表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただただ、幸せに…  作者: 緋月夜夏
ムニシヤ王国編
88/117

第87話 従魔契約(4)

ランと共にしばらく歩くと、食事中の帝狼エンペラーウルフを発見した。

茂みから覗くようにして観察する。

緑色のものの山に群がっている。

「葉を食べてるのか?」

こちらの狼は雑食なのだろうか?

葉鳥リーフバードだよ。昼間は光合成してて、動かないから肉食の魔物とか動物によく餌にされてるよ。」

「昼間動けないとか餌として生まれたって言われても驚かないな。」

「ちなみに夜は普通に動くよ。ホー、ホー、って鳴きながら飛んでるね。」

フクロウみたいだな。」

「昔は梟の魔物とも言われてたよ。」

(というか、魔物がいる中生き残ってる普通の梟とか凄すぎるだろ。)

暫く帝狼の食事を見ていると、葉鳥を食べ終わったようだ。

葉鳥のものであっただろう骨が散乱している。

移動しようとし始めたので、茂みから出る。

当然、帝狼達は気づき、歯を剥き出しにする。

威嚇するように声を上げていたが、徐々に小さくなっていって、帝狼達は寝転がった。

そして腹をこちらに向け、じっとしている。

「…えっ?」

「これは…ねぇ。」

ランも苦笑いしつつこちらを見てくる。

「服従の姿勢ですね。すぐに《従魔契約》できます。」

ヘルプの声を信じ、リーダーであろう帝狼に《従魔契約》を使うと、すぐに成功した。

(その…よろしくお願いします…)

(え?あっ、はい。こちらこそ…)

歯を剥き出しにして威嚇していたのに、気弱そうな少女の声が聞こえ驚いてしまった。

(えっと、よろしくな?)

近づきつつ話しかけるが、怖がっているのか腰が引けているが、《従魔契約》したからか逃げようとはしない。

そのため、手が届くところまで近づくことができた。

(あっ…えっと…そのぅ…)

(怖がらなくて大丈夫。《従魔契約》したんだから、傷つけたりしないぞ。)

子供に話しかけるようにしながら手を伸ばす。

おそらく犬に接するようにしたから手を伸ばすのが良いだろう。

手を伸ばすと、帝狼は俺の顔を見上げた後、舌を伸ばし俺の手を舐めた。

そのまま舐め続けていたので、犬にするように顎の下を撫でると、垂れ下がっていた尻尾が左右に揺れていた。

(やっぱりここは気持ちいい?)

(はい…気持ちいいです。)

(続けていい?)

聞いてはみたが、尻尾の揺れが大きくなったので続ける。

引けていた腰は元に戻り、俺の方へと近づいてきていた。

本当に犬みたいだな。

顎の下だけでなく、全身を撫でていると気持ちよかったのかこちらに飛びついてくる。

危害を加えようとしているわけではないので、そのままじゃれる。

顔も舐められてベタベタになっていた。


視線を感じ、見ると不機嫌そうな顔のランがいた。

ランの方を向き、話しかける。

「どうかしたのか?ランも撫でたかったのか?」

「私も撫でられたいよ…じゃなくて!主様はゆっくりしていていいの!?」

「ああ、そうだな。」

(君の群れの帝狼全員と《従魔契約》したいから、連れてきてくれる?)

(はい!わかりました!)

尻尾をぶんぶん振りながら駆けていった。

「…随分懐かれましたね。」

帝狼が走っていったのを見てか、ヘルプが話しかけてくる。

(ん?ああ。犬みたいで可愛いよな。)

「あなたの話し方も優しかったですしね。」

(人見知りの子供みたいだったからな。)

「羨ましいです。私にも心を開いてくれていいんですよ。」

(心は開いてると思うぞ。というか、心を読んでるだろ?)

「そういうことではありません。私にも先程のような話し方にしてくれませんか?」

(ヘルプは子供っぽくないからな。)

「そうですか…」

ヘルプが落ち込んだ気がする。

「あっ、戻ってきた。」

ランのその声で帝狼の走っていった方を見る。

十数匹の帝狼がやってきた。

「帝狼などは小さな群れが多く作られています。

さらに《従魔契約》をするのならば、案内します。」

(いや。帝狼はもういい。)

《従魔契約》をした帝狼はそのまま俺の元にまで走ってくると、褒めて、とでもいうかのように尻尾を振り、見上げてくる。

(ありがとう。助かったよ。)

(はいぃ…)

気持ち良さそうな声を出しながら俺の下で丸まった。

「《従魔契約》ですが、下級竜ワイバーンを転移させた時につくった《拡大》で一度に行うことが可能です。」

(そうなのか?それは助かるな。数が多いと面倒だしな。)

ヘルプの指摘通り、《従魔契約》と《拡大》を使い、一度に終える。

(よし。できたな。)

(あの…)

(どうかした?)

話しかけてきたのは最初に《従魔契約》した帝狼だ。

(タケルさんって呼んでいいですか?)

《従魔契約》をすると魔物側には俺の名前が知られるらしい。

(ああ。無理しないで好きにに呼んでくれていいよ。)

(じゃあ…たけるお兄ちゃん…)

俺は、シスコンでもないし、狼の妹は当然いないが、この呼ばれ方は嫌いじゃない。

(可愛いやつだなぁ…口調も無理しなくていいからな?)

(うん。わかった!)

さらに年齢が幼くなった気もするが可愛いので気にしない。

(たけるお兄ちゃん、私に名前をちょうだい?)

(そうだな…)

「ポチがいいのでは?犬のようですし。」

ヘルプが何か言っているが無視する。

(狼だから…ウルはどう?)

(!うん!それにする!)

(そっか。喜んでくれて嬉しいよ。)

そのままウルを撫で続ける。

「私と大差ないですよ…」

ヘルプが何かを呟いていた。

読んでくださりありがとうございます。

よろしければ、他の小説も書き始めたので読んでくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