5 みずぎ ①
春も終わり夏になって、僕は夏野菜の収穫を毎日行っていた。
茄子とか結構な量が出来続けるから去年より量を減らしてみたのだが、肥料のやり方や、土作りのやり方を変えたおかげか、作付面積を2割減らしたにも関わらず大差ない量が収穫出来てしまった。
保存効きにくいから、来年はもっと減らしてもいいのかもしれない。
正直僕1人では畑を作るのはつらいので、春から本格的にイオリにも手伝って貰っている。
穀物はもう暫く先かな。
「兄上!あたし、泳いでみたい!」
「へっ?泳ぐ?」
家でアニメを観ていたはずのサオリが畑にやってきて、突然そんな事を言い始めた。
サオリも小学校低学年くらいに成長し、緑色の髪は短く切りそろえられ、活発そうな印象を受ける。
本人はイオリのような長い髪は好きではないらしく、釣り目なのも相まってより活発そうな印象になっている。長い髪も似合うと思うんだけどな。
かなり成長したおかげで、1人留守番する事も増えた。畑は家からも見えるしね。
『いいですねー。私も前から泳いでみたいって思ってたんですよ。』
イオリはもう高校生ぐらいにまで成長していた。女の子っぽさが以前より増し、もう幼さはあまり感じられない。
最近はお風呂上がりとか艶っぽくて、毎日ドキドキしてしまう。僕の男の子の部分もかなり刺激され、本当に色々とマズい。何とか自制はしているがいつまで持つのか。
実のところ、春前の出来事からはあまり僕とイオリの関係は進展はしていないのだ。お互いを恋人だとは認識していると思うが、サオリに対してヤキモチを妬くのは変わらない。
「泳ぐ・・・ねぇ。そんな場所あったかな。」
少なくとも家があるこの近くでは見た事は無かった。区画の中を全て見たわけではないのだが、いずれ水田を作る時のための用水路のような川ぐらいしか見ていない。というか、正直広すぎて、何処に何があるのかすらよくわからない。
この区画は一辺が30キロ程もある四角形なのだそう。とは言っても、方舟自体はそこまで巨大ではなくせいぜい数キロらしい。
一部区画内の空間は何倍にも圧縮されている超空間との事だ。原理はわからないが、少なくとも隔壁を破壊した場合、方舟は勿論、どこまでの被害が出るか計測が出来ないとノアは言っていた。
そんなモノを維持するエネルギーは何処から来るんだろう?
家は現代の日本帝国同様電気が使えるし。宇宙って割に重力あるし。
その疑問は以前にノアに尋ねた。方舟の外装が電池を兼ねていて、かつ発電機でもあるとかなんとか、僕が理解出来たのはその程度だ。重力は回転と重力発生装置の合わせ技だとの事。
思考がすぐ逸れるな僕は。今考えても仕方ない事は考えない。
僕が考えている間、2人は期待に満ちた瞳で見つめてくる。
あっ、そうか。ノアに聞けばいいのか。
「ノア、泳げる場所ってある?」
〈遊泳が可能な場所はあります。この区画内にも存在しますが、現在地からおおよそ15キロ程離れておりまはし。もしくは、海産資源を管理している区画の砂浜になります。〉
えっ?海産資源?海って事?
「海は危ないんじゃないの?」
僕は内陸生まれで、海はアニメでしか見た事がない。危険な生物が沢山いるという話しか聞いた事もない為、不安になる。
〈無論、ヒトにとって危険な生物もおりますが、遊泳可能な箇所は存在しております。製作者の意向もありますが、一時的に滞在出来る施設も存在します。〉
まさか、作ったやつも海で遊びたかったって事かそれは。
えらく現代的な発想な気がする。まぁ、遊べるならいいか。
「兄上・・・?」
『ご主人様・・・。』
危険だという言葉が聞こえていたらしく、2人は不安そうな顔をしている。
「危なくない場所もあるようだから、明日にでも海行ってみようか。」
「『やったー!』」
明日行くと言ったのに、今からでも行きそうな勢いで2人は喜んだ。
でも、水着どうしよ?




