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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
ふたり

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6 おんせん ②

 翌日、午前の間に畑の作業を終え、昼食を摂ってから温泉のある区画へ行く事にした。


 海と違って遊ぶ事が目的ではないため、食事の用意は無く、着替えやタオルのみなので荷物の量も少ない。

 海の時はおにぎりが重かったな。


「さて、用意も出来たし行こうか。」

「『はーい。』」

 以前と同様に隔壁を超え、火山性環境の区画を訪れる。

 実際には大気の成分や気圧の調整をしていて、マグマがあるわけではないらしい。


 硫化水素などの有害なガスも発生させているため、迂闊には歩き回れないのだが、極限環境微生物の保護目的もあるようだ。

 テラフォーミングが必要な場合に活用出来る可能性があるとかなんとか、僕には意味がよくわからなかった。


「海より危険な場所らしいから、離れないでね。」

「わかりました兄上。でも、思った以上に植物がいっぱい生えているんですね。」

「うん、火山って聞いてたから、僕も最初はもっと何もないのかと思ってたよ。」

 もっと岩肌が露出しているのかと思っていたのだが、草花がかなりの数自生していた事に以前驚いたものだ。


『綺麗な景色ですよね。』

「現在の気候設定が夏なのかな?全区画同じではないと聞いた事あるし。」

 もっとも南半球もあるから当然ではあるのだが、10分で気候の違う場所に行く事を繰り返すと体調がおかしくなりそうだとは感じた。


「景色を楽し見ながら温泉に浸かれるから、中々贅沢な事だよ。」

『以前来た時よりも私自身が成長したからか、これが贅沢な事だってわかります。』

 事実、温泉がある地域は観光地になりやすく、僕のいた国でも定番の旅行先として人気を博していた。大体は室内にあるけれど、作られたモノだとはいえこの山の景色を一望出来る温泉を独り占め出来るなど、かなりの贅沢だろう。


 隔壁から30分程は登らないといけない場所にあるが、僕達は程よい疲労感と景色を楽しみつつ軽い遠足気分で登りきる事が出来た。


「さぁ、到着したよ。」

 施設自体は、脱衣のための仕切りと荷物を置く場所、少し休憩出来るような空間しかなく、かなり簡素なものだ。


『着きましたー。前はもっと遠く感じましたが、案外すぐ着いちゃいましたね。』

「つかれたぁー。ちょっと休むー・・・。」


 サオリの足だと少し辛かったのか、荷物を下ろし近くにあった岩に腰をかけ、息を切らしている。僕とイオリは景色に夢中で、一気に歩いてきてしまったため、もう少し気を使うべきだったと反省した。


「ごめんね、休憩挟めばよかったね。」

『サオリちゃん、最初にはしゃいで走り回るからですよ。気持ちはわかりますけどね。』

「むー。」

「中に寝転がれる所があるから、そこで休んでから温泉に入ろうか。」

「あーるーけーなーいー!」


『我儘言わないの。』

「仕方ないな。」

 僕はおもむろにサオリに近寄ると、彼女を抱き抱える。お姫様抱っこってヤツだ。


「よいしょっと。」

『えっ。』「わぁっ。」

 うん、まだまだ軽いな。


「イオリ、サオリのかばん持ってきてくれる?」

『・・・』

「イオリ?」

『・・・はい。』

 辛そうな顔をしながら短く答えたイオリを見て、僕は失敗したと悟った。さすがの僕でもこれはわかるが、とりあえず中に入ってサオリを下ろそう。


 数十秒程の間ではあるが、重い沈黙の中移動する。先程まで和かに会話していたのに、僕達のペースで歩かせて疲れていたであろうサオリを気遣ってのものとはいえ、僕の行動てイオリを傷つけてしまった。


 サオリは僕に抱きつきながら、僕の胸に顔を埋めているため表情はわからないが、何も喋らない。

 イオリも、無言で後ろをついてくるが表情は酷く辛そうだ。


 中に入り簡易施設の休憩スペースに、サオリをおろすも、彼女は僕を離したくないと言わんばかりに抱きしめている腕の力を強めた。

「サオリ?動けないから離してほしいな。」

 サオリに呼びかけると、ゆっくり腕を離したため僕はぐっと背伸びをする。ちょっと腰にきた。


「うーっ。思ったよりサオリが重くて腰にきた。」

 つい、思った事が口をついて出てしまう。

「兄上!」『ご主人様!』

 その瞬間、二人にキッと睨まれ、叩かれてしまった。


「兄上のバカー!」『女の子になんて事言うんですか!』

 予想通りの反応で、少しホッとする。

「ごめんごめん。」

「兄上酷いよ!」『ちゃんとサオリちゃんに謝って下さい!』


 予想以上に怒ってらっしゃる。

「サオリ、ごめんね。」

 そう言いながら、サオリの頭を撫でる。

「仕方ないなぁ兄上は。」

『本当に!幾らなんでも酷いですよ。』


 少しの間、2人の抗議を受け止める。もう少し言い方あったよなと反省すべき部分はあったしね。でも先程までの空気はなんとかなった。

「兄上はたまに無神経な事しますよね!」

『うん、女の子は繊細なんですよ!』

「いや、僕が本当に悪かったから、ごめんね。」


 まだ2人でのお説教は終わりそうになかった。

 男の子も繊細なんですよ?

人間が入れない温泉も再現されていたりします。

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