Episode 0 ~転校~
…キーンコーンカーンコーン…… ガラッ…
(私は、周りにしっかり溶け込めるだろうか……)
「おはようございます。朝のHR…の前に、今日からウチに転校してきた生徒を紹介します。 君、自己紹介を…」
…怖い…けど、言うっきゃないかぁ…
「…くるす、かれんです… 漢字で書くと…」
黒板に名前を漢字で書く私の手は、意外と震えていた…
「来栖 佳恋」 おぼつかない字で、私の名前を書いた
「…よろしく。」
…人前で話すのだけは昔から嫌いだ。
「皆さん、仲良くしてあげて下さい。 えっと…来栖さんの席は…」
仲良くして"あげて"って表現には少し疑問を感じた… まるで仲良い人が居ないみたいに思われてるような気がしたからだ。
…こうして、少し疑問を残しつつ転校初日の朝のHRが終わった。
あ、読者の皆には自己紹介が済んでないな…
私は「来栖 佳恋」。 (くるす かれん)って読むんだぜ。
歳は18、でも高校二年な。色々あって一年留年したんだ(笑)
まぁ、話し方や留年してるのを見てると察した人も居ると思うけど、結構男勝りでヤンチャ気味でな… でも、普段の学校生活ではいたって普通のJK演じて、夜な夜などっかにフラ~っと遊びに行ったりしてるのさ。 前の高校の時には運悪く夜中にクラスメートに会っちまって私の裏の顔が秒で広まって…もう次の日にはだーれも友達が寄って来なくなって、逆に先公には無許可バイクとか云々でたっぷり絞られて、やってらんなくなってそっから不登校、そのまま留年したから転校してきたって訳。
さて、現実に戻るか。 朝のHRでの私のツンツンした自己紹介も終わって、授業までの空き時間、早速周りには人だかりが出来た…
「よろしくー」やら「かわいー」なんてのはもう決まり文句、中には「(某青鳥SNS)で見た人に似てるー」なんてのも言われた(意識してるもん)あとは、前髪の一部が青グラデーションになってるのを誉めてくれた人も居たなー、幸いにもみんな私が転校してきた理由や歳については聞いてこなかったから助かった。
多分第一印象は凄く良かったかもしれない…と自分で思えるほどだった。で、授業に入る訳だけど、内心少し前まで高2やってたから余裕とか思ってたのよねー…実際? …不登校だったし元々授業なんか寝てたから何も分からなかったよ。
授業はとりあえずのらりくらり交わした所でお昼休み。 やっぱり色んな子がお昼に誘って来てくれた。 女子が割と多い学校だけに、やっぱり女子が誘って来るのね。 で、誘って来た子達と中庭でお弁当を広げるのだけども、まず私の弁当と他の子の弁当を比べるとびっくり、私の弁当は他の子の大体3倍の量はあった。
「え…!?」「すご…」って声がするのも気にせず私は他の誰よりも早く弁当を平らげた。 ちなみに私はコンビニ弁当なら4つは平気で平らげる、それも2分足らずで。
午後の授業も結局ただ意識が飛んでただけでノートの1つも取らず放課後を迎えた。
実は駅まではこっそりとバイクで来て、そこから歩いて学校へ通ってるので、とりあえず駅へダッシュすることに。途中色んな部活の見学に誘われたけど、用事があるって言って逃げてきた(笑)
そして駅のトイレでライダースーツに着替えて、愛車の元へ。
ーhonda CB400T HAWKⅡー 通称ホークⅡ。
これが私の愛車。 元は兄貴の愛車だった。
兄貴は今や伝説的な存在となった旧車會のアタマとなって、バイクもこのホークⅡからsuzuki GT380に乗り換えた。
私はその兄貴に憧れて、今もこうして夜な夜な暴走族の真似事をしてるのだけど…当の兄貴は既に音信不通、両親も離婚して、私も兄貴も両親も、みんな一人暮らしになっちゃったから、ほとんどみんながみんな、お互いを知らない。
だからこそ、私は兄貴のバイクで、兄貴の姿を探す為にこの生き方を選んだ。後悔はない。むしろ新しい世界が広がった。
そんな兄貴の姿を浮かべつつ、新しい私の地元を散策すべくホークⅡのスロットルを開けた。