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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
ふたり

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幕間 ユウシャ ⑤

『そ、そんなのわかんないじゃない!アンタらがアタシらにウソついてるかもしれないじゃん!』

 ナツキは大きな声で信じられないと言うより、信じたくないといった感じで反論をする。


「ナツキ君の言う通りだ。私達が嘘をついていない証拠などないよ。キミ達3人を騙して取り入ろうとしている可能性もある。」

『だったら!』

 ナツキは食い下がるが、俺はこの人達が嘘をついてるとは思わない。メリットがないからだ。


「キツい言い方になるのは最初に断っておくよ。私達がキミ達を騙すメリットがない。」

 ほらね。

「ドク!」

 デイブさんが酷く怖い顔をしている。


「何故なら、キミ達は何も出来ない子供だからだ。私達の陣営に対して、騙して取り込んでまでキミ達を確保する必要がないんだよ。私のようにエネルギー工学を学んで国にとって有用というわけでもない。そんな人間を騙すメリットはないよ。」

「ドク!言い方があるでしょう!?」

「今は彼らに状況を理解させる必要があると判断したんだ。少尉は少し黙っていてくれないかな?」

 ドクに名前ではなく少尉と呼ばれ、デイブさんは納得はしていないが黙るしかなかったようだ。


『そんな・・・。』

 現実を突きつけられて、ナツキは大きく目を見開いて、恐怖のこもった視線でドクを見つめる。

 ドクは俺の方を向き、軽く首を縦に振った。あぁ、このドクって人は甘いんじゃなく、優しい人なんだな。


 俺は隣にいるナツキの腕を掴み、無理矢理抱き寄せた。

「ナツキ、大丈夫だ。」

『ユウ・・・?』

「俺が2人を守るから。」


「ユウ君・・・。」『ユウ、アンタ・・・。』

 この時の事を後日、俺は後悔する事になる。


『アンタ、何抱きついてんのよ!』

 押し飛ばされると覚悟していたのだが、弱々しく俺を離そうとするのみで、顔を真っ赤にしていた。

 予想と少し違う反応で、俺も少し困惑するが、このままは俺も恥ずかしいので、ナツキを離した。


『全く、信じられない事するわね・・・。』

 ナツキは隣でぶつぶつと文句を零すが、なんとかなったかな。

 俺とはナツキを挟んで座っていたミサキは、俯いてしまっている。


「うんうん、青春だねぇ。私は抱きつく事までは想定してなかったよ。」

「全くです。途中でドクの考えに気付きましたが、見ていてこちらが恥ずかしくなりますな。」


 オッさん共うるさいぞ。

「と、まぁ、さっきも言った通りなんだ。だからこれは強制ではなく提案なんだが。キミ達を私達の国で保護させてほしい。無論、他の国に行きたいなら仕方がないが、先程の話の通りキミ達の身が危ない可能性がある。」

 この人はこんな俺らにも、誠実であろうとしてくれているのか。


「なんで、俺らにそこまでしてくれるんですか?」

「若者を守るのは大人の役目なんだ。助けるのに理由なんているのかい?それに同じ地球の日本人なんだ、放ってなんておけるかよ!」


 うん、所々どっかで聞いた事ある台詞なんだが、思わずそんな言葉が出るくらい、本当に俺達を心配してくれているようだ。この人ゲーマーかな?


 それに、この話が本当じゃなく、転移者が欲しいから嘘をついていたとして、それは転移者が貴重だと言う事の証明になる。最悪の想定で、仮に申し出を断ると、拘束監禁、逃げれたとして監視付きで世捨て人としての隠遁生活か、日本以外の駒になる道以外ないだろう。


 それなら、この人を信じてみよう。いや、デイブさんを含めたこの人達を信じたい。嘘だったら、最悪ナツキとミサキだけでも逃す。何をしてでも。


「考える時間が必要だろうから、何日か後にまた意思を確認したいと思う。」

 考える時間をくれると言うが、答えは決まっている。


「その必要はありません。感情だけではなく、今までの話を纏めたら、ドクの元に行く事が最善だと思います。」


『ユウ、アンタ!また勝手に!』

「私はユウ君に賛成ですよ?先程、少し怖かったですけど、私達に知識が無いのを知っても、まだそうおっしゃってくださってますので。」

『反対なんてしてないわよ!相談くらいしなさいって事よ!』

 あっ、またやってしまった。もう少し慎重にやらなきゃダメだな。


「まぁまぁ、ナツキ君。よかった。3人とも私が責任を持って面倒見るよ。それは約束する。」

「はい。ありがとうございます。」

 これで当面は問題はないかな?


「それと保護するのに名目が必要だから、キミ達は私の協力者で、かつ私の弟子という事にでもしておこうか。でなければ、他の者が利用しようと企むだろうから。」

 建前って事か。

「ドク、それがいいでしょうね。その手の連中は軍部にも居るでしょうから。」

 やはり国というのは一枚岩ではないんだな。


「ドクの庇護下なら、政治屋や軍部も手は出せないでしょう。アナタが居なければ我が国は戦争よりも、エネルギー問題等で既に滅んでいてもおかしくなかったんだ。」

「よしてくれよ。この国の資源に誰も気付かなかっただけなんだ。それが更なる火種になった部分もある。私の業は深いよ。」

 よくわからないが、とりあえず俺達は何をしたらいいんだろうか?ミサキも疑問に思ったのか、恐る恐る尋ねた。


「あの、それで私達は具体的には何をしたらいいんですか?」


「あぁ、すまないミサキ君。キミ達は多少の不自由と嫌な思いもするだろうけど、勉強するもよし、遊ぶもよし、選択はキミ達自身でするといい。私の家は無駄に広くて、部屋も余っているから、そこを使うのがいいだろう。」


「後、薄々気付いたと思うのだが、地球に帰る方法は見つかって居ない。私にも見つけられなかったし、帰った事例は確認出来なかった。帰ったのなら、痕跡は残るはずだからね。だから、それを探すのもいいかもしれないな。」


 やはり、帰れないんだな。元々観測者達は俺達を無事に帰らせるつもりはなかったから、嘘をついた。

 ミサキもナツキも暗い顔をしている。


「ドクの元でこの世界の事を調べたり、勉強をするのは構いませんか?」

「それは構わないが、そこまでしてくれる必要は無いんだよ?」

「いえ、俺達のためです。ドクの元なら情報が集まりそうなので、いつかこの2人だけでも地球に帰せる事が出来るかもしれない。その為に学びたいんです。」

「そうか。わかったよ。」

 俺の言葉に、ドクは満足そうにうなずく。

『アタシもやるよ。』

「私も!」

 ナツキとミサキも俺と一緒に探すと言ってくれた。


 それから、20年の月日が流れた

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