第9話 宿
今回も短いです。
数分後、俺達は宿に着いた。
中に入り、宿の受付にいた黒髪のふくよかな女性に話しかける。
「一部屋借りたいんだが。」
「一部屋ね。食事はいるかい?」
「あぁ。2人分頼む。」
「何日だい?」
「とりあえず1日だ。後で継続もできるか?」
「できるよ。1日で食事ありが2人だったね?銀貨2枚だよ。これに水桶と手拭いも含まれてるからね。食事は朝と夜の2回。ここに降りてくれば作るよ。さすがに朝早すぎたり、夜遅くには出せないけどね。常識の範囲でたのむよ。」
そう言いながら手元の紙は書き込んでいく。
俺は銀貨を2枚渡す。
「名前はなんていうんだい?片方でいいよ」
「タケルだ。」
「タケル、っと。よし、じゃあ201号室だね。そこの階段を上がってすぐの左の部屋だよ。」
「あぁ、ありがとう。」
そして俺達は部屋に入った。
「そういえばフェル、同じ部屋で大丈夫だったか?」
「今更だね…大丈夫だよ。タケルを信じてるから。」
「…出会って1日も経ってない相手を信じるのはどうかと思うが…」
「わかってるよ!誰彼構わず信じるわけじゃないよ!」
頰を膨らませながら抗議してくる。
「悪かったって。それより、この後はどうする?夕食にするには少し早いが…」
「うーん…寝るにしては微妙な時間だよね。…もしいいなら少し話さない?お互いのこととか。」
(森で話した時はざっくりとしかはなさなかったからな。)
「いいぞ。そうだな…」
「へぇ、タケルのいた世界は平和だったんだね。魔法の代わりのものか…少し見てみたい気もするね。」
「少し前の俺からすれば魔法が存在するなんて信じられなかったからな。」
「そんな風には見えなかったけどなぁ。」
そんなことを話しているうちに美味しそうな匂いがしてきた。食事を作っているようだ。
「そろそろ下に降りるか?」
「そうだね。食事が楽しみだよ。」
そして俺達は下の階へ降りた。
「匂いにつられてきたかい。もう少しで出来るからそこに座って少し待ちな。」
勧められた椅子に腰掛ける。
少しすると、食事を運んできてくれた。
「残さずくいな。」
その一言を言うと、厨房へ戻っていった。
「じゃあ早速食べるか。いただきます。」
「いただきます?」
(そういえば、異世界ものでこれもよくあるよな。)
「食事の前にいただきますって言ってから食べるんだよ。」
「へぇ。タケルのいた世界の文化なんだ…じゃあ、わたしも。いただきます!」
そう言って、フェルは食事を食べ始めた。
「ん〜。おいし〜!」
フェルが食べながらそんなことをいう。
今日の夕食は肉を焼いたものと、少し固めのパン。
それにシチューのようなものだった。
「確かにこれはうまいな。」
肉も結構量があり、量としては申し分ない。
これで500円ほどなら高くはないだろう。
夕食を食べ終わり、俺達は部屋に戻る。
「うー…お腹いっぱいだよ〜。」
フェルには量が多かったようで、少し苦しそうにしている。
「量は結構多かったな。」
「だよね〜。少し辛かったよ。タケル、この後何か用事ある?」
「いや、もうないぞ。」
「よかった〜。お腹いっぱいで眠くなってきちゃった。」
フェルは体を拭きながら言う。
フェルへ背を向け、同様に体を拭く。
「あぁ、結構歩いて疲れただろうからな。俺はそこらへんで寝るから安心してくれ。」
この部屋にはベッドが一つしかない。
「うーん、大丈夫だよ。結構大きいし。わたしはタケルならきにしないから。」
「確かに大きさだけなら問題ないが…」
(というかあの人俺達を恋人かなにかと勘違いしてるんじゃないか?もしそうなら誤解を解かないとな…)
「昼間みたいに倒れられたりしたら、お互いに困るでしょ?いいから一緒に寝よ。」
無理やりベッドに引き込まれる。
「じゃあ寝よっか。おやすみ〜。」
「あぁ、おやすみ。」
そういうとフェルはすぐに寝てしまった。余程疲れていたんだろう。
(無防備すぎだろう。俺が襲う気だったらどうするんだ…気にしてもしょうがないか。)
そうして夜は更けていった。
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