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11-3話

「おい。おかしいだろ!? これは一体どうなっているんだよ??」


 ローランは冷や汗を流しながら、理解が追いついていかずに混乱していた。眼の前ではルカとレオンが圧倒的な実力差を見せつけながら、近づいてくる。


 相手は素手でこちらの兵隊は全員武器を持っている。普通に考えたならとっくに勝負はついている筈だ。

 しかし結果は部下達が一撃で倒されていくと言う狂った情景だけで、常識を遥かに超え現実離れし過ぎている。

 ルカとレオンは既に半数以上の構成員を倒しており、ローランとの距離も数メートルまで接近していた。


「おらぁぁぁっ! 死にやがれぇぇ!!」


 レオンは怒りに任せて、自分の近くにいる構成員を片っ端にふっ飛ばしていく。


「あの野郎の腕…… 光ってやがる。まさか。短髪の男はスキル能力者か!? 糞がぁぁぁ。この街にマルコ以外にもモグリの能力者がいやがるとは想定外だ!!」


 レオンの光る腕に気づいたローランは素早く現状を把握する。


「ヤバイぞ。スキル能力者相手では俺達の方が長くは持たない。こうなったら仕方ないあれを出すしかない!」


 ローランはジャケットの内ポケットに手を突っ込むと、秘密兵器を取り出した。


「お前達もこれで終わりだぁぁ。これが何かわかっているのか?」


 そう叫ぶとルカとレオンの注意を自分に向けさせた。


「なんだ。それは? まっまさか!! 銃!?」


 ローランの手には拳銃と呼ばれる最新兵器が握られていた。銃の存在を知っていたルカの額に初めて冷や汗が浮かぶ。


 銃とは鉄鉱石とレア鉱石に分類される発破石を組み合わせて帝国が開発した最新兵器である。

 

 発破石の爆発力を利用し、専用の筒状の拳銃から加工した鉄鉱石製の弾丸を発射させるシンプルな構造だが、その威力と速度は凄まじく、打ち出された弾丸は人の目では追えない程に速い。身体に被弾すれば、安物の防具程度なら簡単に身体を貫いてしまう程の威力を持っている。

 

 戦争で一躍名を馳せ、現時点で最強と呼ばれているのが銃火器であった。

 

 超人的な強さをもつスキル能力者が相手だとしても、銃を持っているだけで五分に渡り合える。もちろん高価な品なので普通のルートでは絶対に手に入らない代物だ。


 ローランは金に物を言わせ、役人に大量の賄賂を渡し裏ルートから銃を手に入れていた。最強の武器を手にしたローランの顔は勝ち誇り口角を吊り上げる。


「ほぉ、これが銃だって知っているのか? 一応、馬鹿では無いようだな。ならこれでお前達が終わりだって事もわかっただろ? 殺されたくなかったら、早く跪けよぉぉぉ!!」


「あん、なんだって!? 銃だとぉ? そんな物で俺達がビビるって思っているのかよ?」


 レオンは血管が浮かび上がった表情で、お構いなしに一歩踏み出した。


「レオン、俺がいく。コイツだけは俺の手で殺らなきゃ、気が済まねぇんだ」


 ルカはレオンを静止し、レオンの前に躍り出てゆっくりと近づいていく。

 

 その歩みに恐怖は一切ない。

 

 ルカのスキル能力は【状態の維持】と言う攻防に優れたスキルである。

 しかし今回は銃というこの世界最強の武器が相手だ。

 もしかすれば一定値以上のダメージを受けた場合、スキルの限界値を越え鉄弾が身体を貫いているかもしれない。

 けれど今のルカには関係なかった。

 今はただ目の前の敵をぶちのめす。その想いがルカの体を突き動かしていた。


「おい。銃が怖くないのか? 容赦しねぇぞ。この小僧共がぁぁ」


「撃つなら撃てよ。だがな鉄の玉が俺の体を貫こうとも俺はお前を許さない!!」


「小僧の分際で俺に指図をするなぁぁぁ」


 ローランは5発の弾数、全てをルカに向けて撃つ。

 大きな爆発音を響かせて、鉄弾が真っ直ぐにルカを襲う。

 

 バン! バンバンバンッ!!


