第95話 訪問者(3)
短いです。
聞こえてきた音で一瞬、会話が止む。
「私が出てきますね。」
止める暇もなく、レイラが下りていった。
止まった会話も再開される。
「私、外に出ても大丈夫よね?」
「主様の従魔だから多分大丈夫だよ?」
「『多分』ってところが怖いね。というか結局、タケルは何匹連れて返ってきたの?」
「ん?えっと…」
「969匹です。」
「969匹だな。」
「よく覚えてるね?」
「自分の従魔だからな。」
(実際はヘルプに聞いただけだけどな。)
覚えていないと言ったらランがどう思うかわからない。
「ご主人様はもっと増やすつもりなの?」
「ああ。でも、昨日みたいに1日かけてするのは、当分しないつもりだ。依頼の合間にできたらって感じだな。」
「全員は連れていかないわよね?」
「ああ。まぁ、俺は従魔をペットとして連れてきただけだからな。」
「珍しいよね。まるでタケルが貴族みたい。」
「ん?リリファ、貴族って従魔をペットにするのか?」
「聞いたことがあるだけだけどね。」
(…絶対絡まれる…)
「…こんなに、多くは、ない。」
「そうなのか?」
「いや、ご主人様みたいに群れごととか聞いたことないわよ?」
「というか、タケルなら王国滅ぼせるよね?」
「当然だよ?」
「いや、当然じゃないからな。」
「…あなたは、異常。」
「お前は神だろ。」
神にまで異常と言われることはないはず。
たぶん。
扉が開く音がした。
レイラが戻ってきたようだ。
「おかえり。なんだった?」
「それが…王国の騎士だそうです。」
「…」
(やっぱり来たか…)
「わかった。ちょっと行ってくるから食べててくれ。」
「わかりました。」
転移部屋から1階に降りる。
客室の扉を開けると金髪の女性ががソファに座っていた。
「失礼している。」
「ああ。で、何の用だ。」
面倒なのは目に見えているので、単刀直入に聞く。
女は一瞬鋭い目になったものの、すぐに元に戻っている。
「私の名は、ソリビア=メルテス。このムニシヤ王国で宮廷騎士をしている。今日は王子の命令で尋ねさせてもらった。」
「…」
無言で先を促す。
「内容は『其方の所有する土地に魔山の出現を確認した。安全確認の為、かの土地を国で買取り、新たな土地をあてがう。』だそうだ。」
「そうか。」
「見ると、魔物も住み着いているようだ。其方としても喜ばしいのではないか?」
「…はぁ…ふざけてるのか?」
「何?」
「あの山は俺が作ったものだし、そこにいる魔物は俺の従魔だ。わかったら帰ってくれ。」
「冗談も程々にしろ!どれだけの数がいると思っているんだ!」
「そう思うのは勝手だが、確認をしたのか?」
「そ、それは…」
「もし手を出したなら、俺は容赦しないぞ。」
脅しの意味も込めて《威圧》も使う。
「っ!?は…」
「じゃあ、さっさと帰ってもらえるか?迷惑なんだ。」
「…わかりました。一先ず戻ります。」
「もう来なくていいんだが。」
「私だって仕事なんですよぅ…」
そう言い残して去って行った。
(最後、口調おかしくなかったか?)
「いろいろあるのでしょう。」
(そうだな。今日は何をするかな…)
そんなことを考えながら朝食を食べに戻った。