第86話 従魔契約(3)
念話で説明を終える。
(たくさん連れてきたのね…)
(ああ。でも、まだ他の魔物も連れてくるぞ。)
(ご主人様だと、敷地以上の魔物を連れてきそうね…)
(それは気をつけるよ。じゃあ、行ってくる。)
(ええ。皆にも魔物の事、伝えておくわね。行ってらっしゃい。)
念話を終え、再び旧森人族領へ転移する。
(下級竜はもういいし、次は森人形がいたな。他にどんな魔物がいるんだ?)
「地龍に、帝狼や擬態蝶、葉鳥とゴブリン系、スライム系の魔物がいます。」
(地龍?)
「はい。少し先の洞窟の奥に住んでいるようです。」
(一体だけか?)
「はい。個体数が少ないですから。」
(ふーん、そういえば、帝狼って何処かで聞いたことあるよな?)
「あなたの服の素材ですね。因みに、ここには帝狼の変異種がいます。」
(変異種って滅多にいないんじゃないのか?)
「地龍のお陰でしょう。龍が住むということは少なからず環境に影響を与えます。」
(じゃあ、他の龍もってことだよな?)
「はい。他の龍はこの近くにはいませんが。」
(まぁ、機会があったらってことだな。というか、地龍の方が下級竜より強いんじゃないか?)
「はい。もっとも、変異種となれば個体によっては下級竜の方が強かったりしますが。」
(今回は?)
「地龍の方が明らかに強いですね。」
なんで先に言わなかった。
ヘルプの指示通りに進むと、地龍であろう魔物がいた。
想像通りというか、4本の足を持ち、岩の生えたような甲羅を…
(あれってワニガメじゃね?)
「姿は似ていますね。ワニガメを大きく硬くしたら、地龍になるかもしれません。まぁ、魔法は使えないでしょうが。」
ワニガメが魔法使えたら地球が危ないだろ。
「えっと、おーい。」
「…なんだ?」
「えっ、喋った!?」
ドスの利いた声が聞こえてきた。
「話しかけてきたのは貴様だろう?何を驚いている。」
「いや、試しに話しかけたんだけどな…まぁ、いいや。それで、《従魔契約》受ける気あるか?」
「…あるわけがないだろう。」
「そうか。それじゃ!」
踵を返し洞窟を出る。
「…待て。」
「ん?なんだ?」
振り返ると地龍が付いてきていた。
「なぜ簡単に諦める。」
「…ツンデレか?男のツンデレなんて価値ないぞ?」
「…なくはないのではないでしょうか?」
おい、ヘルプなんでそこに反応する?
「つんでれ、はわからんが、私と《従魔契約》をしたいのではなかったのか?」
「いや、言っといてなんだけど、地龍を勝手に連れ出していいのかなと。なんか環境に良い影響を与えるんだろ?」
「…私と戦え。」
「いや、話聞いてたか?もう良いってーー」
「私はランドロアスだ。行くぞ。」
「話を聞け。」
地龍は、名の通り地面を操っているように見えた。
地龍の周りは、地面が盛り上がり、波のように唸っている。
あくまで地龍の操れるのは地面だけということなのか、草木は地面の流れに沿って移動している。
いつの間にか俺の下の地面も操っていたようで、地面から他のようなものが生え、足を掴んでいた。
そして、波のようになった地面が俺を飲み込もうとして…
元の状態に戻る。
「は?」
これには地龍も驚いたようだ。
ついでに地龍が俺にしたように地龍の足を土で掴む。
さらに、逃さないよう《重力操作》を使う
「…何をした。」
地龍は特に抵抗する様子はない。
少し拍子抜けだ。
声が震えているように聞こえたのは気のせいだろう。
「《土壌変化》と《重量操作》だが?」
「…《土壌変化》か。」
地龍の目に怯えが加わった気がする。
というか涙目になっているように見える。
こういう時はなんて言うのが良いんだろう。
「…地龍の素材は高く売れそうだな?」
「ごめんなさい許してください悪気はなかったんです!」
物凄く早口で言われた。
土下座で謝っているつもりなんだろうか?
見た目のせいで亀がぐったりしているようにしか見えない。
「《従魔契約》しますから、命だけは!」
「…いや、別に無理には…」
「お願いします《従魔契約》してください死にたくないんです!」
まぁ、それが目的だったんだし良いんだけどな?
地龍に《従魔契約》を使う。
「出来たな。じゃあ俺の家に来てもらうけど…」
そういった時、地龍の体が発光していた。
目が痛くなるほどの光を発した後、徐々に光が治まってくる。
「…っ、目が痛い…何が…うっ!?」
目を慣らしていると、胸に何かが当たって来た。
と言うより、抱きつかれている?
「えへへ〜主様〜。」
目の前にいた地龍がいなくなり、何者かに抱きつかれている。
髪は明るい茶色、と言うか黄土色と言うのが正しいだろう。
目の色も髪色と同様だ。
顔は赤らみ、目を潤ませてこちらを見上げてくる。
「…もしかして、地龍か?」
「うん!そうだよ!」
尻尾も牙もない。
そして何より、この膨らみは…
「…女?」
「見ての通りだよ?」
「さっきまでの声は?」
「男の人の声の方が怖いよ?」
脅すためって事か。
「…まあ、いいか。こう言うこともあるだろ。ところで、地龍は家に住みたいか?」
「私、体重そのままだよ?床とか抜けない?」
「たぶん?後で試すか。人型のまま行動できるってことだよな?」
「そうだよ。」
「じゃあ、地龍もこのまま付いて来てくれるか?他の魔物も《従魔契約》したいんだ。」
「…他の魔物も?」
「ああ。」
「…そっか。あっ、私の名前は主様が決めていいよ?」
「ランドロアスとかって言ってたよな?」
「可愛くないよ〜。」
「どうでもいい気もするが…じゃあ、ランで。」
「適当だよ〜…」
「ほら行くぞ?」
「うん。…他の魔物がどんなのかも見ておきたいしね。」
ランが何かを呟いていた気がしたが気のせいだろう。
(ヘルプ、次の魔物の場所を教えてくれ。次は帝狼がいいかな。)
「…こっちです。」
頭の中に居場所が浮かんでくる。
その方向に向かって2人で歩き出した。
ヒロイン(?)が増えました。
暫くは従魔契約をし続けます。
良ければこちらも
こちら強制転移対策委員会ですが、お宅の魔王を引き取ってください。
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