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2話 フォートレス

幸平はユミと一緒に格納庫へと来た。そして驚愕。


「久しぶりだな〈フォートレス〉!!」


幸平は格納庫の扉が開くと見えた一体のギガンテスに興奮し、叫び、走って近付く。


「生で見るとカッコイイ!!」


そこには全長19mのタンク型ギガンテス〈フォートレス〉が片膝を立てて屈んでいた。両肩に戦車砲を搭載している。装備はガトリングガンにアックスと少ないが、肩の砲身から強力な砲撃や頑丈な大盾の展開、ロックオン等の強力なスキルがある。

この〈フォートレス〉はasbで主人公が追放された時に軍から持ち逃げした機体で、以降愛機となる。実際にゲーム内でもギガンテスの中でも上位に入る強さだ。シンプルイズベスト。


「既にご存知かと思いますが、こちらがカンセル様のメインウェポンとなります」


ユミは〈フォートレス〉を指して言った。そしていつの間にか取ってきたライフル銃とパイロットスーツを幸平に見せた。


「そしてこちらがカンセル様の個人携行火器になります。こちらはサブウエポンとなります」


幸平はユミからライフルを受け取る。


「あとこちらがギガンテスのパイロットスーツです。無線やギガンテスのリモートコントロール等に必要なのでご着用ください」

「了解、分かっているよ。いやぁ、それにしてもasbってデザインカッコイイな」


幸平は受け取ったライフルとパイロットスーツをまじまじと見ながら興奮気味に呟く。幸平は装備されたかを確認する為に再びステータス画面を開く。


name : カンセル

armor : 80

militarypoint : 50000

playerlevel : 1

position : 総司令官 兼 一般兵士

weapon : 〈main フォートレス (ギガンテス)〉〈sub ABS-77 (アサルトライフル)〉


「よし準備OK。とりあえず〈フォートレス〉の操縦訓練を1通りしたら探索に行ってくるよ」

「はい、行ってらっしゃいませ。私は司令室より幸平様をサポートさせていただきます」


そう言ってユミは司令室へと駆けて行った。幸平はそれを見届けるとパイロットスーツへと着替え、ライフルの紐を使いライフルを肩から下げた後〈フォートレス〉の胸部にあるコックピットに乗り込んだ。


「何故だ?〈フォートレス〉の操作方法が手に取るように分かる」


勿論asbはゲームなのでコントローラーでプレイする。なので実際に乗ってみると操縦方が違って分からないはずだが、転移した時の影響か、操縦方法を知っていた。


「よし、とりあえず〈フォートレス〉起動」


幸平はパイロットスーツの腕部のリモートコントロール装置から〈フォートレス〉を起動する。すると〈フォートレス〉の目が光り、立ち上がる。

その時、ユミから無線が入る。


『無事、搭乗完了されたようですね。それでは1通り、動作チェックをしてみてください』

「了解、発進」


無線を聞いた幸平は先ずコックピットのドアを閉める。すると真っ暗なコックピットに外の景色が映し出される。それに感動しつつも、まず〈フォートレス〉を少し歩ませる。


『歩行動作異常なし。お見事です。次は武器の動作確認を』

「了解」


無線を聞いた幸平は次に格納庫後方の射撃場へやって来た。そこには人向けの射撃場の横に大きなギガンテス用の的があった。〈フォートレス〉はその前に立つと背中にある大きなガトリングガンを取り、構える。


「発射!」


幸平の掛け声と共に秒間数百発もの弾が〈フォートレス〉のガトリングから撃ち出される。やがて900発を撃った所でガトリングが弾切れになる。すると〈フォートレス〉が虚空から弾を取り出しガトリングに再装填する。そう、これこそがギガンテスが強いとされる理由の一つ。〈フォートレス〉含めるギガンテスは弾数無限、いくらでもリロード出来る。それはパイロットも例外では無い。


『武器動作異常なし。お見事です。どうやら無限装填がこの世界でもちゃんと働くようですね』

「そうみたいだね。助かるよ、弾は必要だから」

『懸念事項が消えて良かったです。次は──』

「変形の確認だろ!!」

『はい。お願いします』


ユミからの無線を幸平が食い気味に打ち消し、幸平が一番やりたかった変形動作確認に移る。


「いくぞ!!トランスフ○ーム」


幸平の規制音がかかりそうな掛け声と共に〈フォートレス〉が変形する。するとほんの数瞬の間に〈フォートレス〉が巨大なタンクになった。全高5m、全長15m、全幅4m、総重量340tの超超重戦車。この巨体で時速80kmも出るから驚きだ。砲塔には左右2門の戦車砲と後方にはロボット時の主兵装のガトリングガン。まさに要塞という名前が相応しい。

変形の動作確認を終えた幸平はタンクから再びロボットに変形する。


『変形動作異常なし。お疲れ様でした。それでは出口へ向かいその後探索を開始してください』

「了解」


幸平は〈フォートレス〉をコマンドベースの出口へと向かわせる。そして格納庫の両開きの大扉がゆっくりと開く。


『探索前にもう一度、確認をさせていただきます。私たちが転移したこの場所はいわゆる異世界。周囲には5mを超える狼や8mを超える熊等の脅威になる生物が多数生息しております。周りに広がるのは平原でございます。よって遮蔽物等が無い為、戦闘時はくれぐれもご注意ください。今回の任務はそれらを考慮した上での探索及び、安全の確保です。それではお気をつけていってらっしゃいませ』


