第43話 ムニシヤ王国
門に着く。
レビルム公国に着いた時とは違い、門には門番らしい2人がいるだけだった。
早速門番の片方に話しかける。
「この2人は盗賊なんだが、ここで引き取ってもらえるか?」
「ああ。大丈夫だ。中に入れるわけにはいかないだろ?」
確かにそうだ。
「じゃあ、頼む。」
「ああ。それで、どうするんだ?お前の奴隷にするか?それとも奴隷商に売るか?」
「奴隷商に売ってくれ。こんなのもらっても困るしな。」
「違いない。」
門番と笑いあっていると、もう1人の門番が口を出してくる。
「いつまで話してやがんだ。さっさと盗賊を渡せ。」
「ああ。」
盗賊を引き渡す。
「少し待っていろ。」
盗賊を連れて行ってしまった。
「じゃあ、たまには俺を仕事をしますかね。」
(そんなんで門番が務まるのか?)
ルティやレイラも苦笑いしている。
「それに手を置いてくれ。」
前回と同じで、水晶玉に手を置く。
俺に続いてルティとレイラも手を置く。
「良し、問題ないな。盗賊のやつがあるから少し待っていてくれ。」
「ああ。」
しばらく話しながら待っていると、もう1人の門番が帰ってきた。
「待たせたな。ほらよ。」
そう言って、紙を手渡された。
「それを奴隷商に持っていけば、金をもらえるからな。無くしても自己責任だ。早めに行くことを勧めるぜ。」
「わかった。このまま行くことにする。何処だ?」
「門を入ってすぐだ。ニルツ奴隷店って看板があるからわかるだろ。分からなかったらまた来い。」
「わかった。じゃあな。」
「ああ。ムニシヤ王国へようこそ。」
「…似合わないな。」
「似合わないのはわかっているが、こう言う決まりだからな。」
「そうか。」
門の中へ入る。
中の様子は、レビルム公国とはかなり差があった。
レビルム公国は石を使い、道を整備しているのに対し、ここは地面を平らにしただけって感じだ。
「こういう道が普通なのか?それとも珍しいのか?」
試しにレイラとルティに聞いてみる。
「私の村はこんな感じでしたよ?」
「私の住んでたところはレビルム公国と同じだったわ。」
「そうか。じゃあ、国としてはここは整備されてないってことか。」
(もしかして、碌な国王じゃないのか?)
「いえ、現在の国王はごく普通といったところでしょうか。最近国王が変わったばかりのようです。」
(じゃあ、前の国王が駄目だったってことか。)
「はい。経営がうまくいかず、一族揃って夜逃げしたようです。」
(そんな国の王ってのも大変だな。)
奴隷商に着き、紙を渡す。
「先程の盗賊ですね。紋貨2枚になります。」
「ああ。」
結構割りのいい稼ぎのようだ。
これからも機会があればやっていこうと決める。
「いやー、助かります。若い男の奴隷はいつでも商品になりますからな。良かったら、何か買っていきますか?」
「いや、いい。」
「そうですか…またのご来店をお待ちしています。」
店を出て、冒険者ギルドへ向かう。
「買取ですか?」
受付の獣人の女性にはなしかけられる。
猫耳だろうか。
触りたい衝動に駆られるが、我慢して会話を続ける。
「ああ。ここに出していいか?」
「はい。どうぞ。」
了承を得たので、魔石を全て出す。
「お、多いですね。」
苦笑いをされる。
「そうなのか?まあいいか。すぐに代金をもらえるか?」
「量が量なので、明日になります。名前を確認させていただいてよろしいでしょうか?」
ステータスの名前を見せる。
「タケル様ですね。確認しました。」
ヘルプに頼み、苗字は隠してもらってある。
「様付けはいらない。また明日来る。」
「え…あっ、は、はい。お待ちしています…」
そんな声を背中に聞きつつ、冒険者ギルドを後にした。
誤字・脱字がありましたら教えてください。