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箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
ふたり
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4 やきもち ⑤

 あの後、イオリは何も言わず部屋へと戻った。

 突然の事に驚きすぎて固まってしまい、居間を出ようとしている彼女に、僕は何も言えなかった。

 居間に1人残された僕は部屋に戻るも、色んな考えがまとまらないまま頭を駆け巡り、そのまま朝を迎えてしまう。


 イオリ達が起きて居間へ向かう気配を感じて、僕も居間へと向かう。

「おはよう2人とも。」

「あにうえ、おはようございます!」

『おはようございますご主人様。』

 いつも通りに見えるがイオリの目は少し腫れている。眠れなかったんだろうな。


「どうしたのあにうえ?おなかいたい?」

「あぁ大丈夫。朝ごはん作るから手伝ってくれるかな?」

 きっと難しい表情をしていたのだろう。サオリに心配されてしまった。これではいけないと思い、今はひとまず置いておいて、朝食を作る事にした。


 それから数日の間はイオリが1人で部屋に居る時間が少し増えた事以外は、表面上今までと変わらなかった。

 僕はイオリと話をしたいのだが、サオリが居る以上2人きりでと言うのも難しく、あの日のように2人になる時間も作れなかった。

 もしかすると、イオリが意図的にそうしたのかもしれないが。


 そこで、僕は思い切って行動に出る事にした。

 イオリが部屋に1人で居る時に、話をしにいく。無論、サオリが寝ていたり、アニメを見ている隙に。

 そして、その機会はその日のうちに訪れた。


 お昼を3人で摂り、サオリを膝にのせアニメを見始めたところで、イオリは部屋で休むと言って席を立つ。

 居間に残った僕とサオリはアニメを見ていると、サオリがうとうとし始めついには眠ってしまう。僕は起こさないよう慎重にサオリをソファーに寝かせると、イオリの元へそっと向かった。


 部屋の前に立ち、ノックをするも返事はない。そっと扉を開け中の様子を伺うと、どうやらイオリも寝ていたようだ。余り眠れていないのかもしれない。


 起こさないようにそっと中に入り、イオリに近づく。彼女が寝ている布団の横に座り、覗きこむ。何やら苦しそうな寝顔だ。

 起こすのは可哀想ではあるのだが、この間の件が眠れない原因であると思うので覚悟を決め、イオリを軽く揺すってみる。

『んっ・・・』

 女性らしい艶めかしくもある声を出し、彼女はゆっくりと目を開ける。その様子に僕はドキドキしてしまう。


『あれ?ご主人様?』

「うん、起こしてごめんね。」

『なんでここに・・・。』

 何故かと聞きながら慌てて起き上がるイオリを、僕は抱きしめる。

『えっ?』

 一瞬、何が起きたのかわからなかったのであろう。


 成長したとはいえ、まだ幼さもあり、身体だってこんなにも細い。そんなイオリを壊さないように優しく抱きしめながら、僕は思いを伝えた。

「この間の事は驚いたけど、嬉しかったよ。あの時は何も言葉が出なくて、余計にイオリを悩ませてしまったんだと思う。」

『・・・』

「ちゃんと、僕の気持ちを伝えなきゃって感じたから、こうしてるんだ。」

「大好きだよ、イオリ。」


 決して、昔の恋人に似ているからとかではない。まだ出会って2年にも満たないけれど、僕にとってかけがえのない存在になった女の子。

 これからも、ずっと一緒に歩んで行く女の子。

 ここ数日、僕が悩んで悩んで、出た結論はこの子を大切にしたいって気持ちだけだった。


 イオリの身体が僅かに震え、僕は彼女が痛いのかと思い腕を離し、向かい合うように座りなおす。

 彼女は無言で俯き、前髪のせいで表情はよく見えない。

 僕が大丈夫かと声をかけようとした時、ポタリと小さな雫が落ちる。

「イオリ?」

 名前を呼ぶが、返事はない。

 なぜだかはわからないが、彼女の頭を撫でようと思い手を伸ばそうとした瞬間、勢いよく抱きつかれ後ろに倒れてしまった。


「いてて・・・。」

 思わず痛みを訴える言葉が口をついて出てくるも、僕に馬乗りになる形で見下ろす彼女の表情を見て、僕はそれ以上言葉が出ない。

 顔をくしゃくしゃにして、涙を流しながら、真っ赤な顔をしながら僕を見つめていた。


 倒れた時に伸ばしたままの腕を動かし、イオリの頭を撫でる。ほんの少しの間嗚咽だけが室内に響き、その間僕は撫で続けていた。


『・・・怖かったんです。』

 やっと聞き取れるくらいの声でイオリは呟き始め、僕がサオリに取られてしまったように感じでいた事、数日前に僕に勢いでキスをしてしまって恥ずかしくて顔が見られなかった事、僕に拒絶されてしまうんじゃないかって事が頭の中をグルグルと駆け巡ってしまいよく眠れなかった事を矢継ぎ早に

伝えてきた。


『だから、大好きって言われて、うれしくて、あたま真っ白になっちゃって、泣いちゃって。でも、ご主人様に伝えたくて、私何したいんでしょう?』

 彼女の独白を聞きながら、僕はひたすら頭を優しく撫で続ける。

『私もご主人様が大好きです。ずっと一緒にいてください。私だけ見てください。』

 そういうと、彼女は目を瞑り、僕に口づけをした。今度は不意打ちではなく、ゆっくりとした動きで僕の首元に腕を伸ばし抱きしめながら、僕達は二度目のキスをしたんだ。


 僕も頭を撫でるのをやめ、イオリを抱きしめる。

 彼女が自分から離れるまで、そのままの体勢でいた。


『キスってちょっと息しづらいですね。』

 20秒程そうしていただろうか。イオリは僕の頭を抱きしめたまま唇を離し、照れ隠しにそんな事を言う。

「鼻で呼吸すればいいよ。」

 何てトンチンカンな返しなのだろう。もっと気の利いた事言えないのか僕は。


『じゃあもう一度・・・』

 そう言って、イオリが再び口づけをしようとした時

「あーにーうーえー!」

 サオリの泣き叫ぶ声と共に走り回る音が家の中に響き渡った。

「あにうえー!どこー!?」

 その瞬間、僕達は少し冷静になってとてつもなく恥ずかしくなり、離れてしまった。


 名残惜しい気持ちも湧くが、サオリも放っておけない。

「ここにいるよー!」

 サオリにそう呼びかけると、小さく、あっと言う声が聞こえた。僕は思わずイオリを見ると、凄く残念そうに僕を見ている。

「すぐ行かないとね。」

 そう伝えると、僕はイオリのおでこにキスをして部屋を出た。

 少し、というか、かなりキザな事をしてしまった。

 身悶えしそうになりながらサオリに呼びかけ、再び居間に戻るのであった。


 10分程時間が立ち、居間でアニメを見る事を再開しているど遅れてイオリがやってくる。


 ソファーに腰掛け、膝にサオリを乗せてアニメを見ていた僕達の姿をみてイオリは、自分も見ると告げると空いていた反対側の膝に乗り、一緒に見始めてしまった。


 これ、僕あんまり見えないんだけど・・・。

 でもまぁいいか、2人とも楽しそうだ。


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