第50話 補助
空中でも、地面と同じくらい動けることを確認し、二人に念話で呼びかける。
(二人は、どんどん魔法を撃ってくれ。)
(大丈夫?)
(ああ。普段とあまり変わらないな。)
(わかったわ。あー、でも、ご主人様は降りて来ないのよね?)
(とりあえずこの群れを狩るまではそうだな。)
(そうよね。そうすると撃ち落としても…)
(あー…)
とどめを刺さなきゃいけないからか。
(あの、私は魔法があまり得意じゃないですし、私がとどめを刺しますか?)
(そうだな、頼めるか?)
(はい。任せてください。)
(ルティも大丈夫か?)
(ええ。じゃあ頼むわね、レイラ。)
(はい!)
返事を聞き、俺は《空歩》を使い、シャゲアペルを出しつつ、下級竜に近づいていく。
「《跳躍》も使った方が良いのではないでしょうか?」
(また、魔力を込めるのか?)
「いえ、先程の分で充分です。軽く跳んでみてください。」
(こうか?)
一応兎を意識して、両足で地面を蹴る。
「う、うわっ!」
予想以上に勢いが出てしまい、下級竜よりも高くまで上がって来てしまった。
(ちょ、ちょっと、大丈夫!?)
(大丈夫ですか!?)
ルティとレイラから慌てて念話が飛んできた。
(すまん、大丈夫だ。気にしないでくれ。)
下級竜達は、何か通ったのは気づいたようで、首を動かし、見つけようとしている。
(これ結構難しくないか?)
軽く跳んだつもりだったんだが…
「今回は私が補助してませんからね。」
(補助?)
「はい。今のあなたはステータスの値と同じだけ力を使えます。」
(今までは違ったのか?)
「はい。例えば、足の速さは物理攻撃の値で決まります。これは地面を蹴っているためです。逆に、足に返ってくる反動は物理防御で減らされているのですが、それは置いておきます。あなたは最初の物理攻撃の値は覚えていますか?」
(最初の値か?えーっと、25だったかな?)
「はい。その通りです。そして、今は百万を超えています。何倍になっているかわかりますか?」
(えーっと、25に4をかけて100だから、4万倍か?)
「はい。4万倍も力が強くなっていたら、普段の生活に支障が出るのは当然ではありませんか?」
(まぁ、握力とかも強くなってるってことだろ?それなら普段の生活も変わってくるな。)
「はい。そもそも、普通に歩くのも難しいでしょう。ですから、基本的に私が補助させていただいています。」
(そうだったのか…でも、他の人もレベルが急に上がったらこうなるんじゃないか?)
「普通の人はあなたのように急激にレベルが上がることもありませんし、レベルが1上がるのに対するステータスの上昇率も違います。」
(え?ステータスの上昇率もか?そんなスキル使ってないだろ?)
「この世界の人でないことが関係しているようです。」
(あー、そういうことか。テンプレだな。まぁ、それはそれとして、じゃあ、普通の人はこうはならないと。)
「はい。」
(それってレイラ達は大丈夫なのか?)
「ひとまず《魔力操作》で《眷属化》の効果を止めています。少しずつ経験値を増やして行けば問題ないでしょう。」
(そんな事、できたのか?)
「運が良かったですね。」
(本当だな。でも、ありがとう。あと…その、ごめんな。今まで補助してくれてるなんて知らなかった。)
「いえ、お知らせしていなかったのは私ですから。あと、謝られるよりは、感謝される方が嬉しいですね。」
(…ああ。ありがとな。これからも頼めるか?)
「はい。どういたしまして。私はあなたのための私ですから。」
(よし、じゃあ、そろそろ狩るか!)
《空歩》を使い、今度は下級竜に向かって降りていく。
「頑張ってください、あなた。」