第76話 死神(1)
全員で顔を見合わせる。
「ご主人様、今の音って呼び鈴よね?」
「ああ。その筈だけど…」
「とりあえず、私が出迎えますね。」
「あっ、待ってくれ。俺が出るから食べててくれ。少し気になるからな。」
そう言い残して、転移部屋から1階に降りたところで再び呼び鈴が鳴る。
(そういえば、扉の外が見えないな…今度それも直さなきゃな…)
扉を開け、来訪者を確認する。
そこに立っていたのは、夢で会った少女だった。
「夢で会ったよな?」
「…うん。おはよ。」
「…ああ。おはよう。」
聞きたい事があるがとりあえず挨拶を返す。
「さっきぶり、だね。」
「…そうだな。」
「「…」」
そこで会話が途切れてしまう。
「なぁ、質問していいか?」
少女は頷いた。
「まず、夢で会ったよな?」
「…いきなり、家に行くのは、失礼だと、思った。」
「…」
(妙なところで礼儀正しいな…)
「次に、何で家の場所がわかった?」
「…知ってた。」
「知ってた?いつからだ?」
「…建てた時。」
「…何の用だ?」
「あなたに会いに。」
「…何のために?」
「…話す、ため?」
「いや、俺に尋ねられても困るんだが。」
「…」
少女は黙り込んでしまう。
話が進まないため、更に尋ねる。
「前に会った事があるか?」
「…直接は、会ってない。初めて。」
「じゃあ、お前は誰だ?」
「…スメノス。死神。」
「…は?」
「…?」
少女ーースメノスは小首を傾げる。
「えっと…死神?」
再び頷いた。
「「…」」
(ヘルプ、どうすればいいと思う?)
「…敵意はないようですので、ゆっくり話してはどうでしょうか?」
(わかった。)
「とりあえず…家に上がるか?」
「…いい?」
「ああ。」
「…ありがと。」
スメノスを家に入れる。
(レイラ達は朝食を食べてるし…客室でいいか。)
客室に通し、置いてあるソファに座らせた。
俺はテーブルを挟み、対面に座る。
「えっと…俺に会いにきたんだよな?」
「…うん。」
「会って、終わりか?他に何か用事があるんだよな?」
「…加護の事。」
「加護?…ああ!そうか、死神の加護か!って事は、スメノスがくれたんだよな?」
「…うん。…役に立った?」
「ああ。武器不壊は便利だな。研いだりもしなくていいし。」
「…良かった。」
「っ…」
無表情のスメノスの口角が僅かに上がり、軽く目を細まった。
その仕草に不意に胸が高鳴ってしまう。
(見た目的にやばいだろ…)
スメノスの容姿は中学生と言われたら、ギリギリ納得するレベルだ。
簡単に言うと小学生でも違和感がない。
スメノスにはそれを悟られないよう、話を戻す。
「…えっと、もしかしてそれを確認しにきてくれたのか?」
「…それも。」
「別に何かあるってことか?」
「…うん。加護を、祝福に。」
「えっと…何か変わるのか?」
「…加護は、誰にでも、あげれる。けど、祝福は、あげれる人、限られる。」
「数が少ないって事か?」
「…うん。」
「…それを聞くと、祝福にしてくれるのは嬉しいんだが…俺でいいのか?」
「…うん。初めては、あなたがいい。」
「変な言い方をするな!」
「…?」
「…まぁ、いい。と言うか、祝福にしてくれるのは嬉しいんだが、そのためにこの家に来たってことか?」
「…うん。他の神は、お供え物、してくれた時に、その人の、前に行って、あげるけど。」
「あー、そういえばお供え物とかしてなかったな…」
(気が向いたらってことで保留にしてたな。)
「やっぱり、お供え物はしてほしいって感じか?」
「…別に?お供え物が、消えたら、驚くし、貰えない。」
「確かにな。」
(目の前で消えても怖いし、いつの間にか消えてても、盗まれたとか思うかもな。)
「じゃあ、お供え物はいいのか?」
「…うん。でも、たまには、お話ししたい。」
「まぁ、そのくらいなら、いいけど。」
「…ありがと。じゃあ、たけるって、呼んでも、いい?」
「ああ。そう呼びたいならそう呼んでくれ。」
「…たける。」
スメノスが手招きをしている。
「ん?なんだ。」
俺はテーブルから身を乗り出す。
すると、スメノスに左右から頰を挟まれ、顔を近づけてくる。
「えっ…おい、スメノス…?」
突然の事に驚き、硬直してしまう。
「ご主人様、ここですか?」
客室の扉が開けられると同時に、
「…んっ…」
唇に柔らかい感触が伝わって来た。
ヒロインの名前、ラ行ではありませんでした。
やはり、名前って難しいですよね。
ラ行にできればとも思っていたんですが、今まで通りなんとなく決めた結果さ行になりました。