表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただただ、幸せに…  作者: 緋月夜夏
ムニシヤ王国編
72/117

第71話 畑(3)

種と球根を植え終えると、リリファは《妖精魔法》を唱え始める。

《豊穣の神よ天の恵みをもたらし給え》

(…これも詠唱の内容が酷いな…天の恵みって雨のことじゃないのか?)

今日も快晴といっていいほど空は青く澄み渡っている。

リリファが詠唱を終えると、種と球根を植えたところから次々と芽が生えてくる。

「凄いな!こんなに早く成長するのか!」

「凄いでしょ!あたしだって役に立つの!」

「ああ。確かにな。これからも手伝ってもらうぞ?」

「任せて!どんどん使うよ!」

想像よりも早く終わり、家に入ろうとしたところで止められる。

「ちょっとタケル?忘れてるよ?」

リリファは畑の一角を指差している。

「ああ、そういえば。」

あそこにはリリファではなく俺が選んだ種が植わっている。

赤魔柑あかまかんという果物の種で、珍しさにつられてかってしまった。

(《ウォーターボール》)

土に当たるとすぐに芽が生えてくる。

赤魔柑は、通常の水でも育つのだが、魔力水を与えることで、なる果実の糖度が変化するという特徴を持っているらしく、与えれば与えるほど甘くなっていくらしい。

因みに、二日ほどで成長するため、家庭で育てている人も多く、子供にとても人気らしい。

「タケルが育てたら、すっごく甘くなりそうだよね。」

「ああ。今から楽しみだ。」

ついでに魔法で手を洗い、家に戻る。

「あっ、ご主人様、お帰りなさい。」

玄関に入るとルティが出迎えてくれた。

「あれ?待ってたのか?」

「ええ。特にすることもなかったのよ。」

「それならルティも一緒にやれば良かったんじゃない?」

リリファの言葉にルティは苦笑いを返す。

「リリファがあんなに楽しそうに種を植えてるのにそれをもらうなんてできないわよ。それに、私も自分で種を買ってきて植えてみたいもの。」

「じゃあ、今度一緒に買いに行くか。」

「ええ。楽しみにしてるわ。」


二階に上がると、レイラは昼食の準備をしていた。

「お帰りなさいです。」

「ああ。ただいま。」

「お風呂に入ってきてはどうですか?」

「うーん…リリファ、先に入るか?」

「ん?いいの?じゃあお先〜。」

そういってリリファは転移部屋へ向かっていった。

「いいんですか?」

「ああ。リリファは女の子なんだし、先に入った方がいいだろ。」

「へー、そうですか。」

(なんだかレイラの声が冷たくなったような…)

「ねぇ、ご主人様?そういえば、私たち以外に奴隷は増やすのかしら?」

「え?いや、増やすつもりはなかったけど…」

「そうなのね。結構部屋が余っているから、てっきり増やすのかと思ったわ。」

「確実に増やさないとは言い切れないけど…特に困ってはいないしな。」

「まぁ、ご主人様なら大抵のことは1人でできるものね。」

「いや、できないことも多いと思うんだが。何か手が足りないこととかがあったりするなら増やすのも検討するけど。」

「私に聞くよりレイラに聞いた方がいいんじゃないかしら?」

「そうだな。」

レイラは今も昼食を作っている。

(やっぱり料理の数が少ないのはどうにかしたいな。そもそものレシピが少なすぎる。)

これはレイラに限った話ではなく、一般家庭では多くても10品程度らしい。

(本屋とかで料理本を探してみるか。)

「レイラ、今忙しいか?」

「いえ、もう少しで焼き終わります。」

レイラは調味料をいくつか加え、味見をすると、こちらへやってきた。

レイラの《料理》のスキルは作った料理の温度を保つこともできるらしい。

王城の料理人は、このスキルも持っていることが前提らしい。

(もしかしたらレイラも慣れたのかもな。)

「ご主人様、どうかされたんですか?」

考え事をしていたせいかレイラが尋ねてきた。

「いや、なんでもない。それより、今手が足りないこととかあるか?」

「私は特には…あっ、ありました。」

「なんだ?」

「買い物に行くことでしょうか。」

「え?いや、それは俺が行けばいいんじゃ…」

「正直にいえば私が家にいるのにご主人様をお使いに行かせるのは罪悪感を感じます。」

「私も少し感じてたわ。」

レイラの意見にルティも同調する。

「でも、俺が行った方が速いしな。」

「それでもです。この中に奴隷が2人いるのに、1番働いているのがご主人様なんて他の人に知られたら大変なことになってしまいます。」

「そういうものか?」

「はい。」「ええ。」

「そうか。考えとくよ。」

「はい。お願いします。」

「タケルー、出たよー。」

丁度良いタイミングでリリファが戻ってきた。

「ああ。じゃあ昼食にするか。」

「え?入ってこないの?」

「長く待たせるのは悪いからな。」

あまり風呂に入るという習慣がないせいなのか、リリファの風呂に入っている時間は短い。

レイラの作った料理をテーブルに運ぶ。

「「「「いただきます。」」」」

行儀は悪いかもしれないが、昼食を食べながらも会話は続く。

「俺は午後から魔物を倒したりしてくるから、みんなの予定を確認しておきたいんだが。」

「私は、お菓子とか夕食を作っていてもいいですか?」

「ああ。できれば俺のぶんのお菓子も作っておいてくれると嬉しい。」

「もちろんです。お口に合うよう頑張ります!」

「ルティはどうする?」

「私もレイラと一緒に残るわ。洗濯物もやっておくわね。」

「わかった。リリファは?」

「あたしは特にすることないから、タケルについて行ってもいい?」

「ああ。ついでに冒険者登録もしておくか。」

「うん。どんどん倒してすぐにタケルのランクに追いついてみせる!」

「ああ。頑張ろうな。」

全員の予定を聞き終え、世間話へと移行していった。

畑は終了です。

詠唱の内容って難しいですね…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