表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
箱庭少女育成計画  作者: 眠る人
ふたり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/100

4 やきもち ③

 サオリが家に来て二カ月が経過した。

 その期間冬であったため、僕は農業に割く時間が減り、サオリと一緒に居る時間を確保しやすく、またイオリも積極的に手伝ってくれたので、大変という程でもなかった。

 歩けるようになるまで約半月、発話出来るようになったのも大体同じ頃、単語を理解し発音するようになったのは大体1か月目くらいだった。

 そこから先は更に早く、学習効率についてのイオリでの情報の蓄積を分析し、それを元に刷り込み教育が行われたためらしい。


 だが、活発だったイオリとは対照的にサオリは大人しく、聞きたい事がある時も飛びついてきたりもせず少し寂しくも感じる。


「あにうえ、このひとはなぜこのこにいじわるをするの?」

「それはね、この男の子が出来なくて悔しがる所を見たいからだよ。」

「なんでそんなことするの?」

「なんでかなぁ?いつもやり返されてるから、たまには勝ちたいのかな?」

「ふーん。」


 イオリよりもサオリの方が早い段階で人の感情の機微や、何故そういった行動をするのかといった質問が多いのだ。言葉の発達速度は差が無いように感じる。

 なので、伝える言葉はより慎重に選ばなければいけなかった。質問が増えるからね。

 そして、イオリが姉上だから、僕は兄上らしい。


 キャベツとかの名詞なんかは、何でそんな名前なの?と、までは聞かれない。イオリは聞いてきたけど、そういう名前なんだよって教えるとすぐ納得してくれる分楽かな。

 これが個人差ってやつか。


 個人差と言えば、好むアニメも違う。すこしふしぎなアニメが好きらしい。まぁ、確かに僕もあの道具の数々にはワクワクして見ていた時期はあるが。


「あにうえ、このこはなんでおこってるの?」

「うん?」

 考えてたら見てなかった。あぁ、これは好きな女の子が他の男の子と仲良くしてて、それを目撃して家に帰って泣きつくシーンだな。

「あぁそれはね、ヤキモチ妬いてるんだよ。」

「おもち?」

「おもちじゃないよ。ヤキモチ。」

『うー?』

 癖がイオリに似てて、内心微笑ましく感じながらどう答えるか考える。


「えーっと、そうだ。あの女の子が大事で、自分以外の誰かと一緒に居て欲しくないからだよ。」

「なんで?」

「独り占めしたいからだよ。」

 思った以上に説明って難しいよね。ちゃんと答えてあげたいのに。

 台所で会話を聞いていたらしいイオリが、僕の助けに入る。


『ねぇサオリちゃん。もし、私がご主人様を独り占めして、サオリちゃんと遊べなくしちゃったらどうする?・・・本当はそうしたい。』

「やーだー!」

 そんな事を聞かれて、泣きそうな顔で僕にしがみついてくるサオリ。うん?イオリが最後ボソボソ言ってたけど、サオリの返事で聞こえなかった。


『そんな事になったらイヤだよね?怒っちゃうよね?』

「うん。ダメー!」

『それがヤキモチだよ。わかった?』

「はい、あねうえ!」

 凄いなイオリは。僕は素直に感心した。

「ありがとうイオリ。助かるよ」


 イオリは少し浮かない顔をしながら、大丈夫ですと短く答え再び台所へ戻っていく。

 どうかしたのだろうか?僕がサオリとアニメを見ていたり、話をしていたりするど、表情が曇る事がある。でも、サオリとイオリが2人で遊んでいる時は凄く楽しそうに笑っている。


 あっ。そこまで考えて漸くと思い至った。

 そうか、最近はイオリとだけ何かをする時間が減っていて、僕が居る時は必ずサオリがついてくるのだ。

 勿論、それは仕方がないんだけど、恐らく内心は相当複雑なんだと思う。

 イオリは理解しているからこそ、感情的にもなれなくて、行き場の無い気持ちが表情に出てしまうのだろう。


 ただ、直接聞いたらきっと酷く傷付けてしまう。

 何かいい方法は無いものかな。

 そんな事を考えるも、答えは出ない。


『そろそろ晩ご飯出来ますから、食器出してもらえますか?』

「はい、あねうえ!」

「ありがとう、手伝うね。」

 どうすればいいのかの結論に中々たどり着けないまま、晩ご飯を食べ終え、1人湯船に浸かる。

 サオリはイオリと入る事が多い。一日中サオリの質問の相手をしている僕をイオリが気遣っての事のようだ。


 こんな事まで気を遣わせてしまい、申し訳ない気持ちが溢れてきた。

 これではいけないと思うも、どうするかと暫く考え込んでいると

『ご主人様?大丈夫ですか?』

 相当長くお風呂に入っていたらしい。イオリが様子を見にきた。

「あぁ、大丈夫だよ。今上がるね。」

 そうだ、イオリと話をしよう。話合いをするのではなく、アニメの話でも、思い出話でもいいから、話をしよう2人で。


「そうだ、イオリ。」

『はい、なんでしょう?』

 先程の僕の返事を聞き、居間に戻ろうとするイオリに声をかけ、サオリが寝たら居間に来て欲しいと伝えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