1-2話
赤ん坊が生まれたとの知らせが届いた瞬間。
屋敷で働く全ての者達から祝福され、屋敷内はうねりの様な歓声に包まれていく。そんな喧騒な中でも主役の赤ん坊は、母親に抱かれて心地よさそうにあくびをしている。
間を開けずに勢い良くドアが開かれると、息切れ状態の男性が飛び込んできた。その姿を目にした赤ん坊の母親が笑顔をみせる。
「あなた見てください。あなたに似た聡明な顔つきの元気な男の子です」
「なにっ! 男だと!? ノエルよくやった。これで当家は安泰だ。我が子が男だった時の名前はすでに考えている。名前はルカ…… 今日からお前はアルバート伯爵家の次期当主ルカ・アルバートだ」
赤ん坊を大事そうに抱き上げている彼の名はアルバート。
このロイズ帝国の伯爵の地位を持つ大貴族だ。アルバートの領土は王家が住む首都の隣の地域で、代々帝国の側近としての厚い信頼を得ている。
アルバートの妻の名はノエル。
地方平民の出身である。優れたスキル能力者としての才能をもっており、スキル能力が発現し、ずっと王宮で働いていた。また、すれ違う男達が二度見してしまう程の美貌を兼ね備えた心優しい女性でもある。
そんなノエルにアルバートは一目惚れをし、ノエルも聡明なアルバートに好意を抱く。自然と二人は強く惹かれ合い。王の許しを得て結婚へと至る。
しかし二人の間には長い間子宝には恵まれず、ノエルはその事でずっと悩んでいた。そんなノエルにとって五年越しに授かったルカは目に入れても痛くないと思える程の大切な宝物となった。
しかし伯爵家の嫡子として本来なら大切に育てられるべき、ルカの幸せは長くは続かなかった。




