6 おんせん ①
海に行った後、数日はイオリとサオリが話をしている様子はなかった。
僕が居る時は、ぎこちないながらも会話はあるんだが、寝室に入ると全く会話が聞こえてこない。元々会話自体は聞こえないんだが、何かを話しているというのは振動が響くというか、くぐもった声が響いていたから。
結局、何があったのかはわからずじまいで、個別に聞き出そうとしても2人とも口をつぐんでしまい、全く答えてくれない。
僕はどうにか以前のように仲良くしてほしくて、2人で話合わせる事にした。
「僕は畑へ行ってくるから、必ず仲直りする事。いいね?」
「・・・ 」『でも・・・』
「じゃないと、僕が悲しいんだよ。2人がこのままなんてイヤなんだ。お願いだから、ちゃんと話合ってくれないか?」
「わかりました兄上。」
『はい。』
イオリとサオリは、覚悟を決めたかのような表情でお互いを見ていた。
その日どんな会話があったのかは知らないし、聞くべきではないんだと思う。
二人の問題に僕が過剰に干渉するのは良くないと思ったから、敢えては聞かない事にしたんだ。
そんな夏の苦い経験は終わり、季節は流れて僕が見る限りでは以前のようにとはいかないが、2人が仲良く笑い合う事がまた増えた冬の頭。
夏までは僕の膝に乗ってアニメを見ていたサオリだったが、また少し大きくなって、今では隣に座って見るようになり、僕はちょっと寂しく感じていた。あの一件以来僕の部屋でたまに寝ていたのもなくなって、これが父親の気分なのかと思いもした。
イオリはより女性らしい丸みが出てきて、色気を感じるようになってきた。2人きりになると自制が効かなくなる可能性が高かったが、そんな事はなく畑の手伝いをサオリも本格的にするようになり、いつも3人一緒に行動する事が増えた。
「越冬キャベツって雪降らなくても作れるのかな?」
そんな無理であろう事を呟きながら、3人でアニメを見ていた。
「兄上?何をぶつぶつ言っているのですか?」
サオリは僕の独り言が気になったらしい。
「あ、いや、何でもないんだよ。冬のキャベツが美味しいって昔聞いた事があって、それを思い出してただけ。」
『んー?よくわからないですが、あまり無理はしないでくださいね。』
いや、揚げ物食べてるシーンだから、キャベツはあるでしょう?少しでも美味しい物食べさせてあげたいからなんだけど。
「まぁ、いいか。冬だから揚げ物とか食べたいなー。」
『冬じゃなくても言ってましたよね?確か夏だからーとか。』
「兄上はかぼちゃコロッケとかの揚げ物好きですよね。」
「いいじゃない。揚げ物。」
僕が少し不貞腐れると、二人でクスクス笑いながら両側から抱き付かれた。
「兄上かわいー!」『ご主人様が拗ねたー!』
なんなのだろうかこの扱いは。僕は釈然としないものを感じる。まぁ、両腕に幸せな感触を感じるので悪い気はしないけど。
「話は変わるけれど、寒くなってきたから温泉入りに行かない?」
『温泉いいですね。去年も行きましたよね。』
「兄上、温泉なんてあるんですか?」
「うん、そこまで立派な物では無いんだけど、あるよ。」
「あたしも行きたい!」
正直、去年僕もノアに聞いた時、なんでそんなものがあるのか疑問だった。
説明では火山の環境再現だとか聞いて、なるほどと思ったりもしたんだけど、今なら確実にわかる。
絶対趣味で作ってるよ。海の家見たし。冷静に考えれば、非火山性の温泉だってあるしね。
「じゃあ、3人で行こうか。」
「やった!」『はい!』
そうして、僕達は翌日温泉へ行く事にした。
凝固点降下を起こさせ続ける必要があり、自然の環境だと雪が無ければ温度維持が出来ず、育ってしまったり、冷えすぎて凍結してしまい腐ります。




