第72話 契約
昼食を食べ終え、俺とルティは冒険者ギルドへ来ていた。
普通に中に入ったつもりだったのだが、何故かはわからないが、建物内の視線を集めている気がする。
(何かあったのか?)
疑問には思ったが、リリファの登録の方が優先だ。
丁度ミアが受付にいたため、そちらへ向かう。
「…タケルさん、お連れの方ですか?」
「ああ。登録に来たんだが。」
「…そうでしたか。少々お待ちください。」
俺やレイラ・ルティの時と同じように登録を完了する。
「…タケルさん、少し、耳を貸していただけますか。」
「ん?ああ。」
ミアの方に耳を近づける。
亜麻色の髪の毛が顔にあたり少しくすぐったい。
「タケルさん、リリファさんと契約しましたか?」
「契約?なんのことだ?」
「妖精族の契約です。妖精族の方と契約をすると冒険者にとって良い事が多く有ります。」
「へぇ、そんなのがあるんだな。」
「はい。だから皆さんがタケルさんを見ているんですよ。」
「え?なんでだ?」
「それはリリファさんと契約したいからに決まっています。」
「あー、別にいいんじゃないか?リリファがしたいなら。」
「…よろしいんですか?」
「もしかして、一人としか契約できないとかか?まぁ、別に俺はそこまで困ってないからな。」
そう言うと、聞き耳を立てていたらしい冒険者達がリリファへ群がっていった。
「おー、人気者だな。」
「タケルさんは呑気ですね。」
「そうか?あっ、何か良さそうな依頼とかあるか?」
「タケルさんはランクCですけど、実際はどのくらい強いのかわからないので、私に書かれても困るんですが。」
「前回の下級竜と森人形は確かランクDだったか?じゃあ、今回はランクCの依頼はあるか?」
「はい。有りますよ。寄生スライムや木熊はどうでしょうか?最近は数が増えて来ているようで…」
「あたしはタケルと契約するから!」
囲まれていたリリファがそう叫ぶと同時に、周りの冒険者達はやっぱりか、という顔をして元の椅子などに戻る。
「え?俺と契約するのか?」
今までそんな話はしてこなかったような…
「いいでしょ?はい。」
リリファの手が俺の手に触れると、緑色の粒子のようなものが手の上を伝って来た。
「はい、出来た。」
「ふーん、なんかあんまり変わった気はしないけどな。」
「そう?そのうちわかるんじゃない?」
「そうか?じゃあそろそろ行くか?」
「何処に?何を倒しに行くの?」
「移動しながら話すよ。じゃあ、またなミア。」
「…っ…はい。頑張ってください。」
「タケルさん…」
タケルは出ていってしまったが、ミアはタケルが去っていった方角を見ていた。
(妖精族の契約には、対等な関係ーーパートナーとして認めるっていう意味もあるんですよ?)
以前に投稿したものもみると、いかに進行が遅いかがわかってしまいますね。