ユミと任務内容の確認をした幸平は〈フォートレス〉と共に平原へと出発した。




3km南に移動した、幸平の乗る〈フォートレス〉は司令室のユミへと連絡する。


「こちらカンセル。司令部応答せよ」

『こちら司令部。どうなされましたかカンセル様?』

「現在、本部より3km地点。依然として平原が続いている。周囲5kmの地形情報を送信する。マップ作成後、送信願う」


現在幸平はコマンドベースから1km毎に〈フォートレス〉の半径5kmの地形情報を送信し、司令部のユミにマップを作成してもらっていた。


『こちら司令部、情報を受信。マップ作成完了。周囲マップ送信します』

「こちらカンセル、マップ情報を受信。マップを更新する。探索を再開する」


〈フォートレス〉が再び歩み始める。ちなみに〈フォートレス〉がタンクにならずに人型でいるのは臨機応変に対処する為だ。人型であれば未確認勢力の不意な攻撃を飛び上がりやローリング等で緊急回避したり、スキル〈フォートレスシールド〉で防いだり出来るからだ。しかし人型には勿論弱点もある。移動速度はタンク時は最高時速80kmと見た目に似合わず高速が出るが、人型時はどんなに走っても時速45kmが限界だ。さらに〈フォートレス〉最大火力である戦車砲射撃は、タンク時には発射後装填するだけなので20秒の自動装填が終われば再び発射出来る。それに戦車砲が2門ある為もっと短い間隔で撃てる。だが人型時には戦車砲射撃がスキル〈ファイア!!〉になる為スキルゲージが最大まで堪らないと戦車砲を撃てないのだ。スキル〈ファイア!!〉の再発動条件は2分間の時間経過か、一定以上の敵の撃破だ。


「司令部、動体を確認した。生命体と思われる」


幸平は丘を超えると丘の下約1900m、大きな狼の様な生物を複数確認した。その数5。いずれも狼型で群れているようだ。


『こちら司令部、映像を確認。対象およそ4m。内一体、大きな個体は6m程あります。その数5。危険です。どうされますか?』

「これより対象物、脅威度調査及び〈フォートレス〉戦闘力調査を開始する」

『...かしこまりました。では各対象をα、β、γ、δ、εと呼称します。これより戦闘データを記録します。...カンセル様、くれぐれもお気をつけください』


ユミが幸平に釘を刺す。無茶をするなと言いたいのだ。だがこの任務、というより幸平とユミの2人だがこの組織の最高責任者は幸平なのでユミは口の出し用が無く、仕方なく認める。


「...了解。ヘマなんかしねぇよ...多分」


幸平は一度タンク型になり、戦車砲を寝そべっている一番大きな個体、αに定める。すると戦闘開始の合図のようにマップに敵性反応である赤点が表示される。赤点にはα、β、γ、δ、εと名前が付いており、おそらく狼達の物だ。


「悪いな。なんの恨みもないが、いろいろと確かめなきゃならんのでね。許してくれや」


幸平が誰にも聞こえない、強いていえばユミにしか聞こえない懺悔をする。そして──。


「発射!!」


幸平の叫びと共に平原にドン!!と轟音が響き渡る。その後、ほんの数瞬で黒煙が上がり、遅れてドンと音がする。直撃だ。黒煙で対象は見えない。

するとマップの赤点が一つ消滅する。それはαでは無い。


『γ撃破!!』


ユミの声に幸平は驚く。確かに幸平はαを狙ったのだ。確かにγはαに一番近かったが、それでも30mは離れていた。初めての為誤射の可能性もある。でも今まで幸平はasbで何回もこの戦車砲を撃ってきた為考え辛い。しかしそんな事を考えている時間はない。その時間で相手に反撃の機会を与えてしまいかねない。


「だったらこうするまでさ」


幸平は〈フォートレス〉を変形させ、人型に変える。スキルを使うためだ。全ギガンテスを共通して、スキルは人型でしか使用が出来ないという制限があるのだ。人型になり無事スキル使用制限を解除した幸平はスキル〈ロックオン〉を起動する。スキル〈ロックオン〉を使用すれば遮蔽物がない場合必ず命中させられるようになるスキルだ。再使用までの条件は30秒の時間経過。


