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1-3話

 ノエルが出産した翌日、出産話を聞いて大きく舌打ちする女性がいた。

 その女性はアルバートの妾であるイザベラ・コンスタント。イザベラはコンスタント男爵家の三女であったが、父親のコンスタント男爵の指示でアルバート伯爵の妾となっていた。

 

 貴族特有の外見の美しさや優雅な立ち振舞からは想像もできないが、小さい頃から物欲と執着心が高く、また野心家でもあった。子供が出来なかったノエルとは違って、アルバートの妾となった翌年には男子を授かり、子供は今年で二歳を迎える。

 

 そんなイザベラはアルバート家に入ってから、ずっと妾と言う自身の立場に不満を持っていた。


 今日までは正妻であるノエルに子供が産まれなかったので、妾と言う屈辱にも耐える事が出来ていた。

 しかしノエルに待望の男子が産まれた事で、イザベラは恐怖と焦りを覚え始める。

 子供が産めない正妻を見下して感じていた絶対的優越感も、今日で無くなってしまう。心のゆとりが無くなる位ならまだいいのだが、もっと恐ろしい事が予想される。

 それは幾ら先に男子を産んでいると言っても、アルバート伯爵は妾との子供より確実に正妻の子に家督を継がせてしまう事だ。

 更にノエルが子供を産めるとわかった今、自分は用済みとみなされ、今後はずっと相手にされない可能性もある。


 小さい頃より華やかな世界で暮らし、誰からも注目され続けてきた。

 もしかすると正妻のノエルに邪魔者と思われ、子供と二人だけで僻地に送られひっそりと暮らす事になるかもしれない。

 そんな恐怖がイザベラを襲う。


「あぁぁ、まずいわ、これは何とかしないと…… そうよ。あの女と子が邪魔なのよ。あの二人がいなければ全てが丸く収まるわ。伯爵様の全ては私の物よ。絶対に誰にも渡さない!!!」


 苛立ちで震える指先で壁を擦りながら、たった一つの許されない答えにたどりつき、安堵する。

 そして口角を吊り上げ、乾いた笑みを浮かべた。

 その後イザベラは自室に急ぎ戻り、実家へと手紙を書き始めた。

 

「ふふふ。これで良いわ。あれが届けば全てが終わりよ。ノエルさん、あなたの好きにはさせ無いわ…… 今の間に束の間の幸せを堪能していなさい」


 手紙をメイドに託して一息ついた後、イザベラは腹の底から笑いがこみ上げてくる。その低くて長い狂気を帯びたイザベラの笑い声は、部屋の中を響き続けた。

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