第84話 従魔契約(1)
旧森人族領に着くと、早速上空を旋回している下級竜を見つけた。
(魔物って簡単に増えるんだな?この前倒したばかりだろ?)
「魔物はそういうものですから。」
(まぁ、そんなことは今はいいか。そういえば、下級竜は知性はあるのか?庭に出るたびに襲われるのはごめんだぞ?)
「下級竜には知性はありません。一部の魔物は知性を持っていますが、一握りです。全体の1%にも満たないでしょう。ですが、《従魔契約》によって従えた魔物は知性を持ちます。」
(それって、《従魔契約》を使った時に作られるってことか?)
「はい。勿論、個体差があり、今までの環境や経験によって差ができるようです。」
(まぁ、差がなかったら全部同じだしな。)
「あなたは魔力は多いのであまり関係がありませんが、群れの長に対して《従魔契約》をすれば、群れはあなたに従います。」
(そもそも、知性がないのに群れって作れるのか?)
「群れを作るのは本能です。食事をするのと変わりません。」
(なるほど。下級竜も群れってことは、群れの長がいるんだよな?)
「はい。案内しますね。」
(ああ。)
ヘルプの案内を辿りると山頂付近の洞窟に着いた。
「ここです。」
洞窟の中は、暗く普通だったら見えないだろう。
光属性魔法で照らしながら進む。
洞窟の中は、骨や果物のかけらのようなものが転がっている。
(下級竜って、ほとんど飛んでるんじゃなかったか?)
「長になるのは特殊な個体なのでしょう。」
(変異種ってことか?)
「似たようなものですね。長になっているなら、通常の個体よりも強いのでしょう。」
(従魔契約できるか?)
「力の差を見せつけましょう。さて、いましたね。」
確かに少し先に下級竜がいた。
(寝てるのか?)
その下級竜は地面に横たわっている。
「いえ、弱っています。少し近づいてみましょう。」
その下級竜も俺に気がついたようで、こちらを見てくるが、襲ってくる様子はない。
「怪我をしているのか?」
「…」
当然といえば当然だが、返事はない。
(ヘルプ、今なら《従魔契約》できるか?)
「できます。ですが、弱っているので《従魔契約》後に回復させた方が良いかと。」
(わかった。《従魔契約》)
《従魔契約》イメージが掴めないので、脳内で唱えて使用する。
横たわる下級竜との間に線が繋がったような感覚だ。
(できたのか?)
「はい。成功しています。」
それを聞いて、下級竜を回復させてやる。
「念話と同じように話しかけて見てください。」
(聞こえるか?)
(あんたが助けてくれたんだね。ありがとう。)
下級竜のお婆さんだったようだ。
(ああ。《従魔契約》して貰ったしな。それで、俺に着いてきてくれるか?)
(他の奴らもいいのかい?)
(ああ。それはいいんだが、全員と《従魔契約》した方がいいか?)
(できればそうしてくれるとありがたいねぇ。)
(わかった。じゃあ、集めて貰えるか。)
(あぁ、少し待っていておくれ。)
そう言うとすっかり元気になったのか、洞窟をゆっくり歩いて進んだ後、空に向かい飛び立った。