「対象は勿論α」


αをロックオンする。α達は音に気付いたのか警戒していた。幸平は次にスキル〈ファイア!!〉を発動する。


「スキル発動〈ファイア!!〉」


するとドドン!と重く響く音が2重で聞こえる。

スキル〈ファイア!!〉は〈フォートレス〉の両肩にある2門の戦車砲を同時に発射するスキルだ。通常時の射撃より威力、弾速ともに倍になる。


『着弾!』


ユミの声と共に前方で黒煙が2つ上がる。その後少し遅れて轟音が2つ聞こえてくる。


『ε撃破!!』


またもや、外す。スキル同時使用でαを仕留められなかった。スキル〈ロックオン〉を使った為当たる筈だったのだ。遮蔽物が無ければ。


「まさか、庇っている?」


もし、他の個体がαを庇っているのならば確かに他の個体が死に、αが生きている意味も分かる。スキル〈ロックオン〉は遮蔽物が無ければ当たるのだから。だが黒煙が晴れると、未だにこちらに気付いていない狼型生物が見える。こちらに気付いていないと言う事は攻撃場所が分からないという事だ。相手の場所が分からないのに攻撃が飛んでくる場所を予想し、αを庇う事はほぼ不可能に近い。


「でも事実、αは死んでない」


幸平が考え込んでいると──。


『カンセル様!!避けて!!』

「うごぁ!!」


突然、狼型の一体δが飛んできた。1900mあった距離を幸平が考え込んでいるその数秒で。飛び込んできたδは前脚の爪で〈フォートレス〉を蹴りとばす。蹴られた〈フォートレス〉は軽く宙に浮き、着地。


「なんて機動力だ」

『機体損傷率0.26%。まだ全然戦闘可能です』


しかし、そこまでのダメージにはなりえなかった。すかさず幸平は反撃に移る。


「くらえ!!」


〈フォートレス〉への攻撃直後で隙の生まれたδにガトリングガンの弾丸を何十発も叩き込む。一通り撃ち込むとδは肉片となり、消滅した。


「消えた?」

『δ撃破!!』


幸平がδの死体が消えた事に驚いているとユミが無線越しに叫ぶ。


『α、β急速接近。警戒を!!』

「スキル〈フォートレスシールド〉!!」


〈フォートレス〉がスキル〈フォートレスシールド〉を発動する。すると〈フォートレス〉が虚空から堅牢な巨盾を取り出し構える。スキル〈フォートレスシールド〉はarmor10万の巨大な盾を出すスキルだ。この盾は破壊されるか自主的に消去するまで現存する。ちなみに〈フォートレス〉のarmorは5万で、幸平のarmorは80だ。再使用までの条件は10分間の時間経過だ。


「ぐっ」


αの体当たりを盾越しに受け、その衝撃がコックピットまで響いて来る。スキル〈フォートレスシールド〉使用時はガトリングガンが使えず、近接武器のアックスが武器になる。


「りゃぁ!!」


〈フォートレス〉がαを斬りつける。がしかし──。


「なに!?」


アックスの直撃を受けたαは無傷だった。しかしその後ろでβが真っ二つになり消滅した。


『β撃破。...身代わり...でしょうか』

「おそらくな」


これによりユミも幸平も狼型のトリックに気付く。これはαをβ、γ、δ、εが庇っていたのでは無く、αのダメージを他の個体が肩代わりしていたのだ。何かしらの方法で。


『分身、またはスキル等でしょう』

「だろうね」


ここは異世界だ。何が起きても不思議では無い。それに幸平達が使えるスキルをこの世界の者達が使えても不思議では無い。


「とにかくコイツと決着を付けないとな」


幸平はαを睨みそう言う。〈フォートレス〉は盾を構える。もし、身代わりならもうダメージを肩代わりしてくれる個体は居ない。次はαがダメージを受ける番なのだ。


「スキル〈ロックオン〉発動」


幸平はスキルを発動し、αをロックオンする。スキル〈ファイア!!〉を使った後から敵も3体倒し、とっくに再使用出来るようになった幸平が狙っている事はただ一つ。


「かかってこい!!」


幸平が叫ぶ。するとαはその挑発に乗るかのようにまっすぐ超スピードで突っ込んできた。そのまま勢いに任せ両前脚の爪攻撃。


「くっ!」


αの両前脚の爪攻撃を盾で防いだ〈フォートレス〉は盾を投げ捨て、αを掴む。


「これで終わりだ!スキル〈ファイア!!〉」


ドドン!と2重で低く響く音が聞こえた直後に〈フォートレス〉が黒煙に包まれる。


『α撃破。戦闘データの記録を終了しました。機体損傷率66%、自爆です。危険ですので至急帰投してください』

「...はい。すみません」


幸平はやり過ぎた。近距離で撃ちすぎた為に、ダメージを〈フォートレス〉も受ける事になった。帰投する〈フォートレス〉の後ろ姿はどこか悲しげだった。

武器情報

フォートレス 〈armor 50000〉

装備

フォートレスガトリング 〈装弾数 900〉〈威力 700〉

フォートレスアックス 〈威力 2000〉

フォートレスカノン〈装弾数 2〉〈威力 40000(スキル時8万)〉

フォートレスシールド〈armor 100000〉

超超重戦車に変形するギガンテス。タンク時、前部に2門の戦車砲。後部にガトリングガンを装備した、珍しい戦車。ギガンテスなので1人乗りであり制御を全て1人で行う為、タンク時走行しながら同時に攻撃する事が困難だ。戦車でありながら、青い塗装の為迷彩効果は無い。


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