0-1 方舟 ②
〈では、現段階の詳しい説明と目的を説明されて頂きます。種の保存が目的ですが、長期間の冷凍保存では生命活動に深刻な影響があると予測されるため、生命活動はそのままでの確保が必要であるとの結論です。〉
誰の結論なのだろうか?まぁこの船を作った人のなんだろうけど・・・
まてよ?
「なら、クローニングはダメだったの?」
僕たちの国ではクローン兵士の噂とかもあったくらいだし。
〈クローン技術に関しては、生殖活動や耐性など問題がある個体が確認されている事。また種の多様性についても疑問が残るため候補にはなりませんでした。〉
そうなの?まぁよく知りもしない事をつっこんでも仕方ないか。
〈当機では幾つかの区画に分け、それぞれの区画にて他種多様な生命体を繁殖出来るように設計されています。当該惑星での知的生命体はヒトのみで、ヒトの手により改良された種の管理育成も任せる必要があります。牧畜の技術や農耕がそれに当ります。これは入植した際の技術継承の意味があります。〉
あぁ、最終的な目標のために農業や牧畜をやれって事か。
「でも、僕には農業の経験や牧畜の経験は無いんだけど?」
〈それについては当機がサポートしますし、技術についての資料があるため、そちらを参照ください。〉
ぶっつけ本番でやれと。それが出来たら農家は誰も困らないんじゃないかな。
「大体わかったよ。でも、ここには僕しか居ないように見えるんだけれど?」
まさか1人なんて事はないよね。種の保存が目的なら。
〈当機にヒトは貴方1人です。〉
「なんだって!?」
そんなバカな話があるか!
〈これには当機を建造した人物の意向もあるのですが、ヒトは寿命に対しての妊娠出産の適齢期が短い事、性成熟が遅い事が問題であるため、他の生命体とは違う方法をとります。〉
「違う方法?」
〈はい、人工的に成長を促進させ肉体年齢を適齢期まで進め、その肉体年齢のまま固定し子孫を残させる方法です。〉
ちょっとよくわからない。
「そんな事が可能なの?」
〈はい.可能です。〉
可能なんだ・・・
〈ですが、知的生命体であるヒトの場合個体差が他の生物に比べて激しいため、幼生の段階から刷り込みを行ったとしても子孫を残せるかは不明瞭なため、サブプランとして数体を用意します。〉
〈また、他の生物に比べ言語や知識の習得もあるため、貴方には個体の教育も行って頂きます。〉
なんか雲行きが怪しくなったような。
「僕に育児をしろと?」
〈はい。尚且つ、データ収集のためその個体と子を為して頂きます。〉
「はぁ?子育てした上で、その子と子供を作れだって?バカバカしいにも程がある。」
何を言ってるんだコイツは!コイツを作ったヤツは、なんでそんな事をしようとしたんだよ。
〈ですが既に当該惑星は無く、計画も開始されている為他の手段はありません。〉
「もう戻れないって事か。暫く考える時間は貰えないんだろうか。」
どのみち、帰れたとしても僕の大事だったモノは何もないんだが。
〈プランの開始までには200日ほど時間がかかるため、その間時間はあります。〉
そういう時間じゃなくて、気持ちの整理とかの話なんだけれど、多分コイツに言っても無駄なんだろう。
〈プラン開始までお待ち頂く間、居住スペースがありますのでそちらをお使いください。〉
「わかった、ありがとう。」
今はこのまま流れに身を任せるしかないと思い、僕は居住スペースへ向かう事にした。
作ったヤツは光源氏になりつつハーレム野郎を目指していました。
僕は触れて無いですが、方舟は巨大かつ、中の空間は外見より広いです。