 大きな音が響いた後、ルカの胸から本来なら身体を貫いている筈の鉄弾が、ポトリ、ポトリと落ちていた。


「ひぃぃぃ。何だコイツは!? 嘘だろ!? 銃が効かないなんてぇぇ。うわぁぁ。化物だぁぁぁ」


 ローランは驚き腰を抜かして床に尻もちをつく。

 ルカはそのままローランの目の前まで移動し、思いっきり顎を蹴りぬいた。

 ローランの口から数本の歯が飛び出し、その後大量の血が口から溢れ出していた。


「ぐぅぅぅ。どうなっているんだ? これは夢だ。 そうに違いない。こっちは三十人以上居たんだぞ。そっそれがなんで、たった二人の餓鬼にぃぃぃ」


「なに馬鹿な事を言っているんだ? 簡単な事だろ。お前達が弱すぎるんだよ。覚悟しろよお前だけは絶対にゆるさねぇぇからな!!」


「まっ待て!! いや待ってくれ。どうだ? ファミリーに入らないか? お前達なら今すぐにナンバースリーにしてやれるぞ。それに金だって幾らでもやる。そうなればこの街はお前の物だ。悪い話じゃないだろ。なっな!! 俺達三人なら、この街、いや大陸全てのファミリアをぶっ潰せる」


 ローランは必死ににじり寄るルカを説得しようとしていた。


「おう。こっちは終わったぜ。後はコイツだけだな」


 ルカとローランがやり合っている間にレオンが構成員を全員倒し、ルカの元へと駆け寄る。


「お前分かってないよな。女にまで手を出す様な最低の野郎を許す訳がねぇだろ?」


 ルカはローランの胸ぐらを掴むと片手で身体を持ち上げ、残った腕で何度も殴り始めた。


「身体が動かない?? たすっ 助けて!! すっすみません。 もぅ。 ぐふ。 だからやめっ ゴホっ……」


 ルカは【不変】のスキルをローランの服に掛けていた。

 スキルの力によってローランの服は状態を維持され、ローランは身動き一つ取れなくなっている。

 その後もむき出しの顔面を絶え間なく殴り続けられ、ローランはついに喋れなくなり、手足の力は無くなっていた。


「まて、まてまて。ルカここまでだ。これ以上やれば、コイツが死ぬ。前にも言ったけどよ。こんな糞雑魚を殺してもお前には何の得にもならねぇって!」


「じゃあどうすればいいんだよ? 俺のせいでスノウが危険な目に在ったんだぞ。それに今コイツを逃せば、今後また仲間たちが襲われるかもしれねーだろ!!」


「そう思う気持ちは解るけどよ。このクソ野郎の顔を見てみろよ。もう心が折られちまって再起不能になってるじゃねーか。だからもう大丈夫だ」


「ちくしょーがぁぁぁ」


 ルカは咆哮をあげた後、動かなくなったローランから手を離す。力なく床に落ちたローランは、ピクピクと身体を痙攣させているが辛うじて生きていた。


 ゴミを見るようにローランを見ていたルカが、一つの考えにたどり着く。


「そうか…… こんな腐った野郎がいるファミリーがあるから駄目なんだ。俺は今からルスカファミリーを潰す事に決めたぜ!!」


「おいルカ!? 潰すって言っても、もう殆ど潰した様なものだろ?」


「いや、まだトップが残っている。部下の不始末のツケをしっかりと払って貰うしかないだろ?」


「へへっ。なるほど。そういう事か! それなら俺も付き合うぜ。もうひと暴れするとしようか!!」


 ルカの意思を汲み取ったレオンは指を鳴らして気合を入れ直す。その後レオンは瀕死のローランを引きずりながら、激戦を繰り広げた倉庫からから出ていく。


 外で待っていたスノウは無傷のルカ達を見て、安堵の表情を浮かべていた。


「ルカ兄ぃ。この人どうして連れてきたの?」


「あぁ、コイツがやった責任を親に取ってもらおうと思ってな!」


 ルカとレオンはスノウを家に送り届けた後、ローランを連れてルスカファミリーの本拠地へと歩いていく。

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