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傀儡

作者: たたき北田ム巫女

 媒介している名の知らぬこの寄生生物たちに体を乗っ取られているのだから。まだ私は傀儡に成り下がってしまったわけではないのだ。だってそれは奇術師が、ましてや腹話術なる一人遊びを極め、孤独から名声を勝ち取った人々が、器用に操る人形、つまり傀儡とは違うと、私が断言するからだ。

(こいつらは人じゃない)

(まして人類の上位存在でもなかろうに)

 さて、私は今どこに向かっているのかというと。

 訂正。

 どこに向かわせられているのかというと。多分、憶測、perhaps。海ではないかと思うのだ。蟷螂に寄生するハリガネムシの動画を見たことがある。それが唯一の寄生生物なるものに関する知識、その知識に従ってこの物事の顛末を考えるのなら、水中にて、私は蟷螂やゲンゴロウ同様に考えたくもないが肛門からでも口からでも(もうこの際腹を突き破ってでも)何か得体のしれない形相をしたさっきまで寄生生物と呼び、内部でいそいそと蠢き、それに伴うずきずきとした鈍い痛みを一方的に半永久的に私に齎していた、今一番瞬間的の狭量で考えて世界から抹消してしまいたいだろうものを。モノが、本能的に私の体から出ていき、私はこの悪夢のような出来事を、ジップロックに包み梱包し懇切丁寧に包装し脳の隅の方で保管し、永遠に思い出さないことだってできるのだ。

 私はさっきより強さを増した体の内側の痛みに唸りながら、自分の意思でひたすらに歩かされる。

 せめてどこか遠くに行くのなら自動車に乗せてはくれないだろうか。それはそれで運転中に激痛に襲われ意識を失いでもしたら大変か。ならば自転車でなら、事故が起きたにしろ車通りの少ない道で転んだぐらい、どうってことない。ない筈だ。偶然車が通りがからなければ。

 その他にも電車、タクシー、様々な手段がある中で徒歩を選びやがったこいつらの考えを私には理解できないが、悶絶する姿を人にみられたくは無い、まして寄生されているのだと知れたら、どんな反応をされるのだろうか。そんなことを考えると、徒歩でよかったと思うしかないのだろう。

 そんな思慮考慮の道中もいよいよ終盤、私の鼻は磯の香りを捉えた。

 

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