第40話 行き先(1)
ブラムとベルクに国を出ることを話すと、『また来い』
とだけ言い、送り出してくれた。
師匠が同じだと似てくるのか、と少し笑ってしまった。
「ご主人様、どこの国に行くんですか?」
「うーん…どこがいいと思う?」
逆にレイラに聞き返してみる。
「え!?…もしかして決めてないんですか?」
「…ああ。」
レイラは驚き、その後に呆れた表情を向けてくる。
表情豊かだなぁ、と思っているとルティも同じ表情をしていた。
(まぁ、普通は行き先を決めてから行動するか…)
「それで、どこがいいと思う?」
改めて2人に聞き返す。
「うーん…メルニア王国は駄目なのよね?」
「あぁ、絶対に駄目ってことはないだろうが、できれば行きたくないな。」
(不意を突かれて奴隷にされても困るしな。)
そう考えているとヘルプが話しかけてきた。
「強制的に奴隷には出来ません。」
(え?そうなのか?)
「はい。奴隷にするには条件があります。」
(そうなのか?じゃあ、クラスの奴らが奴隷になったのも、条件を満たしていたからなのか?)
「はい。」
(へぇ…というか、その時ってまだヘルプ使ってなかったよな?)
「はい。ですが、あなたの記憶は共有していますし、《奴隷化》のスキルは基本的に条件があります。」
(記憶を共有してるのか!?そういえば、重量とか金額を聞いた時に元の世界の単位を話してたか…まぁ、今更しょうがないな。)
「はい。あなたの記憶の中は全て知っております。」
(…怖いな。それより、奴隷になるの条件ってなんなんだ?)
「奴隷化の条件は、『本人に奴隷になる意思があり、《奴隷化》のスキルが付与されたものを身につけた場合』と、『本人が《奴隷化》のスキルが付与されたものを身につけた場合』です。」
(…その2つって何が違うんだ?ほとんど同じ気がするんだが…)
「1つ目の場合は本人の意思によって奴隷となりますが、2つ目の場合は本人が奴隷になると知らなくても奴隷にすることができます。」
(じゃあ、クラスの奴らは自分で腕輪をつけたから奴隷になってるってことか?)
「いえ、現在はあなたのクラスの方は奴隷ではありませんよ?」
(は?)
「1人が《抵抗》という状態異常を軽減するユニークスキルを持っているようです。その人によって他の方も奴隷から解放されたようです。おそらくですが、付与されていた《奴隷化》のスキルレベルが低かったのでしょう。」
(そうなのか…じゃあ、ここに兵士が来ているのは?)
「メルニア王国から逃げ出したからでしょう。実際にはこの国にはおらず、森の中にいるようです。」
(じゃあ、この国に来るのか?)
来るならそれまでに別の国に向かいたいんだが。
「いえ。この国にはおそらく来ないでしょう。レビルム公国はメルニア王国の南に位置していますが、クラスの方達はメルニア王国の東側へ向かったようです。メルニア王国の東側にはスミクル王国があります。」
(じゃあ、こっちには来ないか。)
「おそらくですが。」
(そうか。じゃあ、レビルム公国の南西に国はあるか?)
「はい。ムニシヤ王国があります。」
(そうか。じゃあそこにするか。)
ヘルプとの会話を止め、二人の方を向く。
「じゃあ、ムニシヤ王国にするか。」
「何がじゃあ、なのかわからないけど、いいわ。それで、ムニシヤ王国ってどこにあるの?」
「ここの南西にあるらしい。というか知らないのか?」
「…」
(私は魔族だもの。こっちには来たことないわ。)
念話で話しかけて来た。
魔族ってことを隠しているようだ。
この国には魔族がいないからか。
「レイラも知らないのか?」
「はい。私は小さな村に住んでいたので…」
(子供はあまり国とかの位置を知らないのか?)
「まぁ、いいか。とりあえず、南西に向かおう。」
誤字・脱字がありましたら教えてくださると幸いです。