5 みずぎ ②
ノアに聞いてみた所、水着も問題なく手に入るとの事
。
まぁ、普段僕達が着ている服も滅亡の前に方舟が収集したものだし、いざとなったら生地等の素材はあるそうだ。そこからは自分達で作れって事か。
用意には時間がかかるようだが、数時間後には届くと言われ僕達は先に今日の分の収穫を終え、夕食を摂りながら届くのを待った。
夕食後、暫くすると金属製の2メートル程の箱が届けられ、ロックを解除して中を確認すると沢山の水着が入っていた。
『結構種類があるんですね。どれにしようかな?』
「わー、いっぱいありますね姉上ー。」
2人は色々手にとって見ながらはしゃぐ。
「ゆっくり選ぶといいよ。」
こういう時は下手に口を挟まない方がいいという経験則の元、2人の様子を眺めながら自分の分の水着も探す事にした。
子供用と大人用の女性用水着は沢山あるのだが、男性用は数種類あるだけで選択肢が少ないため、僕は無難なハーフパンツのタイプを選ぶ。
ブーメランは嫌です。
自分の分を決めてから、2人を見ると何やら真剣なご様子。
「姉上なら、この水着似合いそう!」
『これは・・・大胆すぎるかな?』
真っ白でパレオが付いたセパレートタイプの物だ。僕はよく似合うと思うけど。
「姉上、あたしこれ似合うかな?」
『サオリちゃんならこっちも似合いそう!』
「それもかわいい!うーん、どっちにしよう。」
淡いピンクでフリルのついたワンピースタイプと、なにか色々付いてる子供用セパレートタイプの2着を比べている。
なんだアレ、魚の尾ビレ?すっごいカラフルだし。どうやって着るんだ?
何種類も代わるがわる自分の身体に当て、2人で確認し合い、あーでもない、こーでもないと楽しそうに話をしている。その様子を眺めていた僕はつい、試着してみたらいいのにと口走ってしまう。
これが失敗だった。
『なら、ご主人様に見てもらって決めましょうか。』
「姉上、そうしましょう。」
しまったと思うも、時すでに遅し。
「いや、僕は部屋に戻るから2人でゆっくり決めなよ。」
部屋に逃げよう。そう決断し立ち上がろうとするが、2人に逃走を阻まれ、かなり遅くまで水着ファッションショーに付き合わされる羽目になった。
翌朝目を覚ました僕は、昨日の軽率な発言を後悔する。
これがいいんじゃないかと提案するも、違うこれじゃない。
じゃあこっちは?と問うも、これも違う。という無限ループかと思える問答の末に、日付が変わる頃にようやく決まったのだ。
やはり、口なんて出すもんじゃない。結局のところ、僕の意見は関係なかったし。
朝食の準備をし、昨晩の後片付けをしようとしていると2人が居間に現れた。
おはようと挨拶を交わして、3人で朝食を摂る。
「とりあえず、昨日の後片付けをしてから出かけようか。」
『昨日遅くなっちゃいましたからね。早く片付けて出発しましょう!』
「早く海に行きたい!」
妙に気合いが入っている。僕は2人が選んだ水着を実のところ知らないのだ。
試着を繰り返した挙げ句、どれを選んだかは教えてはくれなかったし、僕も早く解放されたくて聞かなかった。
2人が後片付けをしている間に、僕はノアに海産資源用区画の場所について、どう言った区画なのかを確認してみた。
〈海産資源区画は、このヒトが暮らすための区画と同階層にあり、場所もそこまで離れてはおりません。様々な種類の生態系を確保する為複数の区画が用意されており、その内の一つが遊泳に適した環境になっております。〉
「何故そんなに区画を用意しているの?」
『気温や水温、水圧の違いを再現する為です。完全に海水で満たされていて、ヒトでは侵入出来ない区画も存在します。〉
「なるほど、深海にも生態系はあるからか。砂浜がある理由も浅瀬の再現の為かな。」
〈はい、その認識で間違いありません。一部の淡水域の魚介類に関してはこちらの区画にもおりますが、河川や湖に主に生息しているため、この地点からは離れております。〉
「この家は隔壁に近いから、この区画の中央辺りにあるって事?昨日15キロ離れているって言ってたし。」
〈区画のほぼ中央に存在し、直径1キロ程の湖です。生物が存在する為には水は欠かせませんし、人工的な補助は要しますが循環も再現する為にもある程度の大きさの湖は必要です。〉
話が難しくなりそうだから、この辺りでやめとくか。
「わかった、ありがとうノア。後で砂浜がある区画までの道案内もお願い。」
〈海産資源区画までの地図は端末に有りますので、そちらをご利用ください。詳しい場所は表示しておきます。〉
ノアとの会話を終え2人を見ると、また水着を眺めて悩み始めていた。
これはいつ迄経っても出発が出来そうにもないと思い、僕が片付ける事にする。
『待ってください!もう少し!』
イオリが抗議の声を上げるが、複数持っていけばいいよとだけ返して僕は片付け始める。
2人はなるほどといった感じで、数着を荷物にしまい、漸く手伝い始めた。
片付けも終わり、おにぎりではあるが昼食も用意して僕達は家を出る。
「行ってきます。」
誰もいないけれど声をかけ、僕達はまず隔壁に向かった。
箱は自ら歩いてやってくる




