第54話 肩透かし
冒険者ギルドへ入ると、門が閉まる時間帯なため、同業者で賑わっていた。
酒を飲み、酔っている者たちを避け、受付へ向かう。
「あっ、タケルさん、こっちにどうぞ。」
声のかけられた方を見るとミアが手招きしている。
「依頼を終わらしてきたんだが、今も大丈夫か?」
「はい。大丈夫ですよ。下級竜と森人形でしたね。魔石を出していただけますか。」
言われた通りに核を出す。
「はい。やっぱり多いですよね。代金は今日にしますか?」
「できれば。結構、時間がかかるのか?」
「いえ、そこまでかかりません。実は、ここには特別な魔法具があるんですよ。」
「特別な魔法具?」
「はい。1つの基準となる魔石を入れて、別の魔石を近づけると、同じ魔物だったら変化がないのですが、別の魔物だと赤く光るんです。これがきてからは本当に楽になりました。」
「へぇ…最近きたばかりなのか?」
「はい。10日ほど前にきたばかりでして。ですが1日に5回ほどしか使えないんですよね…」
「回数制限があるのか?」
「はい。6回目からは全く反応しなくなるんですよ。ですから昨日タケルさんが来た時にはもう5回使ってしまってまして…」
「ああ。そうだったのか。それならしょうがないが…今日は回数が残っているのか?」
俺以外に依頼で来ている人がいないんだが…
「はい。タケルさんは多いだろうということでギルドマスターから許可を頂きました。」
「いいのか?」
「はい。昨日みたいにたくさんまた来られると、職員が数人で確認しなきゃいけないので大変なんですよ。」
「それは…すまない。」
「いえいえ、タケルさんが悪いわけではないですが。あと、大量に持ってくる場合は受付の終了間際はやめて頂きたいです。残業になってしまうので…」
「ああ。気をつけるよ。」
「はい。できればお願いします。では、私は魔石の確認をして来ますので、少々お待ちください。」
そう言ったミアは魔石を抱え受付の奥へ向かって行った。
しばらく待つと、ミアが戻ってくる。
「確認が終わりました。下級竜の魔石が85個に森人形の魔石が52個です。下級竜の魔石が8個、森人形の魔石が7個で依頼でしたから、依頼は17個達成なんですが…」
ミアが俺を一瞥して、
「あの、ギルドマスターがランクCになりたいか、との事ですが…」
「は?俺のランクはFだが?」
「はい、そうなのですが…」
(これはテンプレ的なあれか?面倒なことに巻き込まれるのは勘弁だぞ…)
「タケルさんはランクDの依頼は17個達成なので、数回に分れば通常通りランクCになるのですが、一度に達成されたので、ランクを飛ばして上がることができる人には上がる前に確認することになっているので…」
「あー、そういうことか。」
(は、恥ずかしい…)
「そういうことなら頼む。」
「はい。かしこまりました。では、こちらをどうぞ。」
渡された紙をステータスの上へ重ねる。
「では、代金ですね。下級竜は討伐依頼で銀貨425枚、魔石で金貨85枚、森人形は討伐依頼で、銀貨156枚、魔石で金貨52枚と銀貨104枚です。全て銀貨にしますか?」
「いや、できるだけ枚数を少なくしてくれ。増やしてもしょうがないしな。」
「かしこまりました。では、光貨2枚、金貨5枚、銀貨5枚になります。」
「おお!結構な量になったな。」
「…こんなの1日の量じゃないですよ…」
苦笑いをされる。
「何か買いに行くとするよ。じゃあな。」
「あっ、はい。また来てください。」
ミアに手を振り、出口に向かう。
「おい、あんた!」
肩を掴まれたので振り向くと、酔っているのだろう顔を赤くし、酒の匂いを漂わせている男がいた。
(やっと絡まれるテンプレか!?普通は登録の時だろうけど、まぁいい。)
「なんだ?」
「えらく稼いでたな?」
「それがどうかしたのか?」
「おいおい。そんなの決まってるだろ?」
(よし。これで、文句つけて来たら…)
「飲んでけよ。」
「は?」
「いや、稼いだんだろ?だったら普通、酒でも飲んでくだろ?」
「…」
(また、肩透かしか…)
「すまん、酒は苦手なんだ。」
「そうだったのか?それはすまなかったな。酒臭いだろ?冒険者には大酒飲みが多いからな。少しは飲めるようになっとくことを勧めるぜ。じゃあな。」
男はニヤニヤ笑いながらテーブルへ戻っていった。
「…いくか。」
二人を連れて、冒険者ギルドを出た。
いいタイトルが思いつかなかったので。