第79話 死神(4)
スメノスの魔力の登録し、7階へ移動する。
「空いてる部屋なら何処を使ってもいいからな。」
俺とレイラ達の使っている部屋を教えながら言う。
「…集まってる。」
「それは特に気にする必要はないからな。」
「…分かった。」
「あと、3階は風呂、他の階は使ってないけど、何かに使ったりしたいか?」
「…特に。」
「そうか。なかなか使い道が決まらないな…そういえば、スメノスは風呂には入るのか?」
「…入れる。」
「そうか。なら、入ってみるといいんじゃないか?」
「…そうする。」
「レイラはまだ怒ってるかな?」
「…追ってこない。」
「まぁ、いいか。それより、加護が祝福に変わったんだよな?具体的には何が変わったんだ?」
「…加護の時のに、吸血と、即死攻撃が、ついた。」
「即死?」
「そう。少しでも、当たると、たまに、死ぬ。」
「少しでもって…かすり傷でもか?」
「…そう。」
「性能が良すぎるな。…吸血の方は?」
「たけるが、使ってる武器が、血を吸う。」
「血を吸うって意味があるのか?」
「吸うほど、威力が、上がる。あと、即死が、起きやすくなる。」
「…国が祝福を貰った人を欲しがるわけだな。」
魔物だけじゃなく、人に対してもかなり効果があるからな。
「…でも、あんまり、意味ない?」
「いや、そんなことはないぞ?かなり役に立つ効果だしな。」
「たける、なくても、首を切れば、終わる。それに、たけるの、武器。」
「これか?」
シャゲアペルを取り出し見せる。
「これ、前は、私が、使ってた。」
「え…えーっと…返した方がいいか?」
正直、使い慣れてしまって、手放すのは惜しいが、本来の持ち主がいるなら返すのが道理だろう。
「…いらない。というか、返されても、使えない。」
「え?前に使ってたんだろ?」
「今は、たけるが、所有者って、言ってる。」
スメノスがシャゲアペルを見ながら言う。
「これは、所有者を、選ぶ。死神の、素質が、ある人。」
「今は俺を所有者になってるからスメノスは使えないのか?」
「そう。使おうと、すると、弾かれる。」
(そういえば、リリファがそうだったな。)
「…死神よりも、死神らしい。」
スメノスが寂しそうに呟く。
「…それは俺も辛いんだが。」
死神の素質ってなんだよ…
「あと、私には、これがある。」
そう言うと、スメノスも鎌を取り出した。
「…クライキロ。その鎌を、無くしてから、作った。」
「え?無くしてたのか?」
「…うん。散歩して、置いてきた。」
「子供かよ…」
「性能も、同じ。お揃い。」
「鎌でお揃いってのは珍しいだろうな…」
少なくとも俺以外で鎌を使ってのは初めて見た。
「私も、魔物、倒す。何か、役に立つ。」
「まぁ、何もしないよりはいいな。」
神を使うってのも、どうかとは思うが。
「って、あっ!そういえば、冒険者ギルドへ行くんだったな。その時に一緒にスメノスも登録したらどうだ?」
「…うん。今日で、登録、2回目。」
「転移部屋のも含めたら、そうだな。まぁ、まず神も登録できるかって方が心配だけどな。」
「…そう。ダメなら、別にいい。登録しなくても、役に立てる。」
「まぁ、倒すだけなら別にいいな。まぁ、駄目だったなら、その時考えよう。」
「…うん。」
「さて、そろそろ紹介も終わったし、戻るか。」
レイラの怒りが鎮まっているのを祈るばかりだ。
「まぁ、いざとなったらスメノスのせいにすればいいか。」
「…酷い。同罪。」
結局、スメノスも俺の部屋に近い部屋に住むことを決め、することもなくなった。
「レイラ達はもう2階へ戻ったか?」
「…たぶん?」
(まぁ、ずっと1階にいる必要もないしな。)
「きっともう2階に戻ってるだろ。」
スメノスを連れ、2階へと降りた。
「あっ、ご主人様。スメノス様の部屋は決まったんですか?」
昼食を作っているらしいレイラがこちらに気づき、声をかけてくる。
もう怒ってはいないようだ。
「ああ。決まった。スメノスの分も昼食を頼んでいいか?」
「はい。もう作ってます。」
「そうか。そういえば二人は?」
ルティもリリファが見当たらない。
「ルティは洗濯物、リリファは畑へ行ってます。」
「そうか。なら、リリファは丁度外にいるみたいだし、冒険者ギルドに入ってくるな。」
「はい。わかりました。それまでに作っておきますね。」
「ありがとな。じゃあ、行ってくる。」
「はい。行ってらっしゃいです。」
スメノスを連れ、外へ出ると、リリファが《妖精魔法》を唱えていた。
「リリファ、それが終わったら、冒険者ギルドへ行くか?」
声をかけると、《妖精魔法》を中断して、リリファは振り向いた。
「あっ、タケル。うん、そうだね。なら、すぐに終わらせるよ。」
リリファが再び《妖精魔法》を唱え始め、畑の植物に水を与えた。
「よし。行こっか。」
スメノスとリリファを連れて、冒険者ギルドへと向かった。