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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
ふたり
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6 おんせん ④

 正直、景色とか見ている余裕は無くなっていた。

 そりゃそうだとも、両手に花の状態で余裕なんてあるはずもない。

 はっきり美少女だと断言出来る2人なのだから、無理もない。

 まさか、イオリはともかく、サオリまでここまでとは。いや、何がとは言わないが。


「姉上、兄上、平気なのですか?」

『どうしたのサオリちゃん?』

「どうかした?」

 恥ずかしいのかな?

 腕を離してからも、僕の隣にくっついていたサオリがモジモジしながら訪ねてきた。


「えっと、熱くないですか?」

「あぁ、お湯の事?僕は丁度いいんだけど。」

『私も少し熱いと思うので、長くは入れませんね。』

「そうなの?」


『はい。何時ものお風呂でもご主人様の後だと、お水足さないと入れないです。』

「えっ、それ本当?じゃあ、昔2人で入ってた時、かなり我慢してたの?」

『えっと・・・、はい・・・。』

 それは可哀想な事をしてしまっていた。温くしていたつもりだったんだけど、それでもまだ熱かったのか。

 今思えば、イオリはあまり長く湯船に浸かろうとしなかった事を思い出した。


「それは、気付かなくて本当にごめん。」

『いえ、そんな。ご主人様が私を気にして長くお風呂に入らなかったのも知ってますから。」


「姉上は兄上と一緒にお風呂に入っていたのですか?」

「あっ、うん。今のサオリよりもう少し小さい時ぐらいまでなんだけど。一年前ぐらいまで?かな?」

『はい。そのぐらい前までですね。』


 突然、サオリの表情が曇り、辛そうな表情になる。

「そう、なんですか。」

 イオリがはっとした表情をして、少し焦ったような様子で続けた。

『でも、小さいうちは1人で入るのは危ないですから仕方ないですよね。』

「うん、転んで怪我したりしたら大変だし。僕も10歳くらいから1人で入る事増えたような?」


「でも、あたしは兄上とお風呂入った事これが初めてです。」

「それは、女の子だからイオリに任せちゃってたんだよね。僕も手伝えばよかったな。」


『サオリちゃんも女の子ですから、私から一緒に入るって言ったんですよね。だから、ご主人様は悪くないですよ。』

 イオリがさっきより焦っているように思えるんだけど、どうしたんだ?

「姉上ばっかり・・・。」


「イオリがどうしたの?サオリ?」

「姉上は・・・。なんでもないです。熱いので先に出ます。」

 そう言うとサオリは1人立ち上がり、湯船を出る。

『待って!サオリちゃん!ご主人様は暫く出ないで下さい!』

 慌ててイオリがサオリを追いかけ、僕に暫く出るなとだけ告げていく。


『待って!待ちなさい!サオリ!』

「なんで姉上ばっかり!」

『ここだとご主人様に聞こえちゃう!とりあえず着替えて、こっち来て!』

「はい。」

 これは出ていかない方が良さそうだな。2人の様子は気になるんだけれど、今はイオリに任せるべきなのか?

 2人の声が遠のき、僕は2人がまだ本当の意味で仲直りしていたわけではないと悟る。


 さっきの会話からだと、ちょっとよくわからないが、お風呂に一緒に入った事は確かにないけど、それは怒るような事ではないとは思う。

 姉上ばっかり?イオリばかり?無論僕は、イオリだけを優遇しているわけでもなく、むしろ小さい頃一緒にアニメを見たり遊んだりして居た時間はイオリの家事の手伝いもあってか、サオリの方が長いとさえ思う。


 思い当たらない訳ではないんだけど、それは流石に自意識過剰気味というか。サオリの僕への印象はイオリと違い刷り込みで歪められてはいない。なので、僕とつがいになるため作られたイオリとは違う。

 でも、イオリと同様に扱ってきたし、サオリの前では恋人らしい振る舞いってのをした事もない。

 それはイオリが幼いってのもあるが、何より歪められている思いへの罪悪感があるからでもあるが。


 あーもう、何が間違っていて、何が正しいのかよくわからない。


 思案を重ねるも時間だけが過ぎ、そのうちに二人は温泉に戻ってきた。


「おかえり。」

「えっ。兄上?」『えっ、ご主人様?』

「えっ?何?」


『いえ、なんでまだ温泉に入ったままなんですか?休憩場所に居なかったので、まさかとは思いましたが。』

「兄上、あれから30分は経つのですが・・・。」

「あれ?そんなに経ってた?ならそろそろ上がるかな。」

 立ち上がろうとした瞬間目眩がして目の前が歪み、そのまま倒れこんでしまう。

「兄上?!」『ご主人様ー!』



 あ、なんか風がきもちいい。

 凄く身体が熱いが、山の涼しい気候も相まって流れてくる風が心地よく感じる。もう少し強い風吹かないかな?

 あれ?強くなった。きもちいいな。


 少しして、はっと気がつき、目を開ける。

 泣き出しそうなサオリの顔と、真上から覗きこむ同じく泣き出しそうなイオリの顔が目に入る。

「よかったぁ。兄上が起きたぁ。」

『ご主人様。大丈夫ですか?』

「あ、うん。まだクラクラするけど、何とか。」


 僕は寝かされているようだ。起き上がろうとするも、身体に力が入らない。

『まだ起きちゃダメですよ。』

「兄上、もう暫くじっとしていてください。」

 そうか、僕はのぼせて倒れたのか。


「あぁ、うん。そうさせてもらう。」

 そう言うと頭の下に枕のようなものがある事に気付く。

「なんだこれ?」

 手で触れると柔らかくて、すべすべしている。

「あ、あ、あ、あにうえ!?」

『ご主人様、触っちゃダメです!』

「えっ?」


 よく見ると、まさかのサオリの膝枕だった。

「あ、ごめん。」

『この場所、枕のようなものが無くて、私の膝では少し高かったので、サオリちゃんの膝を枕にさせて貰ったんですけど。』

 睨まれてますね。

「びっくりしたぁ。兄上どうですか?」

突然太ももを触られて真っ赤な顔をしたサオリが尋ねてきたが、太ももの感触の事なのだろうか?

「柔らかくて、ちょっと冷たくてきもちいい。」


頭が回ってなくて、トンチンカンな答えになったらしい。2人にクスクスと笑われてしまう。

「かわいいなぁ兄上は。ふにゃふにゃ言ったりしてたし。」

『寝言でふにゃふにゃ何か言ってるの、本当にかわいいですよね。』


「僕、寝言言うんだね。知らなかった。」

 まぁ、本人に知る由もないか。

 少し恥ずかしくなったが、今はもうちょっとこのままで。

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