、何故出来たのかの説明がつかない。

 他にも不自然なのは、多少離れてはいるものの他の街への被害が比較的少なかった点。もう一つは巨大な陥没孔だった。


 直径数キロの陥没孔が、突然出来たのだ。だが、隕石の衝突ではない。隕石落下の観測もされていなければ、発見場所が高温になった形跡もなく全く説明がつかない。


 2つ目の異変は、似たような陥没孔が近い時期に最初の物を合わせて、世界中に4つ出現した事。

 それから少しして行方不明の人間が各地で増えたり、世界中の植物の種を保管していた施設が突然消滅した事等、数えればキリがないくらいの異変が立て続けに起きる。


 そんな中家族も心配だったが、自分の責任も果たす必要があって、子供の事はドクやナツキに任せるしかなく、俺自身も疲弊していった。

 そのまま、1ヶ月近く家に戻れない日々が続く。


 そして、地震から丁度1カ月が経った今日。

 研究室でその日も夜まで1人資料をまとめていた。


「ユウ君、久しぶり。」

「ミサキ?ミサキなのか?」

 どうやってここまで来たのかはわからないが、突然ミサキが現れる。多少老けたが以前と変わりなく見える。老けたのは俺もだが。


「今まで何処に居たんだミサキ?」

「あれ?ドクに聞いていないのね。連合側にいたんだよ。」

 突然現れた彼女の話に俺は唖然とする。

「何故?」

「何故って、ユウ君が言うのかな?私じゃなくて、ナツキちゃんを選んだから、側に居られなくなったんだよ。」


「それは・・・。」

 思わず言葉に詰まる。

「ごめんなさい、困らせたいわけじゃないの。ただ、最後に会いたかっただけなの。」

「最後?」


 ミサキは何を言ってるんだろうか。

「もうすぐ、連合側の兵器のせいでこの星は滅ぶ事になるから。それを私は止められなくて。ごめんなさい。」

「どう言う事?全く意味がわからないよ。」

 十数年振りの再開だというのに、ミサキの穏やかな顔とは裏腹な不吉な言葉に、理解が追いつかないでいた。


「私がこの国を離れてから、連合側で帰る手段を探していたの。どうしても帰る事を諦められなくて。」

「だから居なくなった?」

「うん。エネルギー関連はユウ君達と一緒に学んだから、その知識を利用して向こうに取り入り、こちらでは調べられない連合側の情報を調べるためにね。」

「そうだったのか・・・。」

 だからドクは俺達に伝えなかったのかもな。


「いつ戻ってきてもいいように、ドクが私のIDを残していてくれたから今ここに居られるの。ううん、それは今はいいかな。」

「あの親父、中々粋な事するのな。」

「ドクの事、親父って呼ぶんだね。きっと知らない事いっぱいあったんだろうな。ってそうじゃなくて。もうすぐ連合側がこの国の中枢を破壊するために、局地地震を発生させる兵器を使う。」

「そんな事可能なのか?」


「地球でも昔、マントルとか地球内部の調査のために人工的な爆発の振動を利用して調査する計画があったらしいよ。その発展系の軍事転用だね。ミサイル攻撃は撃ち落とされてしまうから、上がダメなら下からって事みたい。」


 ミサキの話が続き、1ヶ月程前の地震がその兵器の最終実験だった事、その際の影響で地殻に深刻な損傷を確認して報告をしたが聞き入れては貰えなかった事、今日残り数時間で再度兵器が使用される事、その際に恐らくではあるがその事が原因で星が滅亡する事態になると聞かされた。前回より広範囲が対象だからだ。


 正直、現実味が無かった。だが、ミサキが嘘をついているともおもえなかった。


「それであんな巨大な陥没孔みたいなのが出来ていたのか。」

「んー。あれは違うんだけど・・・。まぁいいや、どの道もう結果は変わらないとおもうから。」

 陥没孔は違う?じゃあアレはなんなのだろうか?そんな事よりも滅びるってどういう事だろう。


「何故そんなこの世界が滅びるような計画が?」

「それは、私達転移者の排除が目的だよ。多少無茶苦茶しても私達を排除したい勢力が居たって事。勿論連合だけではないんだけれど、今の連合の上層部はその勢力が大半なの。過激派って人達だね。」

 馬鹿げている。少人数な排除の為に星を丸ごとと潰そうってか?


