0-1方舟 ③
僕がここに来てから何ヶ月か時間が経ち、その間に何故地球は滅びたのかや、何故僕が選ばれたのか等色々な質問をノアにしてみた。
ノアというのは僕が名付けたこの船の呼び名だ。
正しく、ノアの方舟のような目的であったからというのと、呼び名を付ける事で質問に答えて貰う事が目的だから。
ノアは、明確な質問じゃないと答えてはくれないのだ。人工知能だから。
地球が滅びた直接の原因は局地的な地震を起こす兵器らしい。
確かに、こんな事になる一か月程前に僕たちの街で大規模な地震があったんだ。僕の住んでいた街は日本の中心に近くて、大陸の内陸部に位置するため地震なんてほとんど起きた記録は無かったはずだ。
その話を聞いてから、僕はまた暫く抜け殻のようになってしまった。彼女はその地震の際に死んでしまった。僕の大切な友人達と、一緒に買い物に行っている時に。
何で僕は一緒に行ってなかったんだとか、彼女への思いと後悔とが溢れて、また何日も泣きつづけてしまった。
その話を聞いてからまた少し時間が経ってから、何故僕が選ばれたのかをノアに聞いてみた。
〈地震で人心が荒廃しているにも関わらず、他人に対して攻撃的にならなかった点。他にも年齢や、肉体的にも健康である点など様々な要素が理由です。〉
「そんなの僕以外にも居たでしょ?」
〈複数の候補は居ましたが、当機では貴方が選ばれました。〉
答えになってない。と、それより気になる事が出来た。
「当機では?その言い方だと、ノア以外にも方舟があるように聞こえるんだけれど?」
〈はい。同型、同目的の機体は複数存在しており、当機はその一番機に該当します。また、計画の実行方法についても幾つかのパターンが存在します。〉
なるほど、そうだったのか。確かに、一つだけの方法じゃ地球上の生き物を他の星に移住させるなんて事をやろうとしても不確実すぎるよね。
〈ただし、あらかじめ設定された航路が違う事以外の情報は当機にはありません。情報の共有機能も無いため現在何処にあるかも不明です。〉
「とうして共有してないの?」
〈当機にはわかりかねます。〉
理由はよくわからないけど、他の船の情報は無いって事か。まぁ、向かう方向が違うんじゃ、情報があったとしても共有する意味は薄いんだろうけれど。
「わかった、ありがとう。」
僕の疑問をノアにぶつけては回答を貰い、また新たな疑問が湧く。そんなやり取りを何度も繰り返しながら月日は流れた。
そうして、半年が経ったある日。
「ねぇ、ノア。僕はいつまでこうやって生活していたらいいの?」
〈残り20日で最初の個体の成長が安定します。それまでお待ち下さい。〉
残り3週間ぐらいこのままって事か。
この半年特にやる事はなく、毎日僕の持っていたタブレットやスマホに入っていたアニメや漫画を観る事しかしていなかった。
これらは僕の部屋にあったものだ。僕が寝ている時に、僕の部屋にあったもの毎、僕を連れてきたからなんだけれども。
おかげで少し太るかと思ったんだけど、栄養管理されていたり、間食もしていないからかほとんど体型は変わっていない。体力は落ちていると感じたから、最近は少し走ったりもしているし。
「その子に会う事は出来る?」
〈可能です。〉
どんな子なのだろうか?ふと、会ってみたいなと感じた。
「なら、何処に行けば会える?」
〈培養層の中に居るため、また言語の知識の刷り込みはまだされていないため、言葉での意思疎通は出来ませんがよろしいですか?〉
「うん、構わないよ。」
〈かしこまりました。〉
僕はこれからを一緒に過ごす事になるその子に会うために、行く事にした。
それが始まりだった。




