5 みずぎ ④
僕は着替え終わり更衣室を出るが、まだ2人は騒ぎながら着替えをしているようだ。というか、声がダダ漏れである。
『やっぱりこっちにしようかなー。』
「姉上、これはどうしたらいいの?」
『あっ、これは多分こうやって着るんじゃないかな?』
もう少しかかりそうなので、僕は建物の入り口にも設置してあるベンチに腰をかけ、待ちながらノアに質問をする事にした。
「ノア、この辺りに危険は無いの?」
〈この区画で直接危害を加えてくる生物は砂浜付近には居ません。ですので、水深の浅い箇所で有れば大きな危険はありません。しかし、指定区域外には毒を持つ生物も居ますのでご注意下さい。〉
端末から返事が聞こえ、先程の人形を見ると最初に見た時と同じ真っ白な姿になっていた。給仕の時のみ使われるようだ。
「目印はあるの?」
〈岩場付近や、海藻類がある付近になります。この建物から半径100メートルの砂浜には岩場は存在しないため、この付近は問題ありません。〉
あまり建物から離れなければ大丈夫って事かな。
『ご主人様お待たせしました。』
「兄上!お待たせしました!」
ノアに確認を終えた直後、後ろから声がかかる。
僕は思ったより早かったなと思いながら振り向くと、そこにはいつもと違う雰囲気の2人が居て、ドキドキしてしまった。
『似合い、ますか?』
少し透けた黒のパレオを纏い、フリルのあしらわれた白のセパレートタイプの水着を着たイオリは、恥ずかしそうに少し顔を背けながら、片腕で自分を抱きしめる格好で歩いてくる。
「兄上!見て見てー!」
赤を基調にした白の水玉模様で、胸元に黒いリボンが付いており、フリルもあしらわれているワンピースタイプの水着を着たサオリは、僕に駆け寄り腕に抱きついてきた。
「イオリもサオリもよく似合ってるよ。」
セパレートタイプは細身なイオリにはよく似合っていて、より魅力的に思え、サオリはサオリで可愛らしく感じる。2人とも褒められて嬉しそうだった。
その後、準備体操を終え、早く海に入りたくて僕自身がウズウズさるのを抑えられなくなっていた。
「じゃあ、行こうか!」
「おー!」『はい!』
足の裏に感じる砂の感触や、日差し、風に運ばれてくる塩の香り、それら全てが僕のワクワク感を掻き立てる。サオリは先に走りだして、イオリは僕の横を歩く。
「つめたーい!」
『サオリちゃん、あんまり走ると転んじゃいますよー。』
先に走って行ったサオリは、押したり引いたりする波に合わせ、波打ち際を入ったりきたりしている。あっ、転んだ。
どうやら、波に足を取られたようだがそれすらも楽しいようでケラケラと笑っている。
「わー。きもちいー!」
「サオリ、大丈夫?」
「うん、大丈夫ー!兄上おこしてー!」
「はいはい。」
波打ち際に座り込みながら、僕を呼ぶサオリ。仕方ないなと思いながらサオリを起こそうと近寄る。
すると、にまぁとサオリが笑い、海水を両手で掬い上げそのまま勢いをつけてこちらに海水をかけてきた。
「あっ、避けた!」
「甘い、甘いわ小童!」『えいっ!』
「つめたっ!?」
「今度こそ!それっ!」
「2人がかりだと?!冷たいっ。」
何処かで聞いた台詞を放つ僕、その後ろからイオリに水をかけられ、さらにサオリが追い討ちをかける。
「2人がかりとは卑怯な。かくなる上は・・・。」
「ん?」『?』
「これでも喰らうがいい!」
膝程の深さの場所へ移動し、2人に目掛け両手を使い全力で何度も何度も水を勢いよくぶちまける。
「きゃー!」『わっ!ちょっと!ご主人様ー!」
「ははは!」
僕は謎の高笑いで水を掛け続け、2人は顔を濡らさないように腕で防御をする。
「兄上!やったなー!」
『あっ。ズルい、私もー!』
お返しと言わんばかりに2人は僕に抱きついてきて、その勢いと波に足を取られ僕は転んでしまう。
「いてて・・・2人とも酷いよー。」
サオリは足に、イオリは腰に抱きついた格好で3人で倒れ、そのままの格好で何だかおかしくて3人で笑い合った。
「兄上、姉上、きもちいーね!」
「そうだね。」『うん!」
脇腹辺りに柔らかい感触があって幸せでした。何とは言わないが。
サオリの口調が丁寧になったり、くだけたりしているのはワザとなんですが、読みにくいなら統一します。
水着の描写難しい…




