第44話 魔法書
ヘルプに聞き、宿のある場所へ向かう。
宿の名前は『竜の卵』と言うらしい。
宿に着く。
「今回も1部屋でいいか?」
「はい。もちろんです。」「もちろんよ。」
ルティとレイラの了解を得られたので、受付に向かう。
「3人だが泊まれるか?」
「1部屋でいいかい?」
「ああ。そのつもりだ。」
「そうかい。泊まるだけなら銀貨1枚だよ。もちろん水桶と手拭いもついてるからね。朝食と夕食をつけるなら銀貨2枚と銅貨5枚だね。」
「そうか。」
代金と引き換えに鍵をもらう。
「二階の1番奥の左だよ。」
「ああ。」
部屋に入り、とりあえず座る。
「これからどうする?」
「ねぇ、ご主人様?」
「なんだ?」
「ご主人様ってかなり稼いでるわよね?」
「そこそこだけどな。どうかしたのか?何か買いたいものがあるなら言ってくれていいぞ。」
「いや、私が欲しいわけじゃなくて、奴隷が言っていいのかわからないけど、家を買えばいいんじゃない?」
「え?あー、家を買えるほど持ってないぞ?」
「え?だってさっき盗賊を渡した時、紋貨2枚もらってたわよね?」
「ああ。そうだな。」
「私のいた国ならそこそこ大きい家でも紋貨5枚くらいあれば買えたわよ?」
「え?」
(紋貨って1枚で10万円だろ?50万円で家が買えるのか?)
「はい。この世界は広い土地があるうえ、魔法を使い家を建てるため、あなたの世界に比べれば家を建てるのはそれほど大変ではありません。」
(そうか。)
「あー、でも、買ってもそこに留まってるかはわからないからな。結局無駄になるんじゃないか?」
「?ご主人様のユニークスキルで転移魔法をつくればいいじゃない?」
「あー、そう言えば作ったな。」
「もう作ってあるのね…」
ルティに呆れられた。
「なら、問題ないじゃない。まぁ、家がなくても宿に泊まればいいだけだし、あくまでそういう方法もあるってことね。」
「そうだな。少し考えてみるか。」
「あの…」
「ん?なんだ、レイ…ラ?」
レイラの方を見ると、何故か目の端に涙が溜まっていた。
「え!?どうしたんだ?」
「わ、私も…一緒に…住ませてください!」
涙声になりながら言ってくる。
「え?あ、あぁ、そのつもりだが?」
「良かった…」
ついに頰を涙が流れた。
「いきなりどうしたんだ?」
「私、あまり役に立ててませんし…もしかしたら家を買うのと同時に売られちゃうかもって…思って…」
止まっていた涙がまた溢れそうになっていた。
「大丈夫だ。俺はレイラを売るつもりなんてないからな。ずっと一緒にいてくれるんだろ?」
「は、はい!もちろんです!」
「ルティもな。」
「っ…ええ。」
突然話を振られたのに驚いたのか一瞬詰まっていた。
(いや、顔が赤いし、さっきの言葉で2人が奴隷がになった最初の日を思い出してるのかもしれないな。)
「というか、家を買うなら、レイラには食事を作ってもらわないといけないからな。いなくなられると困る。」
レイラの頭を撫でながら言う。
「はい。頑張ります。」
顔は少し赤くなっていて、涙の跡も残っているが、とても可愛らしい笑顔で逆にこっちの顔が熱くなってしまう。
その隣でルティは頰を膨らましていた。
「家を探すのは明日にするか。」
「ええ。それがいいと思うわ。」
「うーん、じゃあ、これからどうするか…」
夕食までにはまだ時間がある。
「あの、言いづらいんですが、魔法書を見に言ってもいいですか?」
「魔法書?」
「はい。私が回復魔法を覚えることができれば、役に立てるかもと思って…」
「それってご主人様ならなんとかできるんじゃない?」
「まぁ、できないことはないだろうな。回復魔法もつくればいいし。」
「あの…わがままなのはわかっているんですけど…」
「うーん、まぁ、いいか。レイラが自分で覚えたいってことなら別に止める理由はないな。」
「もう1つわがままをいいですか?」
「もちろん。なんかでもいいぞ。今までは遠慮してたようだったからな。」
(さっきので遠慮がなくなったのか?距離が縮まるのは嬉しいな。)
「良かったらでいいんですけど、もし私が回復魔法を覚えられたら、練習を一緒にしてもらってもいいですか。」
上目遣いでいわれたら断れないな。
上目遣いじゃなくても断る気なんて更々無いが。
「ああ。一緒に頑張るか。」
「わ、私も!私も覚えるわ!」
「ルティも覚えたいのか?もちろんいいぞ。」
「むぅ…」
今度はレイラが頰を膨らましていた。
「どうかしたのか?」
「なんでもないです。」
顔を背けられてしまった。
「まぁ、せっかくだし3人で頑張るか。」
そう言うとヘルプの声が聞こえてくる。
「いいんですか?」
(何がだ?)
「あなたがいいならいいです。」
誤字・脱字がありましたら教えてください。