第93話 訪問者(1)
庭に戻り、従魔の輪を従魔達に着けていると問題が発生した。
(従魔の輪が足りない…)
従魔の輪は124個あるが、新しく増えた従魔全てに使うには全然足りない。
(また買いにいかなきゃいけないのか…)
「作ればいいのでは?」
(…)
「?」
(早く言えよ!)
「気づいていないのは知っていましたが、知らせていいものなのかと思いましたので。気づくのを待っていたということころです。ですが、お金をこれ以上無駄遣いさせるわけにもいかないですから。」
(…とりあえず作るか。)
従魔になったのは、火竜132体、炎蛙35体、熱猫17体、水竜56体、流貝352体、土竜73体、光竜1体、錫蜘蛛38体、鉛虫86体、闇竜1体の合計791体。
下級竜を群れごと《従魔契約》したことと、流貝と《従魔契約》し過ぎたことが原因だ。
(仕方がなかったんだ…)
流貝は、触手で泳いだりもするが、底にいるものも触手を出していて、更に個体差もあり、触手の色が違うのでイソギンチャクのような美しさがあった。
(まぁ、水竜の餌にもなるしな。)
もちろん、ただの餌ならば《従魔契約》はしなかった。
従魔同士で争うのはよくないからな。
だが、水竜は流貝と共存していて、水竜は流貝の触手の部分を食べるが流貝の触手は毎日生えてくるから問題ないし、流貝は触手を使って泳げはするが、魚などを捕らえるほどではないので、水竜の糞から簡単に栄養を取れるので基本的に底にいるらしい。
流貝は体の一部を食べられて、代わりは糞という不公平な状態にも感じるが、流貝は痛覚もないそうなので気にならないそう。
次々と従魔の輪を作っては従魔に着けていく。
水竜など水中で生活している従魔に優先で着けていく。
魔物というだけあって完全なえら呼吸ではないようだ。
水中の方がステータスが上がるため、水中で生活するらしい。
そのため、必要な時は陸地にも上がってこれるようだ。
従魔の輪を着け終えた。
全員に仲良くするように伝え、ウル達のいる旧森人族領へ転移する。
(ウル、そろそろ戻ってきてくれるか?)
(たけるお兄ちゃん?うん!わかったよ!)
匂いで居場所がわかったんだろう、すぐにウル達が駆けてきた。
(たけるお兄ちゃん、こっちだよ。)
ウルに言われついていくと、木の実やキノコなどが山積みになっていた。
山積みになったものの近くに2体の帝狼がいる。
おそらく見張り役だろう。
頭を撫でると尻尾を振り、足に絡まってくる。
大きめなので少し歩きづらいが、犬のようで可愛らしい。
歩くことを諦め、その場で屈み、撫でてやる。
仰向けになり喜んでいる。
(本当に犬だな。)
俺が知らないだけでこのくらいの大型犬もいるのかもしれない。
そのまま撫でているとウルも寄ってきた。
(たけるお兄ちゃん、ウルも!)
(ああ、ウルも頑張ったな。)
(うん、頑張ったよ。えへへ。)
ウルを撫でながら空間魔法で木の実などをしまっていく。
(キノコは…なんとかなるか?まぁ、リリファに頑張ってもらうか…)
ウル達と共に庭へ転移した。
(主様、おかえり〜!)
ランは作業を終えたのか玄関の前で待っていた。
(ああ。ただいま。)
(こっちは終わったよ。)
見ると、少し傾斜が急な気もするが、山ができていた。
その周りを下級竜達が飛び回っている。
(わぁ…すごい…)
(ウルも行ってくるか?)
(うん!)
ウルが駆け出すと他の帝狼達も付いて行った。
(ウルが群れの長だよな…?)
子供とそれに振り回される保護者のようにしか見えない。
(それにしても…)
周りを見渡す。
(きっとなかなか見られない光景だよな。)
火竜、風竜、光竜、闇竜が山の周りを飛び回り、水竜と土竜が水面から顔を出している。
それに帝狼達も加わった。
(このまま続いていければいいな…)
俺はその光景をしばらく眺め続いていた。
その後、夕飯前にリリファと共にウル達に採ってきてもらった木の実などを植えた。
キノコもリリファが育てられるらしい。
ランも木の実を植えるのを手伝ってくれた。
赤魔柑に水属性魔法をやった後、リリファとランと共に家に戻った。
ランが地龍と知ると、ルティとレイラは驚いていたが、スメノスは知っていたのか驚いていなかった。
因みにリリファは木の実を植える時にすでに驚いていた。
夕飯を食べながら自己紹介を済ませていく。
「ランちゃん、ですね。改めて、私はレイラです。よろしくお願いします。」
「よろしく。私はレイラよ。」
「…スメノス。」
「さっきも言ったけど、あたしはリリファ。よろしく!」
「主様の従魔のランです。よろしくお願いします。」
ランも普通に会話ができるようで、夕飯の間中、ルティ達と盛り上がっていた。
夕飯後、風呂に入り、部屋に戻る。
ベッドに横になり、日課となっているスキル作りを始める。
(今日は《拡大》を作ったから、あと4つだな。)
「まずは、あなたの言っていた封魔石を無効化するものですね。」
(そうだな。えっと、《無効化無効》?)
「そもそも、そのユニークスキルすら封じられると思いますが。」
(確かに。それだと意味ないな。)
「封魔石の影響を受けたくないならば、体内に封魔石を取り込んだり、身につけたりするのも効果的です。」
(そんなので大丈夫なのか?)
「はい。ですが、何よりも値段が高いので普通の人はそうそうできませんが。」
(俺なら問題ないと。)
「はい。まぁ、念のためですが、《体質変化》を作ってはどうでしょう。」
(んー…今回も任せるよ。俺は寝る。おやすみ。)
「…そうですか。あとは私におまかせください。どうぞ、ごゆっくりおやすみください。」