第42話 行き先(3)
「おい、何笑ってやがんだ!」
「いや、気にしないでくれ。」
盗賊は5人。
持っている武器や防具は所々欠けている。
(雑な使い方をしているのか、新しく買う金がないのか、それとも両方か…)
「そもそも、なぜ俺たちなんだ?普通は馬車を狙うんじゃないのか?」
そう尋ねると盗賊たちは笑い出す。
「はっ、馬車なんて護衛を雇うんだから無理に決まってるだろ!」
「そんなこともわからないのか?」
「少しは頭使いやがれ!」
散々な言われようだ。
(というか、それって自分たちが弱いって教えてるようなものだろ…)
「盗賊って、あったらどうすればいいんだ?」
「殺せばいいんじゃない?」
ルティが物騒なことを言い出した。
「殺した場合は首を持っていき、賞金が出ていればその金額を貰えます。殺さずに連れていくと、それに加えて奴隷代が貰えます。」
レイラが言う。
(あれ?そういうものなのか?まぁ、魔物がいる時点で物騒か。)
「じゃあ、生きたまま連れてくか。金はあっても困らないしな。」
そう言いつつ、シャゲアペルを構える。
「あっ。ご主人様、腕などを切らない方が高く買い取って貰えます。」
「面倒だな。」
シャゲアペルをしまう。
「じゃあ、《ダークバインド》」
闇属性魔法のレベル3で覚えた魔法だ。
盗賊たちの影から黒い触手のようなものが出てきて、盗賊たちを捕縛する。
(誰得だ?)
次に人に使うときは女性であることを願った。
「《サンダーボール》」
込める魔力を最低まで弱くして、盗賊たちの頭に打ち込むと、簡単に気絶した。
(こう言う時って、一人くらい殺した方がいいか?)
慣れておくのは後々都合がいいだろう。
「数人なら殺してもいいか?」
「別に大丈夫じゃない?対して強くもなかったし、賞金もろくに出てないと思うわ。」
「そうですね。殺してもいいと思います。」
「そうか。じゃあ、仕切ってたやつと、こいつでいいか。こいつらを抜いて、一人ずつな。」
「「えっ!?」」
2人は驚いていた。
「どうかしたのか?」
「私も殺すの?」
「私もですか?」
「そのつもりだったが…無理ならいいぞ。」
俺が代わりに殺せばいいしな。
「私は大丈夫よ。」
少し悩んでいたが、ルティは覚悟を決めたようだ。
「大丈夫か?」
「ええ。これからもこう言う機会はあるでしょうしね。」
「わ、私も頑張ります。」
ルティも言葉を聞いてか、レイラも覚悟が決まったようだ。
「どうする?一斉に殺すか?それとも順番がいいか?」
(あまり差はないと思うけどな。)
「私は一斉にがいいわ。」
「私もです。」
「わかった。」
ルティは大剣を、レイラは短剣を構える。
俺もシャゲアペルを構える。
「じゃあ、いくぞ?せーの!」
俺の掛け声とともに3人の首が胴体から離れた。
レイラまで切れるとは意外だった。
簡単に切れるものではないが、レイラもレベルが上がったせいだろう。
(と言うか、案外落ち着いてるな。まぁ、魔物も人と対して変わらないしな。)
ゴブリンも人型だしな。
「うっ…」
レイラが口元を抑えている。
「大丈夫か?」
どうすればいいかわからなかったので、とりあえず背中をさすっておく。
ルティの方にも目を向けると、顔は少し青かったが、レイラほどではないようだ。
しばらくさすっていると、レイラが顔を上げた。
「ごめんなさい。ありがとうございます、ご主人様。」
まだ少し顔は青かったが、先ほどに比べれば大分良くなった。
「大丈夫か?無理だったらこれからはーー」
「いえ…大丈夫です。頑張ります。」
レイラは遮るように言った。
「…そうか。頑張れよ。」
「はい。」
本人が決めたなら、口を出すべきじゃないだろう。
「ルティは大丈夫か?」
「ええ。大丈夫よ。」
「そうか。じゃあ、そろそろいくか。《ウインドストリング》」
風属性魔法のレベル3で覚えた魔法で、攻撃用だが、魔力を少なくすることで、通常より強い紐として使えるようだ。
盗賊の2人を連れて、今度こそ門へ向かう。
誤字・脱字があれば教えてくださると幸いです。