亜蘭と由梨亜のバレンタイン
亜蘭と由梨亜の日常を描いたスピンオフ(番外編)
今回はバレンタインエピソードです!
【亜蘭と由梨亜のバレンタインデー】
「由梨亜ちゃん、由梨亜ちゃん。」
亜蘭は笑顔で目の前に座る由梨亜に話しかけた。
由梨亜はパソコンを開き、
レポートを書きながら冷たく返答した。
「なに?チョコならあげないよ。」
今日はバレンタイン。
春休みであるにも関わらず
由梨亜がなぜ図書館にいるかというと
期限が明日までの課題を紙で提出するために
大学へ来たからだ。
しかし、提出する直前レポートを見直すと
数カ所のミスが見つかり、急いで図書館へ来たのだ。
数分後、たまたま図書館を通りかかった亜蘭が
由梨亜の目の前に座り、今の状況が続いている。
「由梨亜ちゃん、別に僕はそんなものを
期待してないから安心してよ。
というよりさ、さっきもこのくだりあったよね?」
「えー?そうだっけ?」
由梨亜はパソコンの画面から目を離すことなく亜蘭に言った。
しばらく沈黙が続いた。
そしてふと由梨亜は、ゆっくりとキーボードから指を離し、目の前に座る亜蘭に話しかけた。
「ねぇなんで亜蘭くんは春休みだといのに
ここにいるの?もしかして暇人なの?」
由梨亜が尋ねた。
すると亜蘭は少し怒った様子で答えた。
「違うよ。まったく失礼だなぁ。」
「じゃあ、なんで大学にいるの?」
由梨亜は、不思議そうに尋ねた。
すると亜蘭はめんどくさそうに答えた。
「ちょっと出さなきゃいけない書類があって、
学事部に提出してきたんだよ。」
「へぇー、そうなんだ。」
由梨亜は、またパソコンの画面に目を戻した。
すると亜蘭は不満そうに文句を言った。
「聞いておいて反応が冷たくないかい?」
由梨亜はレポートに集中していたため無視した。
亜蘭は、いじけたように黙って頭を伏せた。
数分後、由梨亜がゆっくりと伸びをしながら保存ボタンを押した。そして、静かになった亜蘭に向かって言った。
「私が冷たいって言ってたけどさ、
それは亜蘭くんがバレンタインで
勝手に気持ちが盛り上がってて、そう感じるんだよ。きっと。」
すると、亜蘭は顔を上げて強く言い返した。
「もう、しつこいなぁ。さっきも言ったけどそんな「お菓子メーカーの策略デー」ごときに舞い上がるような男じゃないよ。」
「でも、さっき一番最初にチョコは無いって
私が言った時、相当悲しそうな顔してなかっ……」
「あぁ、もううるさいなぁ。
そもそも由梨亜ちゃんは誰かに
あげたことなんてあるの?」
亜蘭は何の気なしに言葉を言い放った。
すると、亜蘭の予想外の答えが返ってきた。
「うん、あるよ。好きだった男の子にね。」
由梨亜はサラッと言い放ち、
印刷物を取りにコピー機の方へ歩いて行った。
亜蘭は、驚いた顔をしながら由梨亜の後ろ姿を目で追った。
由梨亜は満足そうに印刷物を数えながら
席に戻ってきた。
由梨亜は目の前に座る亜蘭の疑いの眼差しに気が付き言った。
「なに?」
亜蘭は、別にと小さな声で呟きながらそっぽを向いた。
由梨亜はパソコンをログオフして荷物をまとめ始めた。
「いやー、やっと終わった!頭使ったから甘いもの食べたいわ。」
由梨亜の何気ない一言に亜蘭は、咄嗟に言った。
「だったら、これからカフェに行かない?最近、いいところ見つけたんだよね!」
「いや、別に亜蘭くん誘ったわけじゃないんだけど………。」
一瞬、二人の間に冷たい沈黙が流れた。
そして、亜蘭の目はみるみると冷ややかな目に変わっていった。
「……なんで、由梨亜ちゃんはそういうこと言うの?じゃあ、いいよ。バイバイ。」
そのまま亜蘭は明らかにご立腹な様子で席を立ち、
図書館を出ようとした。
由梨亜はそんな亜蘭の様子に焦り、すぐに謝った。
「ごめんごめん。冗談だよ。せっかく会えたんだから一緒に行こうかな、ね?」
「本当にそう思ってるの?別に無理しなくていいんだけど。」
それでも亜蘭の気は収まらなかったようで怒っていた。
由梨亜は、内心、焦って言葉を続けた。
「わ、私は亜蘭くんと食べに行きたいと思ってるよ!」
咄嗟に声を出したので少し大きな声になってしまった。
言葉を言い放った後に亜蘭の満足そうな顔を見て 由梨亜はとても後悔した。
急に恥ずかしくなり、それを誤魔化すために言葉を続けた。
「……な、なんてね。あ、いや、えっと。とりあえずレポート出してくるね。」
由梨亜は逃げるように図書館を出た。
亜蘭はしばらく由梨亜が出て行った方を見つめていた。そして、改めて満足そうな微笑みながら小さく呟いた。
「本当に素直じゃないんだから。難しいお方だこと……。」
二人はバスに乗り込んだ。
由梨亜は、少しだけさっきのことを気にしている様子だった。
亜蘭は、何も無かったかのように普通に話しかけた。
「さっき、僕が言っていたお店でいい?」
すると由梨亜はぎこちなく答えた。
「えっと、もちろんどこでもいいよ!
あ、亜蘭くんが誘ったんだから奢ってくれるんだよね?」
照れ隠しのつもりか、視線を少し外しながら言った。亜蘭はそんな様子の由梨亜を可愛いらしいと思いながら上機嫌で言った。
「しょうがないなぁ……
って、今日は逆なんじゃないの?
僕が奢って貰う日………」
亜蘭がツッコむと由梨亜は確かにと笑いながら言った。
「ふふっ、そうだね。いいよ、今日は私が奢ってあげる。」
いつも通り楽しそうに笑う由梨亜に見とれながら
亜蘭は安心してこう言った。
「え、そんなに素直に言われると奢られにくいんですけど……?」
二人は目を合わせ笑い合った。
スクールバスは二人を乗せて
そのままどこまでも続きそうな道を
ゆっくりと走っていった。
〜おしまい〜
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
番外編で日常ストーリーを書くのはなかなか楽しいですね!
(多少、最初と比べてキャラがぶれていないか心配ではあるのですが……)
大学生はバレンタインが春休み中にあることが多いのでお付き合いしている人や交換の約束しない限り、なかなか貰ったり渡したりするのは難しいのではないかな、なんて思っています。
読者のみなさんはどのような形で過ごす予定ですか。
亜蘭が言うように"そんなもの期待しない勢"(亜蘭の場合は強がりかしら?)の方もいると思いますが……笑
人それぞれあると思いますが、
ぜひ、素敵なバレンタインを過ごされることことを祈っております。
※数年前に完成していた作品を手直しして投稿しています。