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5-1話 真実

 ルカがアルバート伯爵家の近くにたどり着いたのは、家を飛び出して3時間後だった。

 首都の隣の地区がアルバートの統括地だ。

 ノエルから聞かされた通り、緑豊かな美しく静かな場所で、遠くからでも木々の隙間から何十メートルと続く真っ白な外壁が見えていた。

 いくら土地勘の無いルカであったとしても、これほど大きな建物を見れば、一目で伯爵家だと検討がつく。


 三時間走り続けてきたルカの体は悲鳴をあげていたが、ノエルの為に歯を食いしばり限界に近い身体にムチを打ち屋敷を目指す。

 近づくにつれて大きな門が見え、門の前には二名の門番が立っており、周囲を警戒していた。


「なんだ? この汚い子供は?」


「ここは遊び場じゃないんだ。命が惜しかったら別の場所にいけ」


「ここはアルバート伯爵の家だろ? 俺は伯爵に用があってきたんだ。会わせてくれよ」


 ルカの言葉を聞き、門番達はおかしな子供が来たなと両手を持ち上げて、ジェスチャーをしている。


「だから、アルバート伯爵に会いに来たんだって、母さんが病気になって薬がいるんだ!! 早く会わせてくれ」


「坊主さっきから言っているだろ。お前みたいに素性の知れない者をアルバート様を会わせる訳がないだろう。それにアルバート様は朝からずっと出ていて、いつ帰って来るかも分からん。それがわかったなら、さっさと帰るんだ。余りしつこく場合は怪我する事になるぞ」


 恐喝に近い苛立ちを含んだ声を吐き出し、手に持つ槍を構え直して威嚇する。

 門番の態度を見たルカはこれは駄目だと考え直し、一度離れる事を決めた。


 その場で帰るふりをして、正門から伸びる道を逆走し、門番の姿が見えない所で道沿いの茂みに身体を忍ばせ、ジッと動かず待ち続けた。


(此処で待っていれば。いつか伯爵が戻ってくる筈だ。門番にいくら説明しても通用しないなら本人に直接言うだけだ)


 ノエルを救う為になりふりなど構っていられない。どんな方法であろうが、必ず薬を手に入れるまで戻らないと自分で自分を鼓舞する。

 

 待ち始めて、一時間ほど待った位からルカは焦りを覚え始めた。自分の帰りが遅ければ遅いほど、ノエルの症状は酷くなっていく。


(あぁー糞っ。早く帰って来いよ。もう少しで日が落ちてしまう。もしかして今日は戻って来ないのか? もしそうなったら母さんが!)


 素直に帰った方が良かったかもしれないと後悔をし始めた時、豪華な装飾が施されている一台の馬車が遠くから近づいてきた。


「あれは!? 門に刻まれていた絵と同じ絵が書いてある馬車だ。あの馬車に間違いない!」


ルカは馬車道の中央に立つと両手を大の字に広げて、大声をあげる。


「停まってくれ!! 話があるんだーーー!!」


 数十メートル手前で御者はルカの存在に気づき、小窓を開き自分の主に声をかけた。


「イザベラ様。どうやら前方で誰かが道を塞いでいる様です。見た目で言えば、子供でしょうか? ボロボロの服を着ているので、孤児かそれに近い者だと思われます」


「ふん。孤児ですって!? なら轢き殺しても構いません。さっさと馬車を進めなさい。死にたくなかったら向こうが逃げ出すでしょう」


「はっ」


 ルカの希望とは違って、馬車にはアルバート伯爵は乗っておらず、妻のイザベラと子供達だけである。

 

 六人載りの馬車にはイザベラと長男のハインツ、次男のバルトロの三人が並んで座り。その向かいには護衛役の剣士ジラルドと長女のカルロッタが座る。

 今日はいくつかの商店を周り、季節替わりの洋服を新調していた。


「ジラルド。もし盗賊の類いの場合は頼みましたよ」


「勿論です。アルバート伯爵家に仇なす者は全てこの剣の餌食となる事でしょう」


 剣の柄をそっと触り、ジラルドは余裕の笑みを浮かべる。


「糞ガキ!! 轢き殺されたくなかったらさっさと端に寄れ!!」


 声が届く距離まで近づくと、行者が声を荒げて注意を促した。


「待ってくれ。俺はアルバート伯爵様に!!」


「ゴミ溜めの出身者風情が、アルバート様に何の用事があるって言うんだ。どうせ物乞いだろ!! 死にたいならそのまま突っ立っておけ!!」


「くそぉぉっ!?」


 スピードが全く緩まないまま、馬車は突っ込んできた。ルカもギリギリまで粘って見たが、身の危険を感じて転がりながら馬車を避ける。


 固い土の地面を回転した後ルカが顔をあげると、馬車の側面にある窓から、鋭い視線を感じた。

 それは背筋が凍りつく様な冷たい視線だ。


 その後、二十メートルほど馬車が前進した後、ゆっくりとその動きを止めた。

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