「馬鹿げているって顔してるね?私もそう思うよ。止めようとしたんだよ。星が崩壊するって。でも、そんな事あるはずがないって聞き入れて貰えなかった。実験の後検証した情報を基に提案したのにね。」


「なんてこった・・・。ってミサキは連合に居たんだよな?今までよく無事でいられたな。」

「無事・・・ではなかったかな。実験の成功が確認された後、粛正が秘密裏に始まって・・・。私は実験データの検証があったから最後に回されたみたいで、他の転移者が粛正される前に私だけ逃してくれた。仲良かった子だったから一緒に逃げようとしたんだけど・・・。」


「ミサキ・・・。」

「ううん、今は他に言わなきゃいけない事があるから。この計画はユウ君とドクを排除する為だから、私はそれを伝えるために来たの。」

 俺とドクの研究成果が気に入らなかったのか?ただ、紛争の原因を無くしたかっただけなのに。


「そうだったのか・・・。」

「ドクに連絡をしてからここに来たんだけど、ドクは?」

「親父はナツキと家にいるよ。」

「そう・・・。」

 ミサキは寂しそうに呟くと、顔を伏せってしまう。

「とりあえず、うちに行かないか?ナツキも居るしそこで続きを話そう?」


「うん。でも、ユウ君・・・それは少し残酷かな。私はまだ貴方が好きだから。」

「えっ・・・あっ。」

「ごめん。最後くらい2人きりで居たかったから、私は、ここに、来たんだよ。最後ぐらい、2人きりで、居させてよ。」

 ミサキは途中で泣き出してしまい、俺は言葉をかける事が出来なかった。


「やっと会えたのに、こんなのってないよ!私の方が!ナツキちゃんより!ユウ君のそばにいたのに!なんでナツキだったの!」

「ミサキ・・・。」

「この世界に来た時、これで私がユウ君のヒロインになれるかな?って思った。でも、ナツキを抱きしめてるのを見た時、わかっちゃった。あぁ、私じゃないんだって。」


「だから最後ぐらい、私のものになってよ!私だけ見てよ!

 今だけ、最後だけでいいから。」

 そういうと彼女は、俺を抱きしめた。


 ごめん、ミサキ。それでも俺はミサキの願いを聞いてあげられない。俺を抱きしめる彼女を、そっと離し、向き合う。


「ごめん、ミサキ。さっきの話が本当なら、俺はやっぱり皆と一緒にいたい。そして、そこにはミサキもいて欲しい。」

「私も?」

「うん。ミサキの思いを断った俺が言う事じゃないけれど、ナツキとドクと俺の子供と、そしてミサキと・・・皆で最後まで居たい。」

「ユウ君・・・。」

「勿論これは俺の我儘だ。だけど、ミサキが大事な友達だってのは変わらない。それはナツキにとってもそうだと思う。だから、一緒に行こう?」


 俺はあの時選択を間違えたのだろうか?

 あの時、態度には出していなかったけれど、ミサキもナツキと同じくらい不安だったはずなのに。

 好きな人が絶望する様を見ていられなくて、抱きしめてしまった。その選択がミサキを追い詰めた結果、こうなったんだ。だから、これは俺の我儘。3人で居た時間を少しでも取り戻したかった俺自身の我儘だ。


「やっぱり、残酷だよ・・・。」

「ごめん。」

「謝らないで。惨めになるから。」

「ごめん。」

「謝らないでってば・・・。あーあ、またフラれちゃった。」

「ミサキ・・・。」

「大丈夫だよ。これで良かったんだよ。じゃあ、ドクの所に行って話をしよう?」

「あぁ、そうだな。」

 ミサキは泣きながら俺に微笑みかけ、俺も笑い返した。

幕間開始時18歳ってのを付け忘れてました_:(´ཀ`」 ∠):


クレーター→陥没孔に修正 7/8

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