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不幸な監視者

 兄の姿を見て若干不安を覚えた太平であったが、それも束の間。しばらくしたらすっかり忘れて、次の日は学校。死んでいるのだから行かなくても良いのだが、彼にとって時間を潰すことができ、かつ打ち止められてしまった青春の一ページを補完するための重要な活動拠点なのである。そこ、もう埋められないだろうとか言わない。


 学校に来た彼には目のやり場に困ることは無し。自ら教壇に立ち、生徒の顔、特に女子の顔を一人ひとり凝視する。ただし、下手なことをするとバレてしまいそうなので触れることはできない。できればそのキレイな髪を撫でてみたり、あわよくば接吻マラソンなどといったこともしてみたくなるものだが、あくまでROM専である。そして、彼にはそれができないもう一つの理由があった。それは以前より自分が何となく意識的に見られていると感じているからだ。一体誰が、この”見えないはずの”自分を捕捉しているのか、それを確認したかったのも彼がこの日、敢えて床に寝そべってパンツのぞき見リレーに徹すること無く、教壇に立った経緯だったのだ。


 こうしてしばらくするうちに一人妙に太平の方を見ているということに気が付いた。それは斎場瑞江(さいばみずえ)という女子生徒である。彼女、太平からするとぶっちゃけあまり面識の無い女子だった。それもそのはずで見た目がキャピキャピしていてとてもじゃないが陰キャの太平と縁が芽生えるとは思えない人物。


 流石に自分が幽霊だとは言え、学校の事情には配慮しようというなんとも模範生徒じみた発想の下、太平は取り敢えず休み時間まで彼女との対峙は待つことにした。


 そして、休み時間になり、幽霊らしく彼女の背後にその髪の匂いが届くくらいまで近づいてみる。すると彼女はすくっと立ち上がり、廊下の方へ歩いていく。すかさず追いかける太平。屋上までの階段の踊り場まで来たところで、会話が始まった。


「ありえなんだけど!」


(僕もありえないと思います、あなたが見えていることについて。)


「女子更衣室覗いてたでしょ。」


「はい。」


「喋れるのね。」


「そちらこそ聞き取れるようですねぇ・・・」


「私、体育のときからずっと見えてたの。最初は気持ち悪いし、怖いと思ってたから話しかけることもでできずに無視してたけど、何あれ。なんで女子更衣室にいるの。なんで女子の着替え見てニヤニヤしてるの。マジでありえないんだけどもう・・・」


 当惑する瑞江。だが、話を続ける。


「私、結構霊感強い方らしいから、見える方なのよ。本所君さ、自分のやってたことわかってるの。私がどれだけあのとき不快な思いをしたか!わかってる???」


突然ヒステリックになった女声の響きは鼓膜が無いはずの太平にも凄まじいものであった。


「わ、悪かった。まさか気づく奴がいるなんて全く想定外だったから。」


一気に立場が逆転する太平と瑞江。こうして尻に敷かれる男は出来ていくのか、としみじみ思う太平。


「そもそもなんで成仏してないわけ?」


「それは俺にもわかんないんだよね。」


「斎場さんは当然俺のこと成仏させたいよね?」


「え?なんでいきなりそんな事言いだすの?そのためになんか見せろっていうわけ?」


流石に太平もそんなに端から存在を意識していなかった彼女に青春の一ページを埋めてもらおうとは思っていなかった。確かに、良い匂いのする長い髪と背の高さ、そして登山難易度の低そうな胸はどれをとっても譲れない彼女だけのステータスではあるが。


「それは流石に無いけど、ちょっと協力してほしいなぁと思って。その、成仏するのに必要なこと、なんで成仏できないのかを。」


「私、そんなにあなたのことにかまってられない。するなら勝手にすれば、別に邪魔はしないから。ただし、変なことしたら許さないけど。」


「へぇ、俺のこと怖くないんだ。」


 彼女は最後の脅しは無視して立ち去っていってしまった。全く彼女との話は進展しないまま休み時間は終わった。

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