第73話 寄生スライム
リリファと共に南門から国外に出る。
今回の依頼の寄生スライムと森熊は、ムニシヤ王国と、レビルム公国のほぼ対極に位置するテレサ王国とを繋ぐ道の、左右の森にに住み着いているらしい。
森の木を伐採し道を作ると、森熊は作られた道を横断する事がなくなったらしい。
しかし他の魔物、寄生スライムや緑狼などは度々道を通る商人を襲うため、商人は冒険者などを雇うのが一般だそうだ。
「そういえば、リリファは魔物は倒せるんだよな?」
「うん。一応魔法が使えるからね。攻撃魔法も少し使えるけど、基本的に補助魔法だから、近づかれると危険だね。」
「なら、念のために何か使っておいた方がいいと思うぞ?魔物に近づかれた時危ないだろ?」
「そうだね。でも、少し考えさせて。」
「ああ。そこまで急に決めなくてもいい。もし駄目だと思ったら途中で武器を変えてもいいからな?」
話していると、近くの茂みが揺れているのが見えた。
「リリファ。」
小さく名前を呼び、指でそこを示す。
リリファは揺れているのを確認し、小さく頷く。
息を潜め、待っていると茂みから魔物が出てくる。
大きい犬のような姿をしているため、恐らく緑狼だろう。
しかし、様子が少し変だ。
(目が視えてないのか?)
緑狼の実物を見た事がないため、違いはわからない。
だが、目が視えないという事、そして体中から芽が生えているのは普通でない気がする。
(いや、緑狼なんて呼ばれているんだから、芽が生えているのはおかしくないのか?)
「通常の個体には芽は生えていません。寄生スライムの寄生状態だからです。」
(あれがか?)
茂みから出て来た後もふらふらと足取りがおぼついている。
「はい。寄生スライムは体内へ侵入した後、脳を食べ自身を脳へと置き換え、寄生したものの体を自由に動かせるようになります。しかし、体は死んでいて、強制的に形を保ち、動かしている状態なため次第に腐敗し、植物の種などの成長が可能となります。寄生スライムは、寄生した体が完全に腐敗した後、次の寄生先を探します。あれはかなり腐敗しているため、いつ寄生スライムが出てきてもおかしくありません。」
(寄生するのは魔物だけなのか?)
「いえ、動物、人間などにも寄生します。ですが、人間などに寄生するためには寄生先の個体が魔力をかなり消費している必要があるため、寄生されることは少ないです。」
(じゃあ安心だな。とりあえず脳にいるんだったか。)
未だにふらふらしている緑狼の首を斬る。
流れ出る緑色の血と共に緑色の核が見えた。
ファイヤボールを当てると核と、緑狼の死体だけが残った。
(弱くないか?)
寄生スライムはランクCの魔物だ。
下級竜よりもランクが高い。
「推測にはなりますが、寄生スライムは人気がないのでしょう。寄生した魔物によって難易度が変わるうえ、寄生したばかりですと寄生した魔物よりも強くなります。」
肉体の制限が、ってやつか。
「タケル?」
暫く(リリファから見て)話していなかったため不思議がっているようだった。
「ああ。次を探すか。」
「うん。寄生スライムと森熊だったよね。あんまり時間もないから急ごう。」
「ああ。夕食までには帰りたいからな。」
二人で更に森の奥へと進んでいく。